迎賓館での歓迎式典に臨んだコール西独首相。左は中曽根康弘首相=東京都港区の迎賓館で1986(昭和61)年5月4日、木村滋撮影
毎日新聞 2024/2/15 18:42 有料記事
日本は2023年の名目国内総生産(GDP)の実額(ドル換算)で、ドイツを下回り、世界4位に転落した。10年に中国に抜かれたのに続き、今度は同じ「技術立国」で長年ライバル関係だったドイツに半世紀ぶりの逆転を許した。その背景を探ると、足元の円安だけでは説明できない日本経済の課題が見えてきた。【聞き手・袴田貴行】
国際通貨研究所理事長・渡辺博史氏
渡辺博史・国際通貨研究所理事長=東京都中央区で2018年11月21日、井出晋平撮影
日本とドイツはエネルギーと食糧を国内調達できず、その資金を工業製品の輸出で稼いできたという共通点がある。類似の経済構造を持ち、かつて2倍以上の開きがあった国内総生産(GDP)で追い抜かれたのは、ドイツが伸びたのではなく、日本の経済成長力と製品開発力が落ちたからであり、日本経済が1990年代以降、成長できないまま、横ばいで推移しているところに問題がある。
日本は人口が減少に転じる中で、1人当たりGDPの維持・向上を目指してきたが、これもできていないことがさらに深刻な問題だ。1人当たりGDPはドイツに抜かれるどころか、経済協力開発機構(OECD)加盟38カ国中21位であり、主要7カ国(G7)で最下位。このままではアジアの中でもいずれ韓国や台湾に抜かれるだろう。
こうした状況を挽回するため、中国が製品の企画やデザイン、部品製造、組み立てまで一国で完結できる体制を整えるのに対抗して、日本は改めて韓国や東南アジア諸国連合(ASEAN)を巻き込んだ、もう一つのサプライチェーン(供給網)構築に動くべきだ。そうする中で経済の潜在力を高めていく必要がある。
大阪大特任教授・小野善康氏
大阪大の小野善康特任教授=大阪府茨木市で2019年6月27日、清水憲司撮影
国内総生産(GDP)は生産と消費・投資の側面から、その国の経済規模の大きさを測る「物差し」に過ぎない。発展途上国のように経済の成長期にあり、人々がモノやサービスをほしがる段階では、生産が増えた分だけ消費も増える。つまりGDPの増加が国民が消費できる量、言い換えれば豊かさの増加を意味するため、重要な意義がある。
しかし、日本のような経済が成熟した国は事情が異なる。1990年代以降、日本は1人当たりの家計金融資産で世界トップクラスであり、いわば「世界の大金持ち」だ。それなのに消費が伸びず、その結果、GDPも増えなかったのは、日本全体として人々がかつてほど新しいモノやサービスを必要としておらず、「お金をためておきたい」と考えているからだ。今やGDPは豊かさを示す指標ではなく、他国と順位を競うことに何ら意味はない。
GDPの増加を自己目的化し、国際順位に一喜一憂するより、国民一人一人の生活の質を引き上げることの方が重要だ。例えば介護や保育、環境、観光、芸術など、人々の満足につながる事業を充実させていくことが日本の目指す方向だろう。
面白いですね!国内総生産(GDP)で、ドイツを下回り、世界4位に転落したことで、慌てふためいて3位を奪還するためにあの手この手を打つか?
1人当たりの家計金融資産に力点を置いて、介護や保育、環境、観光、芸術などに目を向けるか・・・?
日本という国のことがまたひとつ認識できた気がする。果たして、今の国会議員さんたちはどちらにも感心がないように私には思えますが・・・(笑)。
毎日新聞 2024/2/15 18:42 有料記事
日本は2023年の名目国内総生産(GDP)の実額(ドル換算)で、ドイツを下回り、世界4位に転落した。10年に中国に抜かれたのに続き、今度は同じ「技術立国」で長年ライバル関係だったドイツに半世紀ぶりの逆転を許した。その背景を探ると、足元の円安だけでは説明できない日本経済の課題が見えてきた。【聞き手・袴田貴行】
国際通貨研究所理事長・渡辺博史氏
渡辺博史・国際通貨研究所理事長=東京都中央区で2018年11月21日、井出晋平撮影
日本とドイツはエネルギーと食糧を国内調達できず、その資金を工業製品の輸出で稼いできたという共通点がある。類似の経済構造を持ち、かつて2倍以上の開きがあった国内総生産(GDP)で追い抜かれたのは、ドイツが伸びたのではなく、日本の経済成長力と製品開発力が落ちたからであり、日本経済が1990年代以降、成長できないまま、横ばいで推移しているところに問題がある。
日本は人口が減少に転じる中で、1人当たりGDPの維持・向上を目指してきたが、これもできていないことがさらに深刻な問題だ。1人当たりGDPはドイツに抜かれるどころか、経済協力開発機構(OECD)加盟38カ国中21位であり、主要7カ国(G7)で最下位。このままではアジアの中でもいずれ韓国や台湾に抜かれるだろう。
こうした状況を挽回するため、中国が製品の企画やデザイン、部品製造、組み立てまで一国で完結できる体制を整えるのに対抗して、日本は改めて韓国や東南アジア諸国連合(ASEAN)を巻き込んだ、もう一つのサプライチェーン(供給網)構築に動くべきだ。そうする中で経済の潜在力を高めていく必要がある。
大阪大特任教授・小野善康氏
大阪大の小野善康特任教授=大阪府茨木市で2019年6月27日、清水憲司撮影
国内総生産(GDP)は生産と消費・投資の側面から、その国の経済規模の大きさを測る「物差し」に過ぎない。発展途上国のように経済の成長期にあり、人々がモノやサービスをほしがる段階では、生産が増えた分だけ消費も増える。つまりGDPの増加が国民が消費できる量、言い換えれば豊かさの増加を意味するため、重要な意義がある。
しかし、日本のような経済が成熟した国は事情が異なる。1990年代以降、日本は1人当たりの家計金融資産で世界トップクラスであり、いわば「世界の大金持ち」だ。それなのに消費が伸びず、その結果、GDPも増えなかったのは、日本全体として人々がかつてほど新しいモノやサービスを必要としておらず、「お金をためておきたい」と考えているからだ。今やGDPは豊かさを示す指標ではなく、他国と順位を競うことに何ら意味はない。
GDPの増加を自己目的化し、国際順位に一喜一憂するより、国民一人一人の生活の質を引き上げることの方が重要だ。例えば介護や保育、環境、観光、芸術など、人々の満足につながる事業を充実させていくことが日本の目指す方向だろう。
面白いですね!国内総生産(GDP)で、ドイツを下回り、世界4位に転落したことで、慌てふためいて3位を奪還するためにあの手この手を打つか?
1人当たりの家計金融資産に力点を置いて、介護や保育、環境、観光、芸術などに目を向けるか・・・?
日本という国のことがまたひとつ認識できた気がする。果たして、今の国会議員さんたちはどちらにも感心がないように私には思えますが・・・(笑)。