マイナンバーのPRキャラクター「マイナちゃん」とともに記者会見に臨む平井卓也デジタル改革担当相=東京都千代田区で2021年2月16日、後藤豪撮影
毎日新聞 2021/3/9 東京朝刊
菅義偉政権が推し進める「行政のデジタル化」に欠かせないマイナンバーカード。交付開始から5年がたったが、交付率は26・5%(3月4日現在)で、いまだに4人に3人が取得していない。政府が掲げる「2022年度末までにほぼ全国民が取得」という目標の実現は危ぶまれているのが実情だ。普及を阻む「壁」とは――。
政府内からも批判「本気じゃなかった」
「どんどん(カードの交付が)増えているというのは、非常にありがたい」。平井卓也デジタル改革担当相は2月16日の閣議後記者会見で、カードの普及率が25%を超えたことを踏まえ、こう述べた。一方で平井氏は「22年度中にほぼ全ての国民が取得というのは、なかなか厳しい」(2月2日の会見)とも語る。
カードには個人を識別する番号のほか、顔写真や生年月日などの情報が搭載されている。16年1月に始まった交付の狙いは、これまで役所の窓口で書類をやり取りしていた社会保障や税などの手続きをできるだけオンライン化し、ムダを省くことだ。
菅首相は20年9月の就任時に「行政のデジタル化の鍵はマイナンバーカード。役所に行かなくてもあらゆる手続きができる社会を実現するためには、カードが不可欠だ」と強調した。政府は普及を加速させるため、カードを持つ人を対象に最大5000円分のポイントを配る「マイナポイント」制度を21年9月末まで半年間延長。まだカードを持っていない全国民に、スマートフォンから手続きができるQRコード付きの申請書も順次、郵送している。
この結果、直近1年で普及率は約11ポイント上昇した。しかし、それでも「4人に3人が未取得」という現状に対しては、政府内からも「これまで本気で取り組んでこなかった証拠だ」(経済官庁幹部)との声が出ている。
なぜ、普及のスピードが鈍いのか。「より良いサービスになっていないから」と指摘するのは、福島県会津若松市でデジタル社会の実現に取り組んできたアクセンチュア・イノベーションセンター福島の中村彰二朗・センター共同統括だ。会津若松市は11年の東日本大震災後、産官学挙げてデジタル化に取り組み、オンライン診療や水田の水の自動管理、家庭と学校の連絡用アプリなどを活用する「先進地」として知られる。
中村氏は「会津若松市では、市民一人一人のニーズに応じて必要なサービスを作ったから、多くの人に受け入れられた。LINEやGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・コム)があれだけ使われているのも、利用者が欲しいと思うサービスだからだ」と話す。
実際、マイナンバーカードを持つメリットが分からないという声は多い。今のところ、カードの使い道は身分証明書のほか、住民票の写しや印鑑登録証明書のコンビニエンスストアでの取得、行政手続きのオンライン申請などに限られる。福井市の建設業、竹山尚芳さん(37)は「カードがなくても不便はないし、必要性を感じない」という。
医療機関や薬局に設置されるマイナンバーカードの読み取り機=東京都千代田区で2021年1月、原田啓之撮影
政府は用途拡大で利便性を実感してもらおうと、21年3月から健康保険証、24年度末には運転免許証と一体化する予定だ。保険証との一体化は3月下旬に本格開始予定だが、カードをかざす顔認証付き読み取り機を申し込んだ医療機関や薬局は34・3%(2月28日現在)にとどまる。厚生労働省の担当者は「カードの普及率や他の医療機関などの導入状況を様子見しているところも多い」としている。
一方、「そもそも、新しいものに即応できる人は2割程度しかいない」と指摘するのは、関西学院大専門職大学院の佐藤善信教授だ。佐藤教授が専門のマーケティング論では、最先端の製品やサービスが世の中に出たとき、という「キャズム(溝)理論」がよく用いられる。この計16%の層と、それ以外の人々との間には深すぐに飛びつく層は全体の2・5%、比較的早い段階で受け入れる層は13・5%しかいないい溝があるとされ、普及させていくうえで「16%の壁」とも呼ばれる。
実感できる普及策を
佐藤教授は「マイナンバーカードも溝にはまっている。政府に対する信頼感が低いことも、溝を越えられない理由の一つ」と話す。内閣府が18年に実施した調査では、カードを取得しない理由(複数回答)は「必要性が感じられない」(57・6%)、「身分証明書は他にある」(42・2%)に続き、「個人情報の漏えいが心配」(26・9%)だった。政府は「制度、システムの両面でさまざまな安全管理措置を講じている。政府が情報を一元管理することもない」と説明しているが、情報流出や国の管理強化に対する不安は根強い。
カードの導入が決まった当初、政府内では義務化も検討されたが、国民の不安が根強いことから見送られた。あと2年でほぼ全国民が取得するという政府目標は実現可能なのか。
社会全体のデジタル化について詳しい日本総合研究所の岩崎薫里・上席主任研究員は「日本のデジタル政策はこの20年間、『美しい旗』を掲げてはうやむやになることの繰り返しだった。(マイナンバーカードも)達成できそうもない目標を立てても後で国民ががっかりするだけだ」と指摘。普及に向けては「政府はカードを取得しない選択肢があることも尊重しつつ、持っていることで利便性が高まることを国民が実感できるよう示していくしかない」と話す。【後藤豪】
どうも前安倍政権の北朝鮮拉致被害者救出、北方領土返還、アベノミクスなんかに似たアドバルーンに終わりそうだね。アベノマスクと同じように多額の予算を使っているのじゃーないですか?
毎日新聞 2021/3/9 東京朝刊
菅義偉政権が推し進める「行政のデジタル化」に欠かせないマイナンバーカード。交付開始から5年がたったが、交付率は26・5%(3月4日現在)で、いまだに4人に3人が取得していない。政府が掲げる「2022年度末までにほぼ全国民が取得」という目標の実現は危ぶまれているのが実情だ。普及を阻む「壁」とは――。
政府内からも批判「本気じゃなかった」
「どんどん(カードの交付が)増えているというのは、非常にありがたい」。平井卓也デジタル改革担当相は2月16日の閣議後記者会見で、カードの普及率が25%を超えたことを踏まえ、こう述べた。一方で平井氏は「22年度中にほぼ全ての国民が取得というのは、なかなか厳しい」(2月2日の会見)とも語る。
カードには個人を識別する番号のほか、顔写真や生年月日などの情報が搭載されている。16年1月に始まった交付の狙いは、これまで役所の窓口で書類をやり取りしていた社会保障や税などの手続きをできるだけオンライン化し、ムダを省くことだ。
菅首相は20年9月の就任時に「行政のデジタル化の鍵はマイナンバーカード。役所に行かなくてもあらゆる手続きができる社会を実現するためには、カードが不可欠だ」と強調した。政府は普及を加速させるため、カードを持つ人を対象に最大5000円分のポイントを配る「マイナポイント」制度を21年9月末まで半年間延長。まだカードを持っていない全国民に、スマートフォンから手続きができるQRコード付きの申請書も順次、郵送している。
この結果、直近1年で普及率は約11ポイント上昇した。しかし、それでも「4人に3人が未取得」という現状に対しては、政府内からも「これまで本気で取り組んでこなかった証拠だ」(経済官庁幹部)との声が出ている。
なぜ、普及のスピードが鈍いのか。「より良いサービスになっていないから」と指摘するのは、福島県会津若松市でデジタル社会の実現に取り組んできたアクセンチュア・イノベーションセンター福島の中村彰二朗・センター共同統括だ。会津若松市は11年の東日本大震災後、産官学挙げてデジタル化に取り組み、オンライン診療や水田の水の自動管理、家庭と学校の連絡用アプリなどを活用する「先進地」として知られる。
中村氏は「会津若松市では、市民一人一人のニーズに応じて必要なサービスを作ったから、多くの人に受け入れられた。LINEやGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・コム)があれだけ使われているのも、利用者が欲しいと思うサービスだからだ」と話す。
実際、マイナンバーカードを持つメリットが分からないという声は多い。今のところ、カードの使い道は身分証明書のほか、住民票の写しや印鑑登録証明書のコンビニエンスストアでの取得、行政手続きのオンライン申請などに限られる。福井市の建設業、竹山尚芳さん(37)は「カードがなくても不便はないし、必要性を感じない」という。
医療機関や薬局に設置されるマイナンバーカードの読み取り機=東京都千代田区で2021年1月、原田啓之撮影
政府は用途拡大で利便性を実感してもらおうと、21年3月から健康保険証、24年度末には運転免許証と一体化する予定だ。保険証との一体化は3月下旬に本格開始予定だが、カードをかざす顔認証付き読み取り機を申し込んだ医療機関や薬局は34・3%(2月28日現在)にとどまる。厚生労働省の担当者は「カードの普及率や他の医療機関などの導入状況を様子見しているところも多い」としている。
一方、「そもそも、新しいものに即応できる人は2割程度しかいない」と指摘するのは、関西学院大専門職大学院の佐藤善信教授だ。佐藤教授が専門のマーケティング論では、最先端の製品やサービスが世の中に出たとき、という「キャズム(溝)理論」がよく用いられる。この計16%の層と、それ以外の人々との間には深すぐに飛びつく層は全体の2・5%、比較的早い段階で受け入れる層は13・5%しかいないい溝があるとされ、普及させていくうえで「16%の壁」とも呼ばれる。
実感できる普及策を
佐藤教授は「マイナンバーカードも溝にはまっている。政府に対する信頼感が低いことも、溝を越えられない理由の一つ」と話す。内閣府が18年に実施した調査では、カードを取得しない理由(複数回答)は「必要性が感じられない」(57・6%)、「身分証明書は他にある」(42・2%)に続き、「個人情報の漏えいが心配」(26・9%)だった。政府は「制度、システムの両面でさまざまな安全管理措置を講じている。政府が情報を一元管理することもない」と説明しているが、情報流出や国の管理強化に対する不安は根強い。
カードの導入が決まった当初、政府内では義務化も検討されたが、国民の不安が根強いことから見送られた。あと2年でほぼ全国民が取得するという政府目標は実現可能なのか。
社会全体のデジタル化について詳しい日本総合研究所の岩崎薫里・上席主任研究員は「日本のデジタル政策はこの20年間、『美しい旗』を掲げてはうやむやになることの繰り返しだった。(マイナンバーカードも)達成できそうもない目標を立てても後で国民ががっかりするだけだ」と指摘。普及に向けては「政府はカードを取得しない選択肢があることも尊重しつつ、持っていることで利便性が高まることを国民が実感できるよう示していくしかない」と話す。【後藤豪】
どうも前安倍政権の北朝鮮拉致被害者救出、北方領土返還、アベノミクスなんかに似たアドバルーンに終わりそうだね。アベノマスクと同じように多額の予算を使っているのじゃーないですか?