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特集ワイド 国民窮乏、自民党は襟正せ 村上誠一郎・元行革相、安倍氏一周忌前に物申す / 毎日新聞

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衆院本会議に臨む自民党の村上誠一郎・元行政改革担当相=国会内で2023年3月16日午後1時4分、竹内幹撮影


毎日新聞 2023/7/5 東京夕刊 有料記事

「改革をやっているふり」では見放される

 安倍晋三元首相が凶弾に倒れ、8日で1年を迎える。政界の大きな関心事は、自民党最大派閥の清和政策研究会(安倍派)を誰が引き継ぐのかだろう。安倍氏についての「国賊」発言を理由に、党から役職停止処分を受けた村上誠一郎元行政改革担当相(71)は一周忌を前に、何を思うのだろうか。議員会館を訪ねると、2時間ノンストップで語り続けた。

 衆院第1議員会館の最上階にあたる12階。北東の角部屋が、村上氏の事務所である。ちなみに二つ隣の部屋が、岸田文雄首相の事務所だ。2021年9月の自民党総裁選を控え、岸田氏が支援を頼みにきたという。事務所の応接室の椅子を指さして、村上氏がいきなりぶちまけた。「この席に座った岸田さんに『ご自身の政策をおやりになりますか』と尋ねたら、『やる』と答えたから応援した。ところが首相になったら安倍路線を踏襲しているように見られている。全く残念です」

 第2次安倍政権(12~20年)の下、「安倍1強」と呼ばれた自民党内にあって、村上氏は歯に衣(きぬ)着せぬ直言を繰り返した。その舌鋒(ぜっぽう)は今、現政権に向かおうとしている。

 岸田氏が率いる自民党宏池会は「軽武装・経済重視」で財政規律を重んじ、リベラルな「ハト派」と目されてきた。村上氏が総裁選で岸田氏を支持したのは、「タカ派」の安倍政権の対極にいると期待したからだ。「なのに、池田勇人、大平正芳、宮沢喜一といった先輩首相のカラーが岸田政権になって全く消えてしまった」と失望を隠さない。

 まずは経済政策。アベノミクスで株価や地価は上がったが、賃上げが物価上昇に追いつかず、実質賃金が下がって庶民の暮らしは厳しくなっているのではないか。「これだけ財政出動して金融緩和すれば、先の読める人は株や土地を買ってミニバブルでもうけたでしょう。資産のない人はゼロを何倍してもゼロのままです」。村上氏は語気を強め、岸田氏が唱える「資産所得倍増」を念頭に「聞こえのいいスローガンよりも、一つ一つの政策をきちんと吟味し、取り残されてしまった国民をどうするかの議論をすべきではないでしょうか」と疑問を呈した。

 岸田氏が打ち出した防衛予算の倍増にも異を唱える。政府は23~27年度の5年間で防衛力を抜本的に強化し、防衛費を総額43兆円程度とする方針を決定。先の通常国会で、防衛費増額の財源を確保するための特別措置法(財源確保法)が成立した。「今まで日本は国内を自衛隊が『盾』となって守り、『矛』は米国が分担してきた。米国からトマホーク巡航ミサイルを爆買いしてもせいぜい10年が寿命だし、東アジアの緊張をますます高めてしまいます」

 村上氏は「台湾有事」をことさらに強調する風潮にも、ため息交じりに言葉を継いだ。「安倍さんが目指したような、盾も矛も持って集団的自衛権を行使できる国になるのでなく、敵を減らして味方を増やし、米中の衝突回避に必死に努力し、戦争の芽を摘み取る外交戦略を再構築すべきではないでしょうか」

 村上氏が自民党から処分を受けた経緯を改めて振り返る。昨年9月に安倍氏の国葬を欠席する理由を記者に語る中で、安倍氏について「財政、金融、外交をぼろぼろにし、官僚機構まで壊した。国賊だ」と評したとの発言が報じられた。これに対し、安倍派を中心に「歴代最長政権を担った人に失礼極まりない」「離党させるべきだ」などと批判が噴出し、同派は村上氏の厳正処分を求める決議を採択。党紀委員会は翌10月、1年間の党役職停止処分を決定した。

 確かに「国賊」は異論を切り捨てるために使われる言葉である。「宗教2世など旧統一教会から被害を受けた人たちは救済されていません。教団に自民党候補の選挙を手伝わせていた安倍氏の責任は重く、『自民党は襟を正す必要がある』と言いたかったが、国賊という言葉は不適切でした」。村上氏は当時を振り返って反省を口にした。

 役職停止は「党則の順守の勧告」から「除名」まで8段階ある処分のうち3番目に軽いものだ。だが、当時所属していた党の最高意思決定機関である総務会のメンバーから外れることになり、村上氏にとっては重い意味を持つようだった。

 通常国会では、反対の声が多く上がった改正入管法も成立。入管の強制送還の機能を強化し、難民認定の申請が3回目以降になると審査中でも本国への強制送還が可能になる。村上氏は「これで本当に人権を守れるのか。労働力不足に直面する日本が外国人と共生する明確なメッセージを出さないと、日本に来てもらえなくなるのでは」と懸念を口にするものの、衆院本会議の採決にあたっては党議拘束に従って賛成した。

 「十分な議論がなく拙速だったと思うが、総務会から外れたために党の機関で問題点を指摘できず、残念でした」。安倍政権時代から「ひとり良識派」を自任してきたのに、今回はおとなしい。13年の特定秘密保護法成立の際には「国民の知るべき情報が隠されないか」と異議を申し立て、本会議の採決で「体調不良」を理由に退席した村上氏である。かつてに比べ、自民党から自由闊達(かったつ)な雰囲気が失われていないだろうか。

 ある自民党ベテラン議員は言う。「村上さんが厳しい反対意見を述べることで、自民党は多士済々、切磋琢磨(せっさたくま)の党と見られてきた。彼の執行部批判は党にプラスに作用していた」。そんな声があるのを意識してか、通常国会終盤に岸田氏が「解散風」をあおるような発言をしたことに対して、村上氏の言葉に再び熱がこもった。「国の基本である財政、金融、外交や食糧安保の問題を全部先送りして、衆院を解散する場合ではないと思う。内閣支持率が上がったか下がったかや、野党の選挙準備の遅れが話題になっている。万一、報道にあるような理由で解散を考えていたとすれば、首相としての見識を疑問視されてしまうでしょう。政権延命のための解散は本末転倒です」

 次期衆院選の争点となりそうな少子化対策でも言いたいことがある。「小手先の『異次元対策』では一時的な子育て支援のためのバラマキに終わりかねない。賃金水準を押し上げ、そもそも若い人が結婚して子どもを持ちたいと思える国に変えていく必要があります」

 その道筋として、首相が以前、意欲を示しながら尻すぼみになった富裕層への課税強化に意欲をにじませた。「出産・子育てを社会全体で支えるために、税金をもっと払える資産家や担税力のある人たちに相応の負担をお願いすることを議論し、国の膨大な借金を孫の世代に押しつけない。『改革をやっているふり』の政党には任せられなくなるでしょう」。ポスト安倍時代の先に、政界再編を予見しているような口ぶりである。

 村上氏は、戦国の世に瀬戸内海を支配していた海賊「村上水軍」の末裔とされる。水軍の旗印は「独立不羈(ふき)」。束縛を受けずに自らの所信で行動するという意味だ。その精神を、国政の場で貫けるか。【奥村隆】

■人物略歴

村上誠一郎(むらかみ・せいいちろう)氏
 1952年、愛媛県生まれ。東大法学部卒。河本敏夫元通産相の秘書を経て、86年から衆院愛媛2区で連続12回当選。副財務相、行政改革・地域再生・構造改革特区担当相などを歴任。愛媛の小選挙区が1減となる次期衆院選では比例四国ブロックで立候補を予定する。

 私の大好きな、まともな自由民主党所属の衆議院議員(12期)の大ベテランだ。今の自民党議員と言ったら、当たらず触らずの訳の分からない建前だけ言って、力のある大物や派閥におもねって大臣ポストに座りたい人ばかりなのではないかな?その大代表が岸田文雄総理大臣だったりして!(爆)

 村上誠一郎さんが総理大臣に座るような国になったらいいのだが、そんな日は来ないだろうね(泣)。この国は正論が通らないところらしいから・・・。


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