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女の気持ち:母の携帯 大阪府高槻市・中野加代子(主婦・54歳) 毎日jp

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毎日新聞 2013年12月06日 大阪朝刊

 夕ご飯の支度をしていると、携帯電話が鳴った。発信者名は雪深い新潟で1人暮らしをしている81歳の母だ。何事かと思って電話に出るとうれしそうな母の声が聞こえた。

 3カ月ぐらい携帯電話をさわらなかったら携帯がうんともすんとも言わなくなったらしい。近所の親切な人に充電器に入れるように教えてもらい使えるようになったと。

 8月に帰省した時、母の携帯をみると、姉や妹から体調を気遣う優しいメールが入っていた。メールの使い方を説明したが、断固としてしないというのであきらめてしまった。落としたらいけないと言って畑仕事にもゲートボールにも買い物にも持ち歩かない。家の備えつけの電話の横に置いている。

 使えるようになった携帯で母は話してくれた。老人会の旅行で山形に行って楽しく紅葉狩りをしてきたこと、ゲートボールの練習に週に2日通っていること、裏の畑の野菜をみな収穫したこと、とうとう初雪が降ったけど2日ほどでとけたこと……。母の暮らしている様子が目に浮かんだ。

 36年前に父が亡くなった後、寝たきりになった姑(しゅうとめ)をみとり、4人の娘は皆嫁がせてくれた。帰省の度に自家製の野菜を土産に持たせてくれる。携帯のメールはできないが、本当に優しい大好きな母である。

 「かあちゃん、風邪ひかないでずうっと元気でいてね」「加代子もなあ……。また来てな」。電話を切ると温かい気持ちでいっぱいになった。






 中野加代子さんと、かあちゃんのやりとりが何ともいいです。携帯電話を使ってあるだけでもたいしたものです。ましてや、メールなんて子供さんたちの手抜きだと思います(笑)。ハガキや絵ハガキがあちゃんには手紙が一番だと思います。

 私も独身時代、博多に帰省して関西に戻るとまもなく、親父さんからハガキが届きました。文面を読むと「帰ってきてくれて有難う」みたいな礼状だったので驚いたものです。関西に帰る時は両親がタクシーが通っている道端まで送ってくれていましたが、車に乗り込むと父はしゅんとした雰囲気ですぐに家に引き返していましたが、母は堂々としてタクシーに向かっていつまでも手を振ってくれていました。

 中野加代子さんのかあちゃんの最後の言葉にうるっとしましたよ。私も、もう少し親孝行しておけばよかったと思う66歳です。有難うございました。

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