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女の気持ち 春が来る 北九州市小倉北区・高松朝江・77歳 /  毎日新聞

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写真は「元離宮二条城」で楽しむイベント「花見の宴」開催【2018】dressingからお借りした。 

毎日新聞  2021/3/6 西部朝刊

「お前は今日もまた服が違う!」。私の顔を見るなり、夫が一言。「あらー、裸で来ればよかったね」と私。

 「まあー、奥さん、あしらいが上手ね。私はとてもまねできないわ」。隣の病人に付き添う奥さんが笑いながら言う。

 入院中の夫を見舞う度、私はさりげなくおしゃれをして笑顔を絶やさないことを心掛けていた。夫の命の期限を言われていたから。どなる力があるなら「よし!」と思う。

 夫が亡くなる前年の春、まだ発病前だった夫は近所の美人マダム2人、後方に優しい妻を従えて森林公園に行き、花見の宴を開いた。両手に花だ。

 酒豪の4人、たちまち酒瓶が空く。青空に向かって笑いがはじける。薄紅色の桜の花びらが風に舞って、コップの酒に浮かぶ。まるで祝い酒のように。

 3人の女性に囲まれて全身で笑う、目尻が下がりっぱなしの夫の写真が手元に残った。

 別れの日が近づいた2月。「もうすぐ、桜が咲くよ。去年のように美人マダム2人連れて、花見しようね」

 もう言葉を発せなくなっていた夫は、ただひたすら私の目を見ていた。あれは「ありがとう」だったのか。

 桜を待たずして夫は旅立った。今年も、もうすぐ桜が咲く春が来る。

 2月16日、夫の5回目の命日が過ぎた。
  
  まだ、我が夫婦は元気だ。でも後10年も経つと、どちらが先か分からないがこんな日々がやってくるんだろうね。20年も生きたくはない!最近ふとそんなことも頭をよぎるようになった。

 高松朝江さん、小生は福岡市で育って、今は兵庫県明石市で暮らしている73歳です。貴重なレポート有難うございました。

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