淑女の養生訓 ／２９　パー券疑惑。この「還流」ドラマの結末は＝元村有希子　/　毎日新聞

記者団の質問を聞きながら首相官邸に入る岸田文雄首相＝東京都千代田区で2023年12月13日午前9時半、竹内幹撮影

毎日新聞　2023/12/19 05:02（最終更新 12/19 05:02） 有料記事　（サンデー毎日）

　私は政治オンチである。

　派閥とか解散戦略とか、分からないし理解しようとも思わない。人事異動でうっかり政治部に配属されなくて本当に良かった。

　そんな私でも、自民党の政治資金をめぐる疑惑のいかがわしさは理解できる。

　最初に『しんぶん赤旗』日曜版が報じた。大学教授による刑事告発が検察を動かし、大騒ぎになった。

　パーティーは「催し物」のため、企業・団体献金に比べて規制が緩い。つまり、おいしい資金源となる。

　赤旗によれば、主要５派閥の２０２２年のパーティー券収入は計８億８３０７万円。対して開催経費は９８８０万円。利益率88・８％。ボロもうけである。

　どう見てもパーティー券の枚数に見合わない狭い会場に、安い料理を並べて支出を浮かせた結果だろう。

　パーティー券を買った企業は、ぼったくりにあったようなものか。いや、受付で名刺を渡せば、派閥とのコネという「対価」が得られる。

　ノルマを課される議員たちは大変だが、安倍派では超過分がちゃっかり還流されていたらしい。「報告しなくていいカネ」とのおまけつきで。

　いい面の皮なのは、そんな世界に縁のない市民である。裏金や利権をよそに、増税だ、インボイスだと巻き上げられ続けている。

　政治にカネが必要なことは分かる。「民主主義のコスト」だから、国民１人あたり２５０円を拠出して、政党交付金として配分しているのである。足りないからといって、ひとさまに説明できないようなカネを手にしていいわけがない。

　マックス・ウェーバーは政治家の資質に「情熱、責任感、判断力」を挙げている。

　権力維持のために安倍派をちやほやし、それが裏目に出ると閣僚人事で丸く収めようとした岸田文雄首相には、こうした資質の片鱗(へんりん)も見えないのだが。

元村有希子・毎日新聞論説委員＝武市公孝撮影
1966年、北九州市生まれ。毎日新聞論説委員。本紙に連載「水説」、近著に『科学のトリセツ』。趣味は居酒屋、温泉、数独
（サンデー毎日2023年12月31日・2024年1月7日合併号掲載）

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　 へへへ、元村有希子さん、関口宏のサンデーモーニングでお馴染みだが、「私は政治オンチである。」という前置きがいいね。科学環境がご専門なのか。私も紛れもない政治オンチだが、このコラムは非常に分かり易いです。これからはサンデー毎日と毎日新聞の連載「水説」もしっかり読みますね。有難うございました。