質問なるほドリ:「極点社会」防ぐには?=回答・佐藤丈一
毎日新聞 2014年05月09日 東京朝刊
◇長期的には大都市も縮小 出生率回復、時間との勝負
なるほドリ 人口問題で「極点(きょくてん)社会」という言葉を聞いたよ。
記者 岩手県知事や総務相を務めた増田寛也氏らが言い始めました。増田氏が座長の日本創成(そうせい)会議・人口減少問題検討分科会は、日本では将来、多くの地方が人口減と人口流出で消滅(しょうめつ)し、大都市だけが残る可能性を指摘しました。そうした社会を「極点社会」と呼んでいます。
Q 日本はもう人口が減ってるよね。
A 2008年の約1億2800万人がピークで、このままでは48年に1億人を割る見込みです。人口減は3段階で起き、第1段階では子どもや働き手は減っても、高齢者は増えます。第2段階では、高齢者は横ばいか微減(びげん)。第3段階に入るとどの世代も減り、本格的に人口減少が始まります。日本は大都市が第1段階、地方は第2段階ですが、第3段階の町村もあります。地方では高齢者が減って年金頼みの経済が崩(くず)れ、働く場のない若者が介護(かいご)需要(じゅよう)が激増する大都市に移るため、極点化が進むといいます。
Q 流入元の地方が消滅するなら、いずれ東京だって危なくない?
A そうですね。1人の女性が一生に産む子どもの数にあたる指数を「合計特殊出生率(とくしゅしゅっしょうりつ)」といい、12年の東京都は1.09。全国平均は1.41で、際立って低いんです。出生率は1組の夫婦とほぼ同数の2.07までアップすると人口を維持(いじ)できるとされていますが、回復のメドは立っておらず、東京も長期的には縮小の危機にさらされています。
Q 極点社会は防げるのかな?
A 移民(いみん)の受け入れは別として、20〜39歳の女性はどんどん減っていて、時間との勝負です。仮に出生率が2.1へ上昇(じょうしょう)しても、遅(おそ)ければ効果は出ません。子を産む女性の数が減ってしまった後に、1人当たりの出生率が少々伸びても人口は維持できないからです。2.1への回復が5年遅れると、将来人口が300万人減るとの試算もあります。戦後ベビーブーム世代の2世、1970年代生まれの「団塊(だんかい)ジュニア」の出生率上昇に期待がかかりますが、既に40歳を超えている人もいます。結婚をしやすい環境整備、子育てへの経済支援、働き方の見直しなどを同時に、早急に進めていくことが不可欠です。(政治部)
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いやはや。「狭い日本 そんなに急いでどこへ行く」とは自動車運転の標語だったが、小父さんの子供の頃にも守屋浩さんが歌う「僕は泣いちっち」 ♪〜僕の恋人東京へいっちっち〜♪なんて歌が大流行して、あれからずっと首都圏に人が吸い込まれて行った。
ついに地方都市が896も無くなる日が見えてきたのか!何度でもやろうとして出来なかった首都の移転が駄目だったのなら地方の再生をしないと、せっかくの広い日本が勿体ないのじゃーないのかな。竹島や尖閣列島ばかりに目を配らないと日本の本土から守ろうよ、手を打とうよ、政治家さんたち!
下も関連というか、本家本元の新聞記事。
社説:「消滅都市」リスト 東京集中への重い警告
厳しい警告である。産業界や学界の有識者らで構成する「日本創成会議」の分科会(座長・増田寛也元総務相)が独自の人口推計を盛り込んだ資料と提言をまとめた。2040年までに日本の市区町村(政令市区部も個別に計算)の約半数が最終的に「消滅」の可能性がある状態に追い込まれかねないと指摘、個別のリストを公表した。
試算は今後も東京など大都市圏への人口流入に歯止めがかからない前提で算出したものだが、誇張とは言い切れない。人口減少ペースをできるだけ緩和し地域崩壊を食い止めるため、地方での長期的な人口確保策の検討を本格化すべきだ。
人口減少は不可避とはいえ、個別試算まで示されると多くの自治体にとってはやはり衝撃だろう。
資料は将来人口を決定づける要素として「20〜39歳の女性人口」に着目した。2010年から40年までの30年で同人口が5割以下に減る市区町村について増田氏らは人口減少を防止できず自治が困難になりかねない「消滅可能性都市」と定義した。
国立社会保障・人口問題研究所の各種推計にもとづき試算した場合でも373市区町村がこの基準に該当する。だが、増田氏らは大都市圏への人口流入が研究所の想定以上のペースで継続しかねないとみており、その場合、全体の約5割の896に拡大してしまう。そのうち人口が1万人を切る市区町村も523と全体の約3割を占め「このままでは消滅の可能性が高い」と分析している。
増田氏らは昨年末に月刊誌でもこうした試算を公表し波紋を広げたが、今回は個別市区町村の推計を公表しただけに影響は大きい。「消滅」との過激な表現や地方からの人口流出の見積もりには議論もあるだろう。だが、東京などでは今後、後期高齢者が激増し介護など要員ニーズなどが想定され、地方から大都市圏に若い世代が流出する要因となる。出生率が低い東京などへの人口流入で人口減少と地域社会の空洞化が一層加速する懸念は否定できまい。
同時に公表した提言は人口減少を緩和するため12年で1.41だった出生率は25年に1.8にまで上昇することが望ましいとの目標を掲げた。子育て支援などの社会環境の整備と地方活性化に向けた施策を両輪で回すべきだ。提言では各種政策も列記したが「東京一極集中」是正は価値観を転換するくらいの覚悟がいる。
分科会があえて個別リストを公表したのは全体数や社会保障の制度論議に偏重しがちだった人口減少問題を地域の現実的な課題とする認識を共有する狙いからだったという。実態を見据え、地に足のついた議論を進めていく端緒とすべきだ。