毎日新聞 2023/10/8 東京朝刊 有料記事
<気になる>
「尾張名古屋は城でもつ」とうたわれ、日本を代表する名城として知られる名古屋城(名古屋市)。耐震性の不足などから建て替え工事を実施し、木造で復元することになりましたが、計画は大幅に遅れています。5層の屋根に金のシャチホコが輝く天守閣の閉館から5年半。東京オリンピックまでに完成するはずだった工事は、実はまだ始まっていません。どうなっているのでしょう。
◆どうして工事は始まらないの?
石垣保存やバリアフリー議論
なるほドリ
名古屋城を見学に行ったら、天守閣に登れなかったよ。
記者 残念でしたね。戦後に再建され、名古屋城で一番目立つ天守閣は、2018年5月から入場が禁止されています。コンクリートが劣化し、震度6強の地震で倒壊する危険性が高いためです。市は06年に耐震改修する方針を決めましたが、09年に初当選した河村たかし市長が木造による建て替えを表明しました。戦前の写真や実測図などが多く残り「史実に忠実に復元できる」と考えたのです。
建て替えは500億円超の総事業費を見込み、東京五輪に合わせて20年の完成を目指していました。でもスケジュールは大幅に遅れています。
Q どうして?
A 歴史的価値の高い石垣の保存を優先すべきだとして、市の有識者会議が待ったをかけたからです。木造復元の是非が争点だった17年の市長選で河村氏が4選を果たし、市が工事に取りかかろうとした矢先でした。築城された江戸時代のまま残る石垣を巡り、有識者会議は、劣化の程度の調査と保全策の検討が不十分だと指摘しました。
名古屋城は国の特別史跡で、文化庁の許可がなければ工事は始められません。市は18年に整備基本計画を提出しようとしましたが、文化庁は「有識者との認識が一致していない」として受理しませんでした。市は石垣の保存方法などの検討を重ね、今年6月に有識者会議の同意を得ました。
Q これで工事は進むの?
A いいえ。バリアフリー対策を巡る議論も必要なのですが、結論が出ていません。市は22年末、車いすの利用者と介助者が1人ずつ乗って、少なくとも石垣がある地下1階と地上1階を行き来できる小型昇降機を設置する案を発表しました。河村氏が築城当時の名古屋城を再現することにこだわっており、内部にある柱やはりを傷めずに取り付けられる点を重視したのです。
障害者団体などは誰もが天守閣を楽しめるように、最上階までのエレベーターを設置するよう求めていて、河村氏との議論は平行線をたどっています。
◆完成はいつになるの?
最短で32年度、進むかは…
Q そうなんだね……。そもそも、名古屋城はいつごろできたの?
A 400年ほど前、17世紀初めに徳川家康の命で築かれました。勇壮な天守閣と優美な本丸御殿が並び立ち「天下の名城」とうたわれています。城郭として初めて国宝に指定されたのは1930年です。でも、45年5月の名古屋空襲で天守閣は焼失しました。59年に鉄筋コンクリート造りで天守閣が再建された際には、建設費の3分の1に当たる2億円を市民の寄付でまかなったそうです。
Q 古いお城は他の地域にもあるよね。どうなっているのかな?
A 現存する城で、資料を基に木造で内部構造まで再現したのは掛川城(静岡県)など5城、明治維新以前の天守閣が今も残るのは姫路城(兵庫県)など12城あります。いずれもエレベーターはありません。
一方で北九州市の小倉城は、戦後にコンクリートで再建され、老朽化による改修を機に最上階までのエレベーターを新設しています。16年の熊本地震で被災した熊本城(熊本市)も修復工事の際、エレベーターを新たに設けています。
Q このまま工事が進まないと、名古屋城を訪れる人は減っちゃうの?
A 天守閣が閉鎖された18年度は本丸御殿の復元工事が完了したこともあり、前年度よりも約30万人多い221万人が来場しました。その後は新型コロナウイルスの感染拡大で50万~60万人台に落ち込みましたが、22年度は153万人と回復傾向にあります。
この間、関係者は天守閣のシャチホコを地上に展示するなどの工夫を凝らしてきました。市の見積もりでは、木造復元が完了すれば来場者は年間382万人に増えるといいます。
Q 名古屋城の復元計画は今後どうなるかな。
A 今年3月に市が示した見通しによると、完成は早くても32年度になります。ただ、その通りに進むかどうかは見通せません。
市は6月中に課題となっていたバリアフリーの対応について方向性を示し、文化庁に提出する整備基本計画もまとめるつもりでした。ところが6月上旬の市民討論会で、参加者から障害者を差別する発言があり、制止できなかった市の対応が批判されました。整備基本計画の策定に向けた議論は中断され、現在、市の対応が検証されています。(中部報道センター)<グラフィック・稲葉攝子>
名古屋城の建て替え工事、大変だな!部外者が言うのも何だけど素人の浅知恵だが、木造復元計画って手間とお金がかかるだけのような気がするけど・・・。かつ、工事竣工の最短の32年度って市長も、現在の河村市長さんから何人か変わっていそうな気もする(失礼)。
私は2014年の8月に雨の乗鞍岳に登って、翌日も雨だったので名古屋に出て登城してきたが、天守閣が、2018年5月から入場が禁止になったとは運が良かったな。城内はまるで博物館みたいな展示場になっていて素朴な姫路城とは全く様子が違っていた。
市議会や文化庁がお互いに歩み寄り一日でも早く着工することが一番のコストダウンだと思うのだが、皆さん面子の方を優先されるのかな?新しい名古屋城にまた行きたくなったが、無理かな?(笑)
<気になる>
「尾張名古屋は城でもつ」とうたわれ、日本を代表する名城として知られる名古屋城(名古屋市)。耐震性の不足などから建て替え工事を実施し、木造で復元することになりましたが、計画は大幅に遅れています。5層の屋根に金のシャチホコが輝く天守閣の閉館から5年半。東京オリンピックまでに完成するはずだった工事は、実はまだ始まっていません。どうなっているのでしょう。
◆どうして工事は始まらないの?
石垣保存やバリアフリー議論
なるほドリ
名古屋城を見学に行ったら、天守閣に登れなかったよ。
記者 残念でしたね。戦後に再建され、名古屋城で一番目立つ天守閣は、2018年5月から入場が禁止されています。コンクリートが劣化し、震度6強の地震で倒壊する危険性が高いためです。市は06年に耐震改修する方針を決めましたが、09年に初当選した河村たかし市長が木造による建て替えを表明しました。戦前の写真や実測図などが多く残り「史実に忠実に復元できる」と考えたのです。
建て替えは500億円超の総事業費を見込み、東京五輪に合わせて20年の完成を目指していました。でもスケジュールは大幅に遅れています。
Q どうして?
A 歴史的価値の高い石垣の保存を優先すべきだとして、市の有識者会議が待ったをかけたからです。木造復元の是非が争点だった17年の市長選で河村氏が4選を果たし、市が工事に取りかかろうとした矢先でした。築城された江戸時代のまま残る石垣を巡り、有識者会議は、劣化の程度の調査と保全策の検討が不十分だと指摘しました。
名古屋城は国の特別史跡で、文化庁の許可がなければ工事は始められません。市は18年に整備基本計画を提出しようとしましたが、文化庁は「有識者との認識が一致していない」として受理しませんでした。市は石垣の保存方法などの検討を重ね、今年6月に有識者会議の同意を得ました。
Q これで工事は進むの?
A いいえ。バリアフリー対策を巡る議論も必要なのですが、結論が出ていません。市は22年末、車いすの利用者と介助者が1人ずつ乗って、少なくとも石垣がある地下1階と地上1階を行き来できる小型昇降機を設置する案を発表しました。河村氏が築城当時の名古屋城を再現することにこだわっており、内部にある柱やはりを傷めずに取り付けられる点を重視したのです。
障害者団体などは誰もが天守閣を楽しめるように、最上階までのエレベーターを設置するよう求めていて、河村氏との議論は平行線をたどっています。
◆完成はいつになるの?
最短で32年度、進むかは…
Q そうなんだね……。そもそも、名古屋城はいつごろできたの?
A 400年ほど前、17世紀初めに徳川家康の命で築かれました。勇壮な天守閣と優美な本丸御殿が並び立ち「天下の名城」とうたわれています。城郭として初めて国宝に指定されたのは1930年です。でも、45年5月の名古屋空襲で天守閣は焼失しました。59年に鉄筋コンクリート造りで天守閣が再建された際には、建設費の3分の1に当たる2億円を市民の寄付でまかなったそうです。
Q 古いお城は他の地域にもあるよね。どうなっているのかな?
A 現存する城で、資料を基に木造で内部構造まで再現したのは掛川城(静岡県)など5城、明治維新以前の天守閣が今も残るのは姫路城(兵庫県)など12城あります。いずれもエレベーターはありません。
一方で北九州市の小倉城は、戦後にコンクリートで再建され、老朽化による改修を機に最上階までのエレベーターを新設しています。16年の熊本地震で被災した熊本城(熊本市)も修復工事の際、エレベーターを新たに設けています。
Q このまま工事が進まないと、名古屋城を訪れる人は減っちゃうの?
A 天守閣が閉鎖された18年度は本丸御殿の復元工事が完了したこともあり、前年度よりも約30万人多い221万人が来場しました。その後は新型コロナウイルスの感染拡大で50万~60万人台に落ち込みましたが、22年度は153万人と回復傾向にあります。
この間、関係者は天守閣のシャチホコを地上に展示するなどの工夫を凝らしてきました。市の見積もりでは、木造復元が完了すれば来場者は年間382万人に増えるといいます。
Q 名古屋城の復元計画は今後どうなるかな。
A 今年3月に市が示した見通しによると、完成は早くても32年度になります。ただ、その通りに進むかどうかは見通せません。
市は6月中に課題となっていたバリアフリーの対応について方向性を示し、文化庁に提出する整備基本計画もまとめるつもりでした。ところが6月上旬の市民討論会で、参加者から障害者を差別する発言があり、制止できなかった市の対応が批判されました。整備基本計画の策定に向けた議論は中断され、現在、市の対応が検証されています。(中部報道センター)<グラフィック・稲葉攝子>
名古屋城の建て替え工事、大変だな!部外者が言うのも何だけど素人の浅知恵だが、木造復元計画って手間とお金がかかるだけのような気がするけど・・・。かつ、工事竣工の最短の32年度って市長も、現在の河村市長さんから何人か変わっていそうな気もする(失礼)。
私は2014年の8月に雨の乗鞍岳に登って、翌日も雨だったので名古屋に出て登城してきたが、天守閣が、2018年5月から入場が禁止になったとは運が良かったな。城内はまるで博物館みたいな展示場になっていて素朴な姫路城とは全く様子が違っていた。
市議会や文化庁がお互いに歩み寄り一日でも早く着工することが一番のコストダウンだと思うのだが、皆さん面子の方を優先されるのかな?新しい名古屋城にまた行きたくなったが、無理かな?(笑)