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土記 約束されている失敗=伊藤智永  /  毎日新聞 

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平成の日本政・官界を取材してきた伊藤智永専門編集委員が担当するコラム。


毎日新聞  2023/4/22 東京朝刊 有料記事
<do-ki>

 始める前から失敗と無駄を警告されたようなものだろう。岸田文雄政権の少子化対策は、各種手当・給付の「異次元なバラマキ」案を並べるが、国連人口基金(UNFPA)は19日発表した報告書で、そうした施策に効果は乏しいと指摘しているからだ。

 同基金が毎年出す「世界人口白書」2023年版は、世界の人口が昨年11月に80億人を超え、今年半ばまでにインドが中国を上回り世界一になる――といった推計がニュースだった。弊紙はニューデリー特派員が報じた。でも、興味深い内容は他にある。

 世界は人口が増える地域と減る地域の二極化が進んでおり、50年までの増加の半分はインドやエジプトなど8カ国が占め、世界の3分の2が暮らす欧米や日本などでは出生率が減っている。

 多くの国で出生率の上げ下げをめざす対策が行われているが、数値目標を掲げる政策では、一時的に増減しても効果が続かない。出産した女性や家族に金銭を与えても十分な効果は出ていない。日本は、結婚・出産・子育ての希望が全てかなうと仮定した「希望出生率1・8」が政府目標である。

 白書は、世界でも少子高齢化が深刻な「トップ2」として、日韓両国の実情を3ページの特別コラムで紹介。表題は「職場や家庭における女性の役割に対する期待が、結婚率と出生率を新たな低水準へ引きずり込んでいる」。

 勉強して進学し、就職して活躍し、投資して老後に備え、老親を介護し、合間に恋愛しろ、結婚しろ、子供を産め、いい母親(いい嫁も?)であれ……。子供を産む身体を持っていたら、こんなに指図される人生になるのか……。

 同基金のカネム事務局長は言う。「出生率目標を設けるなど、権力者が女性の出産能力を道具として利用する危険性を歴史は警告しています。夫や義父母や国家といった家父長的社会構造により、女性の身体が押さえつけられてきた慣習に終止符を打つべきです」。家父長制の名残である戸籍制度の廃止は、「四月バカ」の冗談でなく核心的な少子化対策だ。

 カネム氏は、問いが誤っていたのだという。「問題は人口が多すぎるとか少なすぎるとかではありません。女性たちが何を望み、何を選ぶかなのです」。数字を操る政策をとらない方が自由度が広がり、遠回りなようでも経済や社会の活力を保てるとする。

 16日付朝刊で、ノンフィクション作家の河合香織さんが「結婚と出産は結びつかなければならないのか」と問うた。輝く未婚の母はたくさんいる。(専門編集委員)

 へへへ、首相官邸は「一笑に付す」かな?それとも国連人口基金(UNFPA)の発表につじつまを合わせた説明を作るのか?
 流行の言い回しでは「どうする家康」ならぬ「どうする官邸?」となるが・・・。

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