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余録  / 「雪を積もらせぬためであろう… / 毎日新聞

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湯沢スキーカーニバルで「雪国」の駒子にふんした芸者さん=新潟県湯沢町で1969年3月1日撮影

毎日新聞 2024/1/25 東京朝刊

 「雪を積もらせぬためであろう、湯槽(ゆぶね)から溢(あふ)れる湯を俄(にわか)づくりの溝で宿の壁沿いにめぐらせてある」。川端康成が「雪国」に記している。90年前に滞在した越後湯沢の温泉宿には独自の融雪設備があったのだろう

▲無論、今の設備に及ぶはずもない。地中に埋め、冬も温度が下がらない地下水を道路にまく消雪パイプは雪国に不可欠のインフラになった。同じ新潟の長岡市に「発祥の地」の碑がある

▲柿の種の生みの親である浪花屋製菓の創業者、今井与三郎氏が湧き水で雪が溶けることに気づいて考案したそうだ。自力で作り上げ、1961年に料亭の依頼で店舗前の道路に初めて設置したという。アイデアマンならではだ

▲全国に広がるきっかけはその2年後の「三八(さんぱち)豪雪」だった。1月下旬以降、北陸から上信越にかけての鉄道がマヒし、雪崩などで多くの犠牲者が出た。物資不足も深刻化したが、料亭前の道路はアスファルトが露出していた

冬の訪れを前に新潟県長岡市で行われた消雪パイプ設備の点検=2015年10月5日撮影

▲その消雪パイプが能登半島地震で被害を受けた。石川や富山、新潟では破損して使えなくなった場所も少なくない。北陸ではきょうも大雪が予想される。交通マヒにつながらないか心配だ。除雪の負担も増えるだろう

▲元日の本震に加え、その後の度重なる余震で強度が落ちている家屋もあるはずだ。雪の重さに耐えられるかが気になる。「梁柱(うつばりはしら)廂(ひさし)其外(そのほか)すべて居室に係る所力(ちから)弱(よわき)はこれを補う。雪に潰(つぶさ)れざる為也(ためなり)」。川端が雪国の苦労を知る参考にした江戸後期の「北越雪譜(ほくえつせっぷ)」の一節である。

 被災地の皆さま、予想される大雪のお見舞いを申し上げます。

 コラムを読んでいて適切な言葉が見当たりません。

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