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田原総一朗 安倍首相に“諫言”した内容を明かそう / 毎日新聞

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ジャーナリストの田原総一朗さん 

倉重篤郎のニュース最前線
田原総一朗 安倍首相に“諫言”した内容を明かそう

毎日新聞 (サンデー毎日)2020年1月28日 05時00分(最終更新 1月28日 05時35分) 

   
2020年 日本政治の大課題/脱「従米」して主体性回復を/核の傘か、非核化か/緩み切った噓だらけの政界に喝

外交、軍備、基地、通商……あらゆる領域で米国追従を突き進んできた安倍政権。内は桜問題にIR汚職に揺れているが、対米関係をどう再構築するかが2020年の日本の大テーマとなろう。 「従米」から脱却する「主体性」をキーワードに、田原総一朗氏が安倍首相に直言したことの核心を明かす。

日本の政治は2020年をどういう年にすべきか。

 一つの回答は、安保改定60年の節目であることを受け、戦後日本政治の根幹となってきた日米安保体制(=日米同盟)とその功罪をこの際徹底的に検証、総括し、今後どうするかを幅広い選択肢の下、長期的視野に立った国民的議論を深化させることであろう。

 なぜか。不滅の軍事同盟というものはない。成功例とされる日英同盟は21年、逆に失敗例と言われる日独伊三国同盟は5年という寿命であった。改定前を含めると68年の長きに亘(わた)るこの長期同盟も制度疲労があちこちに顕在化、放置できない状況に至っている。

何よりも制度の根本をなす「米国の日本防衛義務」と「日本の基地提供義務」の等価性が揺らいでいる。人命と土地提供では見合わない、もっと日本は高い対価を支払うべきだというのがトランプ大統領の主張だが、果たしてそうか。在日米軍基地と日本の手厚いサポート体制により米国側が享受してきた世界戦略上のメリットはどう評価するのか。同盟が両国にどう裨益(ひえき)してきたのか、負担になってきたのか。貸借対照表(バランスシート)を作り、オープンで本音の議論をすべき時が来たと思う。

 二つの独立した国家として、戦後75年たっていまだに一方が他方に過度に従属的であるといういびつさも目に余る。その象徴が、「不平等条約」と言われながらも一度も改定されない日米地位協定である。米国の意向が上意下達される場と成り下がっている日米合同委員会、いまだに米軍が首都圏の航空管制権を握る横田空域問題もしかり。外交・安全保障政策のあらゆる場面での対米追随姿勢、そのことによる経済・通商政策面での対米譲歩もまたそれでよかったのか、見直されるべき時期に来ている。

こういった制度の矛盾が、その運用によってますます拡大、深刻化していったのが第2次安倍晋三政権の7年だといえる。15年成立の新安保法制では、集団的自衛権行使を一部容認、後方分野(燃料、医療などの補給)では自衛隊が地球上至る所で対米支援できる仕組みに変え、装備、情報、指揮すべての面で米軍との一体化を強化しつつある。予算面ではF35など米国製兵器を言い値で爆買いし、辺野古新基地は、費用対効果を再吟味することなく、莫大(ばくだい)な工費、工期をかけて軟弱地盤を空(むな)しく埋め立てている。

 等価性では、自らを矮小(わいしょう)化、穴埋めのために戦後保守してきた集団的自衛権不行使や専守防衛といった不戦の縛りを熟議なく取り払い、従属性では、その延長線上に身を置いたまま制度的問題点を提起することなく歳月を浪費してきた。

IR汚職は安倍氏側近が仕掛けた説も

  日米同盟をどう捉え、見直すか。この論議の年初の口火を田原総一朗氏に切ってもらう。歴代首相の安保観を知悉(ちしつ)しているだけでなくこの問題を日本国の主体性喪失というわかりやすい切り口で分析する。安倍氏に地位協定改定を直接迫っているご意見番でもある。

 まずは年明け政局だ。国会論戦が始まった。

「日本の政界は緩み切っている。噓(うそ)をつくのが当たり前だ。野党もメディアもそれをチェックできない」

「例えば、中東への艦船派遣だ。本当に戦闘に巻き込まれる可能性がないのか。 『困ったことは起きないだろう』という甘い見通しだ。東電福島原発事故の反省が全く生かされてない」

「元法相夫妻の記者会見も呆(あき)れた。説明するのかと思ったら説明しないという会見だ。最低限のモラルが果たされていない」

「『桜を見る会』では、内閣府の役人が名簿を廃棄した。完全に官邸に対する忖度(そんたく)だ。森友問題の決裁文書改ざんを思い出す。政権が倒れても仕方のない不祥事だったが、麻生太郎財務相以下誰も責任をとらなかった。多少反省したかと思ったらとんでもなかった。『あれで済んだから次は何をやっても大丈夫だ』 ということになっている」

 IR汚職はどう見る?

「特捜検察としては事件化できるなら何でもやりたいと思っているのではないか。森友・加計(かけ)問題、関西電力疑惑、『桜を見る会』も含め、政治家を対象とした捜査が何もできない情けない状態が続いていた」

 まだ上に手が伸びる?

「安倍氏本人にはいかないだろう。賄賂を贈ったと事件化されたのは中国の企業だが、彼らは沖縄も北海道も日本進出はあきらめている。つまり敗者にすぎない。勝者は圧倒的に米国の企業だ。その中にはトランプ大統領の支持企業も入るだろう。捜査がそちらに行かない限り、安倍氏は関係ない。むしろ、横に広がるほど安倍氏にとってはプラスになる面もある。IRが盛り上がれば桜への関心が相対的に縮むからだ。安倍氏に近い筋が仕掛けた、との謀略説もあるほどだ」

 事件がポスト安倍の権力構図を微妙に変えている。

「自民党内には二つの潮流があった。安倍、麻生両氏を軸に岸田文雄氏で一本化しようとする勢力と、二階俊博、古賀誠両氏を中心に菅義偉氏を推す動きだ。IR事件で後者が傷ついた。逮捕された議員は二階派所属だし、菅氏は官房長官としてIR導入に関わり、かつ地元・横浜でも導入をめぐり反対する市民運動との間で対立を抱えている」

 ポスト安倍から脱落か?

「非常に苦しい。辞任した法相、経産相という2閣僚も菅系だ。菅潰しの動きだったのかとさえ思える」

 日米同盟に話を移す。

「国家の主体性をどう考えるか、対米従属からどう抜け出るか、という問題だ。宮澤喜一氏が『日本人は自分の体に合わせて服を作るのは下手だが、押しつけられた服に体を合わせるのはうまい』と僕に語ったことがある。言わんとするのは、戦前の日本は主体性をもって自ら(大日本帝国憲法の統帥権下での軍拡的な)服を作った結果、亡国の淵に沈んだが、戦後の日本は主体性を捨て、米国押し付けの(憲法9条、日米安保体制下での軍備抑制的な)服を上手に着こなし、平和経済大国を作り上げた」

「そういった戦後の成功があっただけに歴代首相は主体性ということは極力考えまいとした。考えるのが怖かった。吉田茂氏が敷いた道だった。軽軍備・経済重視の吉田路線と呼ばれた。ポスト吉田では、鳩山一郎、岸信介両首相までは、改憲、自主軍備という主体性を模索したが、60年安保改定後の政権はますます対米従属性を強めていった」

中曽根康弘首相は? 戦後政治の総決算として吉田政治を否定しようとした。

「彼もまた主体性を持とうとしなかった、というのが僕の評価だ。中曽根氏が防衛庁長官の時に専守防衛を強調したが、僕に言わせると、専守防衛とは本土決戦のことだ。第二次大戦末期に硫黄島、沖縄が相次いで占領され、軍が本土決戦を主張したが、1000万人以上の死者が出ることが予想され、それを避けるために鈴木貫太郎首相がポツダム宣言を受諾した、という経緯がある。中曽根氏が首相になった時に僕は率直に問うた。『あなたは専守防衛というが、それは本土決戦ということだ、それでいいのか』と。その時の中曽根氏の言葉は今でも忘れない。 『大きな声では言えないが専守防衛というのは戦わないことだ。米国の抑止力に期待することだ』と」

主体性回復には右寄りと左寄りが
1990年の冷戦崩壊で、主体性論はどう変質?

「日本に二つの意見が出た。一つはソ連という強敵がいなくなったから日本は主体性を回復し対米自立すべきだという意見。これに対して、冷戦時に米国は西側の橋頭堡(きょうとうほ)を守っただけで、日本を守ったわけではない。むしろ米国に見捨てられる可能性があり、米国との関係をもっと強化すべきだという議論が出てきた」

 安倍氏は後者の考えを引き継いだ。新安保法制など一連の同盟強化・一体化策がそれを物語る。

「だからと言って彼が主体性を捨てていたわけではない。例えば、第2次政権ができて1年後の2013年12月26日の靖国参拝だ。当時のオバマ米政権に強烈に批判された。僕はその時、菅官房長官、安倍首相を問い詰めた。菅氏は『政権就任直後に行くと言ったのは止めたが、官房長官として2度止めるわけにはいかなかった』と釈明、安倍氏は『日本会議以下自らの応援団を丸1年待たせた。これ以上遅らせるわけにはいかなかった』と言った。僕は苦言を呈した。『安倍政権を続けたいと思うなら靖国には二度と行かず、戦後レジームからの脱却という言葉も使うな。戦後の東京裁判体制を否定する歴史修正主義者と見られる恐れがある』と。彼は『わかりました』と」

 その一線は守っている。

「ただ、彼はそこで彼なりの右寄りの主体性を放棄したことになる。『戦後レジームからの脱却』とは米国主導で作られてきた戦後体制と距離を置き、日本としての自主性を回復しようということだからだ」

 主体性発揮もリベラル、左寄りからのものと、保守的、右寄りのものがあるのではないか。例えば、17年7月に国連で採択された核兵器禁止条約に唯一の被爆国として賛成する、という立場の表明は前者になる。

「まさに、核に対する態度が外交・安保政策において究極の主体性が問われる問題だ。対米従属の本質的な動機は突き詰めると、米国の核の傘に守ってもらう戦略から出てくる。主体性を持つために、傘から抜け出る選択肢も取り置く。その場合に自ら核武装して抑止力を持つ道と、核抜きで平和と安全を維持する非核化の道に分かれる。石原慎太郎氏らは核武装論だが、非核化の道は永田町での議論は薄い。非核化で自立するという覚悟が持てない」

「02年のことだ。イラク戦争が始まる少し前にイラクに行った。フセインにインタビューできるという触れ込みだったが、フセイン側近から『田原さんの行動はすべてCIAにマークされており、インタビューを受けた途端に爆撃される』として、ラマダン副大統領を代理で出してきた。ラマダンのその時の発言を今でも思い出す。『米国は我々が大量破壊兵器を持っているから攻撃すると言っているが、残念ながら我々はまだ核兵器開発に至っていない。米国はそれをよく知っている。だから米国は攻撃するだろう。持っていたら攻撃できないからだ』。まさにそうなった」

「なぜ北朝鮮が必死になって核保有に走ったか。この経験があったからだ。確かに、米国は核を保有する北には攻撃せず首脳会談を行った。恐らくトランプは大統領選の前には北と再び首脳会談をセット、外交成果を得ようとするだろう。ただ、それは朝鮮半島の非核化ではなく、核基地の一つを潰す程度の妥協に終わるだろう。同じ主体性といっても非核化の道はそれほど難しいということだ」

日米地位協定改定こそが重要課題
主体性も重要だが、日本に核保有という選択肢は?

「僕は絶対に反対。ただその判断を皆逃げている」

 核の傘云々(うんぬん)以前に主体性を回復するテーマがある。

「安倍氏に昨年来何度も言っているのだが、米国の占領政策の延長ともいえる日米地位協定を改定することだ。できもしない改憲より優先すべき課題だ」

「国土面積の0・6%の沖縄に7割の在日米軍基地がある。沖縄県民の反発も当たり前だ。そこにまた辺野古新基地を造ろうという。これは、政府と沖縄が話し合う問題ではない。安倍さん、あなたがトランプと話し合うべきだ、と。米国はオバマ大統領の時から世界の警察官をやめた、という。やめたのなら沖縄の海兵隊もいらないではないか。米海兵隊が沖縄に駐留するのは居心地がいいからであって、そのためにも地位協定を改定すべきではないか、と。これは石破茂にも岸田文雄にもできない。あなたは集団的自衛権の行使を一部容認、米国に恩を売った。改定はあなたの義務だ、と声を大にして説得した」

それに対して安倍氏は?

「僕が説得するたびに安倍氏本人は、やりますと答えている。だけど実際にはできない。昨年暮れに外務省幹部が僕に『地位協定改定は米国がどうしてもOKしないんです』と言ってきた。やはりね、と思った。地位協定がある限りは米国は自分の望むところに基地を造れる。改定したら普天間はそれこそグアムかハワイに行くしかなくなる」

「日米同盟の運用は、秋にトランプが再選された場合もっと難しくなるだろう。米中間で本格的な覇権争いが始まるからだ。その時に日本は両者の間でどういう立ち位置を取るのか。主体性を発揮できるのか。従米を続けるだけなのか。その一歩として地位協定改定は極めて重い課題になる」

 その昔「主体性論争」というのがあった。マルクス主義の歴史決定論的なドグマを、人間が本来的に持つ主体性で活性化させようという論戦だった、と記憶する。日米同盟における主体性論もまた従米ドグマからの解放を目指す大きな歴史的論争にできないものか。

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たはら・そういちろう
1934年、滋賀県生まれ。ジャーナリスト。タブーに踏み込む数々の取材を敢行し、テレビジャーナリズムの新たな領域を切り開いてきた

くらしげ・あつろう
1953年、東京都生まれ。78年東京大教育学部卒、毎日新聞入社、水戸、青森支局、整理、政治、経済部。2004年政治部長、11年論説委員長、13年専門編集委員

 
  ちと難しい議論と読めない言葉も幾つかでてきたが、これだけのことを紙面に載せて、かつ総理大臣に諫言(いさめること)されるって凄すぎです。倉重篤郎さん、田原総一朗さん誠に有難うございました。85歳の田原さんのエネルギーの源泉はどこから出てくるんだろう?といつも感心しております。 

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