毎日新聞 2021/11/23 東京朝刊
人の安否をいう「消息」を、息を消すと読んで不吉だという人がいる。手紙を消息というのは安否への不安を「消し息(や)む」からだとの説もある。実は話はもっと単純で、消=死、息=生のセットで安否を表すらしい
▲さて巨大企業の創業者も、有名女優も、国際機関のトップも、ある日突然消息を絶つ今日の中国である。むろんセレブだけではない。人権派の法律家も、ジャーナリストや研究者も、いきなり連絡が途絶えたという話には事欠かない
▲司法手続きにもとづく拘束もあろうが、その法執行が不透明で適法性を検証できなければ「法」にもさして意味はない。で、今回2週間以上も消息不明となっていたのは女子テニスの彭帥(ほうすい)選手である
▲彭さんは今月初めに中国の元副首相に性的関係を強要されたと明かした後に消息が途絶え、アスリートや女子テニス協会、国連機関から懸念の声が出ていた。米メディアでは北京での冬季五輪開催資格まで問題視される事態となった
▲そのさなかの国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長と彭さんのビデオ通話である。「私は北京の自宅に元気でいる」と笑顔で語った彭さんは、「今はプライバシーを尊重してほしい」と自らの暴露については口をつぐんだ
▲五輪開催にむけ事態収拾を急ぎたい中国当局とIOCの連係プレーにも見えるが、肝心の彭さんの自由意思の安否は依然不明だ。人が突然消え、現れると当局に都合の良い話をする。隠すほどに表れる、かの国の人権の「消息」である。
中国事情もさることながら、IOCのトーマス・バッハさんは、東京でもそうだったけど、単にオリンピックビジネ?だけをやりたいのじゃーないのかな。節操のかけらも無さそう!