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マイナ保険証は今すぐやめなさい! もうメチャクチャ! 怒り炸裂対談! 堤未果×荻原博子 / 毎日新聞

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写真はサンデー毎日の記事(ネットから)

マイナ保険証は今すぐやめなさい! もうメチャクチャ! 怒り炸裂対談! 堤未果×荻原博子

毎日新聞 2023/7/26 05:00 有料記事

トラブル続きのマイナンバーカードを巡り、ついに政府の個人情報保護委員会がデジタル庁に立ち入り検査に入ることに。大迷走のマイナンバーカードと一体化した「マイナ保険証」について、当初から「撤回すべきだ」と厳しく追及していた論客2人に対談してもらった。

 ▼世界の潮流は「見直し」「縮小」

 ▼止まらぬマイナカードの自主返納

 ▼命を守る健康保険証は絶対残せ!

 他人の情報の誤登録や医療機関で健康保険資格が確認できないといったトラブルが相次ぎ、不信感からマイナンバーカード(マイナカード)を「返納」するケースが急増している。あまりの評判の悪さに、河野太郎デジタル担当相は「マイナカード」という名前の変更まで言い始めた。経済ジャーナリストの荻原博子さんと最新著『堤未果のショック・ドクトリン』(幻冬舎新書)でマイナカードについて厳しく追及している国際ジャーナリストの堤未果さんに対談してもらった。

ポイント付与の落とし穴

荻原博子 『サンデー毎日』(6月25日号)にも書きましたが、マイナンバーカードは、どこに落とし穴があるかわからない高速道路(ハイウエー)のようなものだと私は思っています。一般道路よりも効率よく、スピーディーにドライブできる。しかしあまりに拙速に工事を進めたために欠陥だらけ。どこに落とし穴があるかわからない。それなのに国民全員を走らせようとしているのです。ちょっと信じられない状況です。

堤未果 アメリカの知人に聞いても、拙速で強引な個人情報の紐(ひも)付けには「口あんぐり」だそうです。アメリカでは社会保障番号SSN(Social Security-Number)という9ケタの個人番号が80年以上前に導入されましたが、いまだになりすましなどの犯罪が多発し、カオス(混沌(こんとん))です。

 2015年には、番号を盗んだ人が他人になりすまして確定申告を行い、1万3000人分の還付金を手に入れるという事件が起きました。コロナ禍でも個人番号を盗まれて勝手にクレジットカードや銀行口座を作られるなどの犯罪が一気に増え、「一生変わらない個人番号がもたらす被害は大きすぎる」として、見直しを求める声が高まっています。

荻原 アメリカでは、過去に年間5兆円もの被害を出したこともありました。

堤 韓国は、マイナンバーに近い機能を持つ住民登録番号を1962年に導入し、あらゆる個人情報と紐付けられました。やはりこちらも情報漏えい事件が絶えず、政府が把握している流出件数だけで1億3000万件に及びます。

 欧州に目を転じれば、イギリスは2006年にIDカード法が成立しましたが、10年の政権交代で廃止になりました。ドイツは納税者番号はありますが、一元化された共通番号制度は違憲とされ、行政機関ごとに異なる番号で管理していますね。

荻原 ドイツやフランスなど個人情報の管理が厳しい国では、各行政分野で別々の番号が使われる「セパレート型」です。一方、日本やアメリカ、韓国、シンガポールなどは、一つの番号に全情報が紐付けられている「フラット型」。フラット型は侵入さえできれば、さまざまな情報が芋づる式に引き出せてしまいます。

堤 マイナンバーカード推進派は「先進国で制度がないのは日本だけ」「海外に遅れる」などと言いますが、実際は逆です。漏えいやなりすまし犯罪防止が徹底できず制度を廃止したり、一元化や口座紐付けをはずすなど、逆に利用範囲を狭めるケースが多い。それなのに日本は、①税②社会保障③災害の3分野に限定されていた利用範囲を、わざわざ国会審議なしにいくらでも適用範囲を広げられるよう、法改正までしてしまいました。

荻原 年金の受取口座や銀行口座、健康保険証に運転免許証、母子手帳……。ここまで多岐にわたる情報を1カ所にまとめるマイナンバーカードを作ろうとしている国はありません。

堤 全くですね。水道民営化やLGBT法もそうですが、どうも日本は、諸外国で問題だらけだったり失敗して撤退する頃になってから「世界に追いつけ!」と参入する傾向があるんですよ。

荻原 マイナンバーカードも普及を促進するためのポイント事業だけで2兆円超かかってます。

堤 ああ……。2兆円あればすべての国公立大の授業料を無償にできるのに。

荻原 ポイント事業の前の費用もいれれば約3兆円。国民1人あたりざっくり3万円の税金が使われているのです。ポイントを2万円もらったからといって喜べません(笑)。

堤 1万円減ってる!(笑)

怖いのはカードよりマイナポータル

―2万円分のポイントで釣ったり、マイナカードの普及率と交付金を連動して地方自治体を締め上げるなど、マイナカードの普及に政府は必死ですが、集めた情報をどのように使おうとしているのでしょうか。

堤 マイナカードで集めた国民の税や年金情報、医療情報などが入るボックスが「マイナポータル」(政府が運営するウェブサイト)です。マイナカードと暗証番号さえあれば、だれでもマイナポータルにアクセスできる。これが、個人情報を民間企業に渡すための「入り口」になっていくのです。

荻原 財界が、のどから手が出るほどほしかった個人情報のパッケージ、それがマイナポータルですね。政府は「カードのICチップには税金や年金、医療などの情報は記録されていないから大丈夫」などと宣伝していますが、マイナポータルに集まった個人情報の民間事業者による「利活用」が拡大すれば、漏えいや不正利用の危険性が拡大します。

堤 そう、表だけでなく確実に裏からも狙われます。しかも、マイナポータルの規約では、個人データが盗まれるなどしてもデジタル庁は実質責任を取りません。マイナポータルトップ画面の一番下にある利用規約を読んでみてください。

荻原 それでも規約は改訂されたんですよ。以前はマイナポータル規約第23条で、事故が発生しても「一切免責」としてきましたが、無責任だと批判され、「デジタル庁の故意又は重過失によるものである場合を除き、デジタル庁は責任を負わないものとします」(同26条)と条文を変えたのです。

堤 あれはひどかったですね。慌てて改訂した箇所は、明らかに小手先で形だけ変えたアリバイ作り。「故意または重過失」の定義がないのでいくらでも責任逃れできるからです。法的にはまだ任意だし、絶対に責任は取らないでしょう。しかも公益を理由に規約変更も可能ですよ。個人データは「最大資産」ですから。実はカード以上に怖いのは、多くの個人情報が集中するこの「ポータル」なのです。

マイナンバー総点検 自治体が尻拭い

荻原 これだけいろんな不具合が噴出したので、政府は「新型コロナ並みの臨戦態勢」を敷くと言って、総点検本部を立ち上げました。マイナポータルで閲覧できる医療や年金、所得などに関する29項目を対象に、紐付けの誤りがないかどうか全データの点検を自治体に指示しました。マイナポイントで急速にカード普及をあおって自治体に負担をかけておきながら、さらに業務を増やす。自治体の首長さんたちはカンカンですよ。

堤 特に、本庁より人が少ない支所は間違いなくパンクするでしょうね。地元のお年寄りが来てもマイナカード対応PCも少ないし。

荻原 ただでさえ忙しい自治体の窓口に、マイナンバーカードの「自主返納」が増えていて、そのうえに膨大な点検作業をしろ、期限も前倒しだなんて人手もなくて自治体は悲鳴を上げています。

堤 気の毒すぎますよね。私の住む地域の役所窓口の方も、「住民の方々には叱られ、夜は連日残業」と嘆いていましたよ。そもそも手作業で紐付け作業をさせるデジタル庁って……。もはやアナログ庁です(笑)。

「国民皆保険制度」の崩壊の危機

荻原 「マイナポイント2万円」に釣られて駆け込みでマイナカードを作った人たちの多くは、5年後に更新しなければいけないことを知りません。特に国民健康保険料は高いですから、若い人は「自分は病気にならないから」と更新手続きを怠り、〝無保険〟になる人が増えることが予想されます。今までは自分で手続きしなくても保険証は送られてきましたが、今度は申請しないといけない。大量の〝無保険者〟が出ることが心配です。

堤 大いに心配ですね。そうなると、まさに貧困大国アメリカと同じ悪夢が、いよいよ日本で現実になってしまいますね。

荻原 若い人だけでなく、一人暮らしの高齢者や認知症の人も、更新できないケースが増えるでしょう。若い人も高齢者も保険制度から抜けてしまえば、60年以上守り続けてきた世界に誇る国民皆保険制度が崩壊しかねません。

堤 それが最大の危機ですよ。全国民が持っていて、高齢者ほど頻繁に使う保険証を盾に、マイナ保険証作成に追い込んでゆく手法は極めて悪質。「あれば便利」と宣伝してから「ないと生活できない」にすり替えたのです。カードを作れない人が病院に行けなくなれば国民皆保険制度は崩壊、生存権を定めた憲法25条違反だけでなく、任意作成の番号法17条1項にも反しています。「誰も取り残さない」というのなら、紙の保険証を残し選択制にすべきでしょう。

荻原 今、医療現場では、「マイナ保険証」が使えるところでも、機械で顔写真が読み込めず、本人確認ができないなどのトラブルが多発しています。かろうじて高齢者らが医療を受けられているのは、従来の保険証があるからです。窓口の人が従来の保険証で本人確認をしてくれているおかげです。あるお医者さんが言ってましたが、高齢の患者さんが「先生、不便な世の中になりましたねえ」と話していたとか(笑)。どこがデジタル社会なんでしょうか。

堤 もうコントですね(笑)。やはり紙の保険証廃止という暴挙は阻止すべきだと思います。

政府のやりたい放題を止める方法

―問題だらけの改正マイナンバー法は成立し、その後もトラブルが絶えませんが、今のところ政府は制度の撤回をするつもりはないようです。この流れは変えることができないのでしょうか。

堤 できますよ。マイナンバーのセキュリティー体制や個人情報保護、責任の所在がしっかりするまではカードを作らない、使わないという意思表示を国民が示せばいいのです。

 マイナ保険証は市区町村レベルの公的サービスですから、住んでいる地域の役所や地方議員にどんどん伝えましょう。マイナンバーカード所持を給食費や保育料免除の条件にした岡山県備前市は、住民が怒りの声を上げ続け、市長に方針を撤回させています。お任せにせず動けば変わります。

荻原 後は選挙ですね。

堤 ですね! 政権交代でIDカード法をストップさせたイギリスのように、おかしいと思ったら国政でも地方選挙でも、意思表示しましょう。

―コロナ禍でマスクマップを作ったことなどで世界的に有名になった、台湾のデジタル担当相のオードリー・タンさんと対談された時の話を聞かせてください。

堤 はい、去年社会のデジタル化について対談させていただいた時、「権力を集中させないこと」「一番弱い立場の人に合わせて設計すること」の二つが最重要だと話してくれました。日本はどちらも真逆!

荻原 台湾はコロナ禍、シビックハッカー(プログラミングの技術で社会問題を解決する市民技術者)がいろんな情報をあげてくれましたもんね。その働きもあって、オンラインで提供したマスク地図とアプリによってマスクがすぐ普及しました。アベノマスクと大違い(笑)。

堤 今の日本に欠けているものは三つ。一つは、政府と国民の信頼関係。二つ目は情報の扱いに関する透明性と機密性。三つ目は個人情報の持ち主の主権保護です。

荻原 そういうことができないのに壮大なハイウエーを作ろうとする。

堤 壮大なものほど時間をかけなければなりません。デジタル時代の基本は「リスク分散」、世界の流れは「脱個人番号」に向かっています。まずは声を上げ、一旦この流れを止めましょう。

おぎわら・ひろこ

 長野県生まれ。大学卒業後、経済事務所勤務を経て独立。経済の仕組みを、生活者の視点から、分かりやすく解説する家計経済のパイオニアとして活躍。『5キロ痩せたら100万円』(PHP新書)など著書多数

つつみ・みか

 東京都生まれ。米ニューヨーク市立大大学院より国際関係論修士号取得。アムネスティ・インターナショナルNY支局員などを経て、米国野村證券に勤務中の2001年9月11日、同時多発テロに遭遇。以降、ジャーナリストとして活躍。『ルポ 貧困大国アメリカ』(岩波新書/日本エッセイスト・クラブ賞、新書大賞受賞)など著書多数

 サンデー毎日2023年8月6日号掲載

 今日も河野太郎デジタル相は参院特別委員会の閉会中審査で堂々と保険証が25年秋以降の廃止を述べていたようだが、さて大臣は、野党の諸君はこの二人の対談の知識はおありなんだろうか?最もこの議論が完璧なものではないかも知れないが、私にはいい勉強になった。

 読んでいて、かっての国鉄民営化でJR北海道やJR四国の経営が疲弊したように、国民皆保険を無くして、(他の国のことは知らないが)アメリカのように高額医療費のために、誰でもがすぐに医療機関に駆け込まない状態を国が作ろうとしているのではないか?と想像してしまった。弱者切り捨てだよね。大幅に派遣労働者を容認して大企業が潤う制度を作ったのも日本国政府だし・・・。

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