個人資産の運用形態と日本の活性化が結びつくのか(写真:Kiyoshi Ota/Bloomberg)
野口悠紀雄「経済最前線の先を見る」
「資産所得倍増プラン」唐突政策に浮かぶ2大問題 / 東洋経済
岸田政権は支離滅裂、格差は是正されず拡大する
岸田内閣の資産所得倍増プランの問題は、富裕層優遇だけでない。金利を上昇させ、国の資金調達を困難にする。日本で預金が多いのは、合理的な資産運用である可能性が強い。個人資産の運用形態が変わるから日本が活性化するのではなく、日本が活性化すれば個人資産の運用形態が変わるのだ。昨今の経済現象を鮮やかに斬り、矛盾を指摘し、人々が信じて疑わない「通説」を粉砕する──。野口悠紀雄氏による連載第71回。
唐突に飛び出した「資産所得倍増プラン」
岸田文雄首相は、5月5日、外遊先のロンドンで「資産所得倍増プラン」を突然表明した。日本の個人金融資産2000兆円のうち半分以上が預金や現金で保有されていると指摘し、これらを投資に向かわせるため、少額投資非課税制度(NISA)の改革や、個人型確定拠出年金(iDeCo)の加入対象年齢を、現行の64歳以下から65歳以降にも広げることを検討するとした。そして、今年末に「資産所得倍増プラン」を策定するという。
これは、いくつかの点で誠に不思議な政策だ。まず誰の目にも明白なのは、これが富裕層への優遇策であることだ。
振り返ってみると、昨年9月の自民党総裁選で、岸田氏は「令和版所得倍増」を掲げた。そして、金融所得課税の引き上げを主張した。就任時には、「格差是正と分配」を強調した。
しかし、就任早々に株価が大幅下落するという「岸田ショック」に見舞われたため、金融所得課税の強化は姿を消した。
その後の衆院選の公約や所信表明演説では、「所得倍増」という言葉は影を潜めてしまった。そして、「新しい資本主義」とは一体何であるかの検討が続けられた。その結果、出てきたのが、富裕層の優遇策だ。格差は是正されるのでなく拡大する。迷走を続けたあげく、結局は、当初とは向きがまったく逆になってしまった。
預金が減れば、長期金利が上昇するだろう
問題は以上のことだけではない。以下は、あまり議論されることのない点だが、重要だ。
第1は、マクロ経済への影響だ。
資産所得倍増政策の結果、家計が銀行預金を引き出し、それを株式や投資信託への投資に回したとしよう。銀行預金から株式などへの移動額としては、相当の額が考えられているのだろう。そうであれば、以下に述べるようなマクロ経済的な変化を引き起こさざるをえない。
銀行としては、負債である預金が減るので、他の負債を増やすか、あるいは資産を減らす必要がある。変化額が大きいので、国債を減らさざるをえなくなるだろう。そこで、銀行は保有国債をマーケットで売却する。すると、国債の価格は下落し、長期金利が上昇する。すると、国債発行の資金コストが上昇し、国は資金調達が困難になる。
また、円高への圧力が高まる。現在日本銀行は、長期金利をゼロ%に維持することを金融政策の柱にしている。上限を0.25%に設定し、それを少しでも上回ると、買いの介入をしている。それでも抑えきれず、円高になる。それでいいのだろうか?
残りの3~4ページは下
日本の家計は不合理な資産運用をしているのか?
成長率を高めることが先
正直なところ、私に岸田内閣の経済政策を議論する力などない。だけど昨日のテレビで「資産所得倍増プラン」家計が銀行預金を引き出し、それを株式や投資信託への投資に回すように勧めるなんて話をを聞いて耳を疑った。3ページにはリスクを考慮することが必要だという言葉も出てくる。そもそも投資なり博打なんてものは遊び金を持っている人が出来ることではないのかな?
こんなことが議論されていても、今日の各党の支持率NHK世論調査では、「自民党」が40.1%、(+0.3%up)や高市氏、防衛費10兆円必要 財源は国債、当初予算の約2倍(中日新聞)なんてのも気になるね。
野口悠紀雄「経済最前線の先を見る」
「資産所得倍増プラン」唐突政策に浮かぶ2大問題 / 東洋経済
岸田政権は支離滅裂、格差は是正されず拡大する
岸田内閣の資産所得倍増プランの問題は、富裕層優遇だけでない。金利を上昇させ、国の資金調達を困難にする。日本で預金が多いのは、合理的な資産運用である可能性が強い。個人資産の運用形態が変わるから日本が活性化するのではなく、日本が活性化すれば個人資産の運用形態が変わるのだ。昨今の経済現象を鮮やかに斬り、矛盾を指摘し、人々が信じて疑わない「通説」を粉砕する──。野口悠紀雄氏による連載第71回。
唐突に飛び出した「資産所得倍増プラン」
岸田文雄首相は、5月5日、外遊先のロンドンで「資産所得倍増プラン」を突然表明した。日本の個人金融資産2000兆円のうち半分以上が預金や現金で保有されていると指摘し、これらを投資に向かわせるため、少額投資非課税制度(NISA)の改革や、個人型確定拠出年金(iDeCo)の加入対象年齢を、現行の64歳以下から65歳以降にも広げることを検討するとした。そして、今年末に「資産所得倍増プラン」を策定するという。
これは、いくつかの点で誠に不思議な政策だ。まず誰の目にも明白なのは、これが富裕層への優遇策であることだ。
振り返ってみると、昨年9月の自民党総裁選で、岸田氏は「令和版所得倍増」を掲げた。そして、金融所得課税の引き上げを主張した。就任時には、「格差是正と分配」を強調した。
しかし、就任早々に株価が大幅下落するという「岸田ショック」に見舞われたため、金融所得課税の強化は姿を消した。
その後の衆院選の公約や所信表明演説では、「所得倍増」という言葉は影を潜めてしまった。そして、「新しい資本主義」とは一体何であるかの検討が続けられた。その結果、出てきたのが、富裕層の優遇策だ。格差は是正されるのでなく拡大する。迷走を続けたあげく、結局は、当初とは向きがまったく逆になってしまった。
預金が減れば、長期金利が上昇するだろう
問題は以上のことだけではない。以下は、あまり議論されることのない点だが、重要だ。
第1は、マクロ経済への影響だ。
資産所得倍増政策の結果、家計が銀行預金を引き出し、それを株式や投資信託への投資に回したとしよう。銀行預金から株式などへの移動額としては、相当の額が考えられているのだろう。そうであれば、以下に述べるようなマクロ経済的な変化を引き起こさざるをえない。
銀行としては、負債である預金が減るので、他の負債を増やすか、あるいは資産を減らす必要がある。変化額が大きいので、国債を減らさざるをえなくなるだろう。そこで、銀行は保有国債をマーケットで売却する。すると、国債の価格は下落し、長期金利が上昇する。すると、国債発行の資金コストが上昇し、国は資金調達が困難になる。
また、円高への圧力が高まる。現在日本銀行は、長期金利をゼロ%に維持することを金融政策の柱にしている。上限を0.25%に設定し、それを少しでも上回ると、買いの介入をしている。それでも抑えきれず、円高になる。それでいいのだろうか?
残りの3~4ページは下
日本の家計は不合理な資産運用をしているのか?
成長率を高めることが先
正直なところ、私に岸田内閣の経済政策を議論する力などない。だけど昨日のテレビで「資産所得倍増プラン」家計が銀行預金を引き出し、それを株式や投資信託への投資に回すように勧めるなんて話をを聞いて耳を疑った。3ページにはリスクを考慮することが必要だという言葉も出てくる。そもそも投資なり博打なんてものは遊び金を持っている人が出来ることではないのかな?
こんなことが議論されていても、今日の各党の支持率NHK世論調査では、「自民党」が40.1%、(+0.3%up)や高市氏、防衛費10兆円必要 財源は国債、当初予算の約2倍(中日新聞)なんてのも気になるね。