「今も映画はよく見るわ。女優は生涯、勉強しなきゃ」=東京都千代田区で、梅村直承撮影
毎日新聞 2013年12月06日 東京夕刊
◇力の抜けたいい恋、今はできるように
ずっと気になっていた。業界用語で「目張り」と呼ぶらしい。目を囲むようにアイラインをくっきり描き、上下のまつげにマスカラをたっぷりつける独特のメーク。なぜなのだろう。失礼を承知で大女優にお聞きした。
「みんなイヤがるのよ。厚化粧だからよしなさいって」。ハスキーな声でさらりと返した。「でも、このお化粧をしているのが私。女優を始めた少女のころから変えないわ。周りが何と言おうと、私なりにきれいでいたいの」。猫のような瞳に光が加わる。細い体をソファにうずめ、プカリとたばこをふかした。やっぱり色っぽい。
映画が庶民の最大の娯楽だった時代、石原裕次郎さんや小林旭さんの相手役として銀幕を彩った。近年は「寅さん」シリーズのマドンナ、リリーさんでご存じの向きが多かろう。1955年に「緑はるかに」でデビューして以来、出演した映画は158本になる。
昔は仕事ばかりのがむしゃら生活、街歩きはかなわぬ夢だった。今は仕事を選び、自分の時間をゆったり取る。六本木や銀座をぶらぶら、100円ショップや「ユニクロ」ものぞいてみる。「電車の切符も買えるようになったのよ、すごいでしょ」
出演本数に劣らず「恋多き女」でもある。11月に出版した自伝「咲きつづける」では、小林旭さんとのロマンス、石原裕次郎さんへの淡い慕情、元夫・石坂浩二さんとの出会いと結婚生活、別れをつづった。
「石坂さん、今でもすてきな人だと思うし、女優を続けさせてくれたという感謝しかありません。とてもきれいな別れ方だったのよ」。今もどなたかに恋してらっしゃる? 「もちろん。恋が途切れたことはありません」。微笑がふっと謎めいた。
「でもね、若いころは年中べったりして無理するような恋だった。今は違う。会いたい時に会う。忙しかったり気分が乗らなかったりすれば会わない。力の抜けたいい恋ができるようになりましたよ。結婚? そうねえ、一緒にいてすごく楽な人なら、また一つ屋根の下で暮らすのもいいかもしれないわ。やっぱり女は恋していなくっちゃ」
今、米劇作家、テネシー・ウィリアムズ原作「渇いた太陽」の舞台に立っている。名声を博した往年の女優役。上川隆也さんが演じる若い俳優の卵との愛憎劇だ。女優はアルコール依存症で薬物中毒という難しい役どころ。「ウィリアムズって心の病んだ人を描く作品が多いのよ。だから役に没入すればするほど、心身共につらくなっちゃう。出演するかどうか悩んだのだけれど、『あなた以外にこの役を演じられる人はいない』ってみんなに口説かれちゃってね」。しょうがないわ、というニュアンスに自信が垣間見えた。
来年はデビュー60年目。若いころのように台本をすんなり覚えられないし、体も動かなくなってきた。「老いはみんなに訪れること。心配したり恐れたりしてもしょうがないわ。それにイヤなこともすぐ忘れられるようになったしね」
80歳になったら、米女優リリアン・ギッシュ、ベティ・デイビスが老姉妹役を演じた名画「八月の鯨」(87年)の日本版の主役を務めるのが夢だ。「リリアンは撮影当時、90歳を超えていたのよ。老いることを淡々と、それでいながらかれんに演じていて。初めて『この役、やりたいわ』と強く思わせてくれた映画なの。80歳になってもキャメラの前に立てる人生。何てすてきかしら」
別れ際、「じゃあね」とひらひら、手を振った。思わずエスコートしたくなる、美しい後ろ姿だった。【吉井理記】
==============
■人物略歴
◇あさおか・るりこ
1940年旧満州新京(現中国・長春市)生まれ。75年ブルーリボン賞主演女優賞。 「渇いた太陽」は29日まで東京・日比谷のシアタークリエなどで公演中。
男はつらいよ 寅次郎のリーリーこと浅丘ルリ子さん(73歳)さんの映画はいくつか観ているはずなんだが、強く印象に残っていないな。 姥捨て山がテーマの映画「デンデラ」の撮影風景のテレビには強烈な印象を受けた。
映画『デンデラ』予告編 6月25日公開!
あと「博士の愛した数式」では博士 - 寺尾聰の姉で後見人の意地悪そうな未亡人役で素敵な演技を見せてくれた。
彼女の恋愛歴こそ知らないが、これもテレビで「裕次郎さんは私のこと好きだったの」みたいな石原まき子(北原 三枝)さんを刺激させるようなことを発言をした時には驚いた。
先日のテレビ、吉田拓郎YOKOSO - NHKで中村雅俊との対談をやっていたが、女優の奥さんを持つ二人が「女優と結婚するのは男と結婚するみたいなもの」とお互いにうなづき合っていたが、浅丘ルリ子さんこそ女の顔をした男性なんだろうね。しかし、本物の女優だとは思うね!
写真は昨日に続き、釜谷池周辺
毎日新聞 2013年12月06日 東京夕刊
◇力の抜けたいい恋、今はできるように
ずっと気になっていた。業界用語で「目張り」と呼ぶらしい。目を囲むようにアイラインをくっきり描き、上下のまつげにマスカラをたっぷりつける独特のメーク。なぜなのだろう。失礼を承知で大女優にお聞きした。
「みんなイヤがるのよ。厚化粧だからよしなさいって」。ハスキーな声でさらりと返した。「でも、このお化粧をしているのが私。女優を始めた少女のころから変えないわ。周りが何と言おうと、私なりにきれいでいたいの」。猫のような瞳に光が加わる。細い体をソファにうずめ、プカリとたばこをふかした。やっぱり色っぽい。
映画が庶民の最大の娯楽だった時代、石原裕次郎さんや小林旭さんの相手役として銀幕を彩った。近年は「寅さん」シリーズのマドンナ、リリーさんでご存じの向きが多かろう。1955年に「緑はるかに」でデビューして以来、出演した映画は158本になる。
昔は仕事ばかりのがむしゃら生活、街歩きはかなわぬ夢だった。今は仕事を選び、自分の時間をゆったり取る。六本木や銀座をぶらぶら、100円ショップや「ユニクロ」ものぞいてみる。「電車の切符も買えるようになったのよ、すごいでしょ」
出演本数に劣らず「恋多き女」でもある。11月に出版した自伝「咲きつづける」では、小林旭さんとのロマンス、石原裕次郎さんへの淡い慕情、元夫・石坂浩二さんとの出会いと結婚生活、別れをつづった。
「石坂さん、今でもすてきな人だと思うし、女優を続けさせてくれたという感謝しかありません。とてもきれいな別れ方だったのよ」。今もどなたかに恋してらっしゃる? 「もちろん。恋が途切れたことはありません」。微笑がふっと謎めいた。
「でもね、若いころは年中べったりして無理するような恋だった。今は違う。会いたい時に会う。忙しかったり気分が乗らなかったりすれば会わない。力の抜けたいい恋ができるようになりましたよ。結婚? そうねえ、一緒にいてすごく楽な人なら、また一つ屋根の下で暮らすのもいいかもしれないわ。やっぱり女は恋していなくっちゃ」
今、米劇作家、テネシー・ウィリアムズ原作「渇いた太陽」の舞台に立っている。名声を博した往年の女優役。上川隆也さんが演じる若い俳優の卵との愛憎劇だ。女優はアルコール依存症で薬物中毒という難しい役どころ。「ウィリアムズって心の病んだ人を描く作品が多いのよ。だから役に没入すればするほど、心身共につらくなっちゃう。出演するかどうか悩んだのだけれど、『あなた以外にこの役を演じられる人はいない』ってみんなに口説かれちゃってね」。しょうがないわ、というニュアンスに自信が垣間見えた。
来年はデビュー60年目。若いころのように台本をすんなり覚えられないし、体も動かなくなってきた。「老いはみんなに訪れること。心配したり恐れたりしてもしょうがないわ。それにイヤなこともすぐ忘れられるようになったしね」
80歳になったら、米女優リリアン・ギッシュ、ベティ・デイビスが老姉妹役を演じた名画「八月の鯨」(87年)の日本版の主役を務めるのが夢だ。「リリアンは撮影当時、90歳を超えていたのよ。老いることを淡々と、それでいながらかれんに演じていて。初めて『この役、やりたいわ』と強く思わせてくれた映画なの。80歳になってもキャメラの前に立てる人生。何てすてきかしら」
別れ際、「じゃあね」とひらひら、手を振った。思わずエスコートしたくなる、美しい後ろ姿だった。【吉井理記】
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■人物略歴
◇あさおか・るりこ
1940年旧満州新京(現中国・長春市)生まれ。75年ブルーリボン賞主演女優賞。 「渇いた太陽」は29日まで東京・日比谷のシアタークリエなどで公演中。
男はつらいよ 寅次郎のリーリーこと浅丘ルリ子さん(73歳)さんの映画はいくつか観ているはずなんだが、強く印象に残っていないな。 姥捨て山がテーマの映画「デンデラ」の撮影風景のテレビには強烈な印象を受けた。
映画『デンデラ』予告編 6月25日公開!
あと「博士の愛した数式」では博士 - 寺尾聰の姉で後見人の意地悪そうな未亡人役で素敵な演技を見せてくれた。
彼女の恋愛歴こそ知らないが、これもテレビで「裕次郎さんは私のこと好きだったの」みたいな石原まき子(北原 三枝)さんを刺激させるようなことを発言をした時には驚いた。
先日のテレビ、吉田拓郎YOKOSO - NHKで中村雅俊との対談をやっていたが、女優の奥さんを持つ二人が「女優と結婚するのは男と結婚するみたいなもの」とお互いにうなづき合っていたが、浅丘ルリ子さんこそ女の顔をした男性なんだろうね。しかし、本物の女優だとは思うね!
写真は昨日に続き、釜谷池周辺