上下の写真だけが紙面ビューアーから
危機の真相:日米首脳会談 誇大妄想と視野狭窄=浜矩子
毎日新聞 2014年04月19日 東京朝刊
オバマ米大統領が来日する。4月23日夜の到着予定だ。国賓待遇での来日である。米大統領の国賓扱いは、クリントン元大統領以来、18年ぶりのことだという。鳴り物入りで、何を話し合うのか。グローバル時代の日米関係は、どんな具合になっているのか。
日米首脳会談の最大の焦点は、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)だという。ウクライナ情勢についても話し合うらしい。日韓関係や日中関係も話題になりそうだ。成長戦略などについても、語り合うのだろう。
このように書いてみて思う。どうも締まりがない。久々に国賓待遇でお迎えするというのに、問題意識の筋肉質な共有が感じられない。
TPP交渉をどう決着させるかは、さしあたり大きな政策課題ではあるだろう。ウクライナ情勢は緊迫している。東アジアにおける日本の対近隣姿勢には、米国もハラハラしているだろう。経済成長への固執ぶりは、日米双方ともなかなかのものだ。両首脳が会談する以上、これくらいのことについては、おのずと話すことになるだろう。
だが、逆に、こうしたテーマについてであれば、もう少し日常的に話し合っていてしかるべきではないか。「日米同盟」を高らかに掲げながら、どうも、昨今の日米関係には密度が感じられない。
それが悪いとも思わない。グローバル時代において、日米同盟という考え方に果たしてどこまでの大義があるのか。この点についても、考え直されていい面があるだろう。ただ、それはそれとして、最も仲良しであるはずの国同士で久々のハイグレードなミーティングをするなら、もう少しまともな気合の入れ方が見えてもよさそうなものだ。
なぜ、こういうことになるのか。おそらく、両国とも、自分のことがあまりよくみえていないからなのだと思う。
安倍政権は「日本を取り戻す」という。取り戻すという感覚は実に後ろ向きだ。過去にばかり目が向いている。これでは、今の自分がみえるわけがない。
オバマ大統領は、次第に近視眼的になっている。2009年の大統領就任当初、彼は広角視野で米国の位置づけを考え直そうとしていた。初の黒人大統領としての就任演説には、その新鮮な気概がみなぎっていた。それに比べて、今年の1月28日に行われた大統領一般教書演説は、何とビジョンに欠けていたことか。
むろん、就任演説と一般教書演説では、意味も位置づけも違う。一般教書演説は恒例の年頭行事で、そこでは、実務的に政策を語ることが求められる。大所高所論に終始するわけにはいかない。それにしても、基本理念は打ち出されていなければいけない。
オバマ氏の一般教書演説は、年々、理念性を失っている。「決められない」「何もしていない」。これらの批判にひるんで、点数稼ぎにばかり走るようになってしまった。
時代逆行的誇大妄想と自信喪失的視野狭窄(きょうさく)が出会っても、そこから生産的な認識が生まれ出てくるとは思われない。親しい国の首脳同士であるならば、セレモニーもさりながら、少し我に返って、現状を素直におさらいする時間を共有してはどうかと思う。
今の日本経済は成熟経済だ。成熟経済に必要なのは、分かち合いの論理だ。奪い合いの論理ではない。一握りの強者が栄えることで、全体が元気になれるという発想は幻想だ。政策は強き者をより強くするためにあるわけではない。弱き者の生きる権利を守ることが、その本源的役割だ。
この認識がしっかりしていないと、成熟経済の支え手としてはまともに機能できない。この認識が希薄な政策責任者が、他の国の政策責任者と出会っても、まともな語り合いの場は形成されない。
今の米国は、パックス・アメリカーナの盟主ではない。腐ってもタイだという面はある。だが、そのことが今日的な自画像の発見を阻害しているかもしれない。時代逆行的誇大妄想とは一味違うが、自信喪失的視野狭窄の裏側には、どうも、永遠のセレブ幻想がこびりついているようにみえる。
その雰囲気が、今年の大統領一般教書演説の後段ににじみ出ていた。大局観無き実績の並べ立てに終始していたと思えば、突如として、世界が米国を必要としている、世界が米国を頼りにしている、という。いささか支離滅裂だ。
腐ったタイよりは、新鮮なイワシの方がずっといい。かつてのタイにイワシ化しろとはいわない。自信はないのに、いつまでもタイの感覚が抜けないようだと結局のところ支離滅裂への転落を免れない。
かくして、日米双方とも、腰が定まらない。落ち着きがない。目が見えていない。これでは、会っても仕方がない。
==============
■人物略歴
浜矩子(はま・のりこ) 同志社大教授。次回は5月17日に掲載します。
浜節(はまぶし)はいつ聞いてもいつ読んでも気持ちいいね〜。いやいやこのネットからお聞きしたアメリカ情報では、オバマ大統領の支持率はイラク戦争を始めた、前のブッシュ大統領よりまだ低いらしい。低かろうが低くなかろうが、日本はホワイトハウスの考え方に沿っていかなければデメリットの方が大きいのかも知れない。でもそんな主体性のない安倍内閣が高い支持率をキープしているのも現実だ。
昨日は安倍総理、大阪の町工場を歩いてご満悦だったようだ。今日のニュースでは「大阪の中小企業を見てきましたが、ベースアップもされていました」と総理大臣さん、鹿児島2区補選かな?街頭演説をぶってっいなさった。世間知らずもそこまできたら大したものだね。大企業ですらベースアップしていない会社の方が多いと思われるのに、大阪で例外中の例外な優良企業でも見てきたんだろう。
繰り返しお断りしておくが、小父さんの支持政党は自民党。そして安倍晋三政権は支持しない。
浜矩子先生、この日米会談のことをテレビでもたくさん話して下さい。お願いします。
危機の真相:日米首脳会談 誇大妄想と視野狭窄=浜矩子
毎日新聞 2014年04月19日 東京朝刊
オバマ米大統領が来日する。4月23日夜の到着予定だ。国賓待遇での来日である。米大統領の国賓扱いは、クリントン元大統領以来、18年ぶりのことだという。鳴り物入りで、何を話し合うのか。グローバル時代の日米関係は、どんな具合になっているのか。
日米首脳会談の最大の焦点は、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)だという。ウクライナ情勢についても話し合うらしい。日韓関係や日中関係も話題になりそうだ。成長戦略などについても、語り合うのだろう。
このように書いてみて思う。どうも締まりがない。久々に国賓待遇でお迎えするというのに、問題意識の筋肉質な共有が感じられない。
TPP交渉をどう決着させるかは、さしあたり大きな政策課題ではあるだろう。ウクライナ情勢は緊迫している。東アジアにおける日本の対近隣姿勢には、米国もハラハラしているだろう。経済成長への固執ぶりは、日米双方ともなかなかのものだ。両首脳が会談する以上、これくらいのことについては、おのずと話すことになるだろう。
だが、逆に、こうしたテーマについてであれば、もう少し日常的に話し合っていてしかるべきではないか。「日米同盟」を高らかに掲げながら、どうも、昨今の日米関係には密度が感じられない。
それが悪いとも思わない。グローバル時代において、日米同盟という考え方に果たしてどこまでの大義があるのか。この点についても、考え直されていい面があるだろう。ただ、それはそれとして、最も仲良しであるはずの国同士で久々のハイグレードなミーティングをするなら、もう少しまともな気合の入れ方が見えてもよさそうなものだ。
なぜ、こういうことになるのか。おそらく、両国とも、自分のことがあまりよくみえていないからなのだと思う。
安倍政権は「日本を取り戻す」という。取り戻すという感覚は実に後ろ向きだ。過去にばかり目が向いている。これでは、今の自分がみえるわけがない。
オバマ大統領は、次第に近視眼的になっている。2009年の大統領就任当初、彼は広角視野で米国の位置づけを考え直そうとしていた。初の黒人大統領としての就任演説には、その新鮮な気概がみなぎっていた。それに比べて、今年の1月28日に行われた大統領一般教書演説は、何とビジョンに欠けていたことか。
むろん、就任演説と一般教書演説では、意味も位置づけも違う。一般教書演説は恒例の年頭行事で、そこでは、実務的に政策を語ることが求められる。大所高所論に終始するわけにはいかない。それにしても、基本理念は打ち出されていなければいけない。
オバマ氏の一般教書演説は、年々、理念性を失っている。「決められない」「何もしていない」。これらの批判にひるんで、点数稼ぎにばかり走るようになってしまった。
時代逆行的誇大妄想と自信喪失的視野狭窄(きょうさく)が出会っても、そこから生産的な認識が生まれ出てくるとは思われない。親しい国の首脳同士であるならば、セレモニーもさりながら、少し我に返って、現状を素直におさらいする時間を共有してはどうかと思う。
今の日本経済は成熟経済だ。成熟経済に必要なのは、分かち合いの論理だ。奪い合いの論理ではない。一握りの強者が栄えることで、全体が元気になれるという発想は幻想だ。政策は強き者をより強くするためにあるわけではない。弱き者の生きる権利を守ることが、その本源的役割だ。
この認識がしっかりしていないと、成熟経済の支え手としてはまともに機能できない。この認識が希薄な政策責任者が、他の国の政策責任者と出会っても、まともな語り合いの場は形成されない。
今の米国は、パックス・アメリカーナの盟主ではない。腐ってもタイだという面はある。だが、そのことが今日的な自画像の発見を阻害しているかもしれない。時代逆行的誇大妄想とは一味違うが、自信喪失的視野狭窄の裏側には、どうも、永遠のセレブ幻想がこびりついているようにみえる。
その雰囲気が、今年の大統領一般教書演説の後段ににじみ出ていた。大局観無き実績の並べ立てに終始していたと思えば、突如として、世界が米国を必要としている、世界が米国を頼りにしている、という。いささか支離滅裂だ。
腐ったタイよりは、新鮮なイワシの方がずっといい。かつてのタイにイワシ化しろとはいわない。自信はないのに、いつまでもタイの感覚が抜けないようだと結局のところ支離滅裂への転落を免れない。
かくして、日米双方とも、腰が定まらない。落ち着きがない。目が見えていない。これでは、会っても仕方がない。
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■人物略歴
浜矩子(はま・のりこ) 同志社大教授。次回は5月17日に掲載します。
浜節(はまぶし)はいつ聞いてもいつ読んでも気持ちいいね〜。いやいやこのネットからお聞きしたアメリカ情報では、オバマ大統領の支持率はイラク戦争を始めた、前のブッシュ大統領よりまだ低いらしい。低かろうが低くなかろうが、日本はホワイトハウスの考え方に沿っていかなければデメリットの方が大きいのかも知れない。でもそんな主体性のない安倍内閣が高い支持率をキープしているのも現実だ。
昨日は安倍総理、大阪の町工場を歩いてご満悦だったようだ。今日のニュースでは「大阪の中小企業を見てきましたが、ベースアップもされていました」と総理大臣さん、鹿児島2区補選かな?街頭演説をぶってっいなさった。世間知らずもそこまできたら大したものだね。大企業ですらベースアップしていない会社の方が多いと思われるのに、大阪で例外中の例外な優良企業でも見てきたんだろう。
繰り返しお断りしておくが、小父さんの支持政党は自民党。そして安倍晋三政権は支持しない。
浜矩子先生、この日米会談のことをテレビでもたくさん話して下さい。お願いします。