=幾島健太郎撮影
毎日新聞 2022/9/11 東京朝刊 有料記事
新型コロナウイルスの感染拡大やロシアのウクライナ侵攻という衝撃が相次いだこの3年間、どの大国が台頭しただろうか? まず言えるのは、そんな国は一つもないということだ。その上で地政学的観点から言うとすれば、将来にとって最も重な問要題は、中国の弱さではないか。
米国は当初、適切なコロナ対策が取れなかった。トランプ大統領(当時)は米国の民主制度を弱らせ、国際的評価をおとしめた。一方、米欧の製薬会社は優れたワクチンを生み出し、西側の技術がいまも優勢であることを示した。おかげで米欧は権威主義社会よりも早くほぼ通常の社会経済に復帰できた。強力な対露制裁やウクライナへの武器供与でも、日本を含む西側諸国の強さを示している。
だが、米欧諸国の限界もあらわになった。低中所得国へ十分なワクチンなどの支援を提供できず、またその意思もないことが証明された。西側のリーダーシップは頼りにならないものとなったのである。
ワクチン製造大国を自任するインドは2021年、国内の感染拡大を受け、数カ月にわたりワクチン輸出を止め、途上国の多くの友人を失った。ロシアの感染状況もひどかった。致死率は公式発表よりもはるかに高いはずだ。ロシア製ワクチンは国民にも不人気で、経済も大打撃を受けた。プーチン大統領が国民の愛国心をあおるためウクライナ侵攻を決断したのは、不況や社会的緊張が背景にあると考えてもいいだろう。
そして中国である。コロナ禍で長く国境を閉鎖し、政治指導者たちは得意満面だった。米欧の感染状況は中国の優越性や西側の退潮を示していたからだ。ワクチン開発にも成功した。21年に生産された世界のワクチンの半数近くは中国企業2社による。中国は多額の融資をしている貧困国にワクチンを送る「ワクチン外交」も展開した。今年2月4日にはロシアと共同声明を発表し、西側による国際秩序の支配を終わらせるという共通の目標を掲げた。
こう書くと、中国が素晴らしい国であり、勝利したかのようにすら思える。しかし、現実は違う。中国のコロナ対策は失敗しつつある。中国製ワクチンはあまり効果がなかったからだ。ゼロコロナ政策のため厳しいロックダウンが繰り返され、中国経済は高い代償を支払っている。ワクチン外交も失敗し、いまは融資先の国々で多発している債務危機の対応に追われる。
中国経済はほかにも二つの深刻な打撃を受けている。一つはGDP(国内総生産)の3割に上るとも言われる不動産・建設業の崩壊だ。影響は深刻で回復の見込みは薄い。中国政府の金融支配のおかげで大きな財政不安は避けられそうだが、おそらく今後数年間、不動産業が経済成長に寄与することはないだろう。
もう一つの打撃は、今夏の熱波と干ばつである。人的被害だけでなく、水力発電による電力供給も落ち込んだ。中国国営メディアが22年の経済成長率の目標である5・5%という数字に言及しなくなったのも驚きはない。実際の見通しはこの半分ぐらい、あるいはもっと低いかもしれない。一方、戦略的パートナーであるロシアのウクライナ侵攻で中国のエネルギー・食糧の輸入コストは増加した。
この数年間、大国間の競争が激化する一方、大国の弱さもあらわになった。ただ、今後数年間で言えば、このうち中国の弱さこそ最も重要な問題である。ロシアの事例に見られるように、政治指導者は経済や社会が弱体化するとき、ナショナリズムを利用して国民の支持をつなぎ、支配体制を維持しようとするからだ。中国は高齢化社会で高度経済成長が終わっている。技術面でも、特に半導体分野では欧米には及ばない。だからこそ、むしろ警戒すべきなのである。
中国による台湾軍事侵攻は差し迫ったものではない、という見方がある。時間は中国に味方するのであえて侵攻を急がないだろう、というのがその根拠だ。だが最近の中国の弱体化は、現実はその逆であることを示している。中国にとって、侵攻を待てばむしろ困難になってしまうのだ。そうではないことを祈ろう。だが、中国という大国の弱体化は、世界にとって懸念すべきことなのだ。【訳・金子淳】
う~~~ん、9.11(アメリカ同時多発テロ事件)が発生した本日も、虹がかかるような未来とは正反対のコラムに出会ったね。私は仕事もしていないが、日本経済にとっても最大の貿易国は中国ではないのかな?欧米だって中国抜きには国内の経済は活性化できないと思うが・・・?
「中国は2030年までに有人月面着陸の能力をつけ、その後の月科学調査・開発、深宇宙探査、宇宙資源利用に向けた・・・」とか何とかもネット上にはあるが、習近平さん、アドバルーンを揚げるのも台湾を威嚇するのもほどほどにして地道に中国経済を立て直してください、としか私には言えない(笑)。
毎日新聞 2022/9/11 東京朝刊 有料記事
新型コロナウイルスの感染拡大やロシアのウクライナ侵攻という衝撃が相次いだこの3年間、どの大国が台頭しただろうか? まず言えるのは、そんな国は一つもないということだ。その上で地政学的観点から言うとすれば、将来にとって最も重な問要題は、中国の弱さではないか。
米国は当初、適切なコロナ対策が取れなかった。トランプ大統領(当時)は米国の民主制度を弱らせ、国際的評価をおとしめた。一方、米欧の製薬会社は優れたワクチンを生み出し、西側の技術がいまも優勢であることを示した。おかげで米欧は権威主義社会よりも早くほぼ通常の社会経済に復帰できた。強力な対露制裁やウクライナへの武器供与でも、日本を含む西側諸国の強さを示している。
だが、米欧諸国の限界もあらわになった。低中所得国へ十分なワクチンなどの支援を提供できず、またその意思もないことが証明された。西側のリーダーシップは頼りにならないものとなったのである。
ワクチン製造大国を自任するインドは2021年、国内の感染拡大を受け、数カ月にわたりワクチン輸出を止め、途上国の多くの友人を失った。ロシアの感染状況もひどかった。致死率は公式発表よりもはるかに高いはずだ。ロシア製ワクチンは国民にも不人気で、経済も大打撃を受けた。プーチン大統領が国民の愛国心をあおるためウクライナ侵攻を決断したのは、不況や社会的緊張が背景にあると考えてもいいだろう。
そして中国である。コロナ禍で長く国境を閉鎖し、政治指導者たちは得意満面だった。米欧の感染状況は中国の優越性や西側の退潮を示していたからだ。ワクチン開発にも成功した。21年に生産された世界のワクチンの半数近くは中国企業2社による。中国は多額の融資をしている貧困国にワクチンを送る「ワクチン外交」も展開した。今年2月4日にはロシアと共同声明を発表し、西側による国際秩序の支配を終わらせるという共通の目標を掲げた。
こう書くと、中国が素晴らしい国であり、勝利したかのようにすら思える。しかし、現実は違う。中国のコロナ対策は失敗しつつある。中国製ワクチンはあまり効果がなかったからだ。ゼロコロナ政策のため厳しいロックダウンが繰り返され、中国経済は高い代償を支払っている。ワクチン外交も失敗し、いまは融資先の国々で多発している債務危機の対応に追われる。
中国経済はほかにも二つの深刻な打撃を受けている。一つはGDP(国内総生産)の3割に上るとも言われる不動産・建設業の崩壊だ。影響は深刻で回復の見込みは薄い。中国政府の金融支配のおかげで大きな財政不安は避けられそうだが、おそらく今後数年間、不動産業が経済成長に寄与することはないだろう。
もう一つの打撃は、今夏の熱波と干ばつである。人的被害だけでなく、水力発電による電力供給も落ち込んだ。中国国営メディアが22年の経済成長率の目標である5・5%という数字に言及しなくなったのも驚きはない。実際の見通しはこの半分ぐらい、あるいはもっと低いかもしれない。一方、戦略的パートナーであるロシアのウクライナ侵攻で中国のエネルギー・食糧の輸入コストは増加した。
この数年間、大国間の競争が激化する一方、大国の弱さもあらわになった。ただ、今後数年間で言えば、このうち中国の弱さこそ最も重要な問題である。ロシアの事例に見られるように、政治指導者は経済や社会が弱体化するとき、ナショナリズムを利用して国民の支持をつなぎ、支配体制を維持しようとするからだ。中国は高齢化社会で高度経済成長が終わっている。技術面でも、特に半導体分野では欧米には及ばない。だからこそ、むしろ警戒すべきなのである。
中国による台湾軍事侵攻は差し迫ったものではない、という見方がある。時間は中国に味方するのであえて侵攻を急がないだろう、というのがその根拠だ。だが最近の中国の弱体化は、現実はその逆であることを示している。中国にとって、侵攻を待てばむしろ困難になってしまうのだ。そうではないことを祈ろう。だが、中国という大国の弱体化は、世界にとって懸念すべきことなのだ。【訳・金子淳】
う~~~ん、9.11(アメリカ同時多発テロ事件)が発生した本日も、虹がかかるような未来とは正反対のコラムに出会ったね。私は仕事もしていないが、日本経済にとっても最大の貿易国は中国ではないのかな?欧米だって中国抜きには国内の経済は活性化できないと思うが・・・?
「中国は2030年までに有人月面着陸の能力をつけ、その後の月科学調査・開発、深宇宙探査、宇宙資源利用に向けた・・・」とか何とかもネット上にはあるが、習近平さん、アドバルーンを揚げるのも台湾を威嚇するのもほどほどにして地道に中国経済を立て直してください、としか私には言えない(笑)。