勉強会でアベノミクスを批判する村上誠一郎衆院議員=東京都千代田区で2019年10月25日、奥村隆撮影
自民党は死んではいなかった!村上誠一郎さんは以前日曜日の早朝番組「時事放談」によく出演していて、しっかり聞いていたものだ。番組が終了して氏の存在すら忘れていたところだったが、こうやって頑張っておられることは嬉しいね。国会から野党の追及がなくなったら、国会の存在価値すらなくなるが、このように自民党の元閣僚が、あたり前のことを発言してくれたら、まだまだ日本の民主主義も死んでいないと思いたくなる。
村上さんは単なる宣伝マンじゃーないですよ。「財政は債務残高が増え続けて消費税率が40%になりかねない。」だけでもしっかり受け止めておくべきでしょう。
特集ワイド :「反安倍」集め「地下活動」!? 自民党内「ひとり良識派」 村上誠一郎衆院議員
毎日新聞 2019年11月5日 東京夕刊
憲政史上最長記録となる通算在任日数の更新が迫る安倍晋三内閣で、閣僚の不祥事や失言が相次いでいる。7年近い「安倍1強」の自民党内にあって、「ひとり良識派」を自任するあの人は何をしているのだろう。村上誠一郎・元行政改革担当相(67)。フランス革命のごとく市民たちと地下のカフェで政治談義を始めていた。果たして「革命はカフェから始まる」のだろうか。【奥村隆】
イエスマンばかり重用され…/「村上水軍の決起」促す声も
菅原一秀 ・前経済産業相が有権者買収疑惑で辞任した。萩生田光一 文部科学相が新たな大学入試に関して、不公平な条件や貧富の格差を容認するような「身の丈」発言をしたことが問題視され、英語民間試験の実施延期に追い込まれた。「ポスト安倍」といわれる河野太郎 防衛相は今世紀最悪の犠牲者を出した今秋の台風を巡る「私は雨男」発言で大ひんしゅくを買い、河井克行 法相は7月の参院選で初当選した妻の案里氏陣営の、公職選挙法違反が疑われる報道で辞任に至った。内閣再改造からわずか1カ月半、安倍政権の緩みはもはや度しがたい。
「お友達でポストをたらい回しして、パフォーマンスで生き延びる人物を登用するから、こんなことになるんだ」
村上氏を直撃すると、あきれ顔でこう語った。衆院当選11回、小泉純一郎内閣で行革担当相。安倍自民が2012年に政権奪還に成功した後は、一貫して安倍政権と距離を置いてきたのが村上氏である。「駄目な政治家が少しくらいいても、党首が正しければ政党政治は何とかなる。だけど、党首が間違っているんだから、どうしようもないじゃないか」
自民党の常設の最高意思決定機関である総務会に、村上氏は席を確保し続けている。メンバーは25人。15年に安全保障関連法案が提出された際、「憲法を改正せずに解釈の変更で集団的自衛権を行使できるようにするのはおかしい」と反対したことがある。全会一致で政策を決定するのが党総務会の慣例。村上氏は結局、総務会で反対意見を述べた後、採決前に退席したことで、形式上は「全会一致」となったのだった。
あの時、報道機関のインタビューで涙ながらに持論を語った姿は、今も語り草だ。
東京・神田駿河台のビル地下にあるブックカフェ「エスパス・ビブリオ」。数十人の市民を前に、村上氏とゲストが政治を語る。4月から始めた「政治カフェ」のトークショーのことだ。初回の対談相手は東京新聞の望月衣塑子 記者。テーマは「そろそろ、新しい政治を始めよう!」だった。
その後も安倍政権に批判的な人物が続々登壇した。作家の落合恵子さん 、TBSキャスターの金平茂紀さん 、元経産官僚の古賀茂明さん 、 元文部科学次官の前川喜平さん 。対談で安倍政治の問題点を整理し、日本の針路を考えてきた。いずれのゲストも「村上さんとなら、ぜひ話したい」とはせ参じた。
10月25日の回をのぞいてみた。ゲストはエコノミストの浜矩子 ・同志社大教授。アベノミクスを全否定する「アホノミクス」の命名者だ。村上氏がこう訴えた。「わが国は3大危機に直面している。政治はポピュリズム(大衆迎合主義)と官邸の独裁。 財政は債務残高が増え続けて消費税率が40%になりかねない。 金融緩和は限界で、外資の日本売りは円安による物価高で国民生活を脅かす恐れがある。そろそろアベノミクスの間違いを認めるべきです」
対する浜教授は、さじを投げたような口調で答えた。「アベノミクスは検討に値しません。21世紀版大日本帝国を構築しようとする下心政治が、ひたすら自己増殖する『主義なき資本』と結びついて悪さをしている」。こう痛罵した上で村上氏を挑発してみせた。「村上水軍 が邪悪な連中を懲らしめるしかないでしょう」
村上氏の一族は戦国時代に瀬戸内海を支配していた海賊「村上水軍」 の末裔(まつえい)とされる。危機に直面する日本を立て直すために決起せよ、とけしかけられたのだ。村上氏はすかさず「民主主義は一人一人が育てるものですから」と答え、拍手に包まれた。
それにしても、村上氏の考えは安倍首相の政策とことごとく対立している。13年に特定秘密保護法に反対。集団的自衛権を巡る憲法解釈変更と安保法制にも反対。現在は「憲法改正は戦争ができるようにするためにやるものじゃない」として現政権による改憲に反対している。官僚にそんたくさせる政治手法も批判する。
「官邸が官僚の人事権を握って何でも言うことを聞かせていますが、第二次大戦後の米国で吹き荒れたマッカーシーの『赤狩り』を思い起こします。まさか21世紀の日本がこんなふうになるとは夢にも思わなかった」。1950年代の反共運動を例に引くのは、要は異論を許さない空気への拒絶反応ということだろう。官僚だけではない。自民党の政治家もイエスマンが大部分を占めるようになった。
「衆院に小選挙区比例代表並立制が導入され、政策を考えずに党の方針に従っていれば当選できると思う連中が増えた。反対意見を言えなくなって議員の質も落ちた」。次回は、野党共闘の要である「市民連合」の中心人物、政治学者の山口二郎 ・法政大教授を呼ぶ予定だ。「党内野党」の面目躍如たる人選である。
実は村上氏、自民党内で孤立しているわけでもない。6月の政治資金パーティーでは石破茂 元幹事長や山東昭子 参院議長がスピーチしたし、2年前のパーティーでは二階俊博 幹事長や岸田文雄 政調会長らも激励のあいさつをしている。
野党とのパイプも知られている。岡田克也 ・元民主党代表は義弟(妹の夫)。野党会派に所属する中村喜四郎 ・元建設相とも懇意だ。ひょっとすると、離党して野党勢力に合流することもあり得る? 「初当選から11回連続で当選させてもらい、今残っている同期で自民党から一度も出ていないのは私だけです。私こそ自民党なんですよ」。当選同期の石破氏ら離党・復党組と違い、われこそミスター自民党という自負があるらしい。
あるいは野党側にウイングを広げて「もっと多様な民意に応えられる、懐の深い自民党」を作り上げようとしているのか。そこで村上氏に疑問をぶつけてみた。言いたいことを言えるのは、選挙に強いからではないですか、と。答えはこうだ。「カニやメロンを配っても、そんなものは本当は票にならない。私は支援者の集会に行ったら2人しかいないこともあった。それでもきっちりと政策を語り続け、党内で常に筋を通してきた。だから今があるのです」
話しているうちに100キロ超の巨体が身じろぎしなくなり、声のトーンが少し高くなった。「選挙のため、ポストのため、と信念を貫かない政治家が増え、お友達ばかりが大臣や党幹部になる。そんな政権が長く続いたら日本はどうなりますか」。脱原発を語らなくなった先の河野氏、初入閣した小泉進次郎 環境相、あるいは一部の女性政治家が念頭にあるようだ。
そして村上氏は「これだけは言いたい」と前置きし、ひっそりと漏らした。「自分より能力の低い人物が要職に就く、そのつらさが分かりますか」。おそらく本音だろう。
自民党は死んではいなかった!村上誠一郎さんは以前日曜日の早朝番組「時事放談」によく出演していて、しっかり聞いていたものだ。番組が終了して氏の存在すら忘れていたところだったが、こうやって頑張っておられることは嬉しいね。国会から野党の追及がなくなったら、国会の存在価値すらなくなるが、このように自民党の元閣僚が、あたり前のことを発言してくれたら、まだまだ日本の民主主義も死んでいないと思いたくなる。
村上さんは単なる宣伝マンじゃーないですよ。「財政は債務残高が増え続けて消費税率が40%になりかねない。」だけでもしっかり受け止めておくべきでしょう。
特集ワイド :「反安倍」集め「地下活動」!? 自民党内「ひとり良識派」 村上誠一郎衆院議員
毎日新聞 2019年11月5日 東京夕刊
憲政史上最長記録となる通算在任日数の更新が迫る安倍晋三内閣で、閣僚の不祥事や失言が相次いでいる。7年近い「安倍1強」の自民党内にあって、「ひとり良識派」を自任するあの人は何をしているのだろう。村上誠一郎・元行政改革担当相(67)。フランス革命のごとく市民たちと地下のカフェで政治談義を始めていた。果たして「革命はカフェから始まる」のだろうか。【奥村隆】
イエスマンばかり重用され…/「村上水軍の決起」促す声も
菅原一秀 ・前経済産業相が有権者買収疑惑で辞任した。萩生田光一 文部科学相が新たな大学入試に関して、不公平な条件や貧富の格差を容認するような「身の丈」発言をしたことが問題視され、英語民間試験の実施延期に追い込まれた。「ポスト安倍」といわれる河野太郎 防衛相は今世紀最悪の犠牲者を出した今秋の台風を巡る「私は雨男」発言で大ひんしゅくを買い、河井克行 法相は7月の参院選で初当選した妻の案里氏陣営の、公職選挙法違反が疑われる報道で辞任に至った。内閣再改造からわずか1カ月半、安倍政権の緩みはもはや度しがたい。
「お友達でポストをたらい回しして、パフォーマンスで生き延びる人物を登用するから、こんなことになるんだ」
村上氏を直撃すると、あきれ顔でこう語った。衆院当選11回、小泉純一郎内閣で行革担当相。安倍自民が2012年に政権奪還に成功した後は、一貫して安倍政権と距離を置いてきたのが村上氏である。「駄目な政治家が少しくらいいても、党首が正しければ政党政治は何とかなる。だけど、党首が間違っているんだから、どうしようもないじゃないか」
自民党の常設の最高意思決定機関である総務会に、村上氏は席を確保し続けている。メンバーは25人。15年に安全保障関連法案が提出された際、「憲法を改正せずに解釈の変更で集団的自衛権を行使できるようにするのはおかしい」と反対したことがある。全会一致で政策を決定するのが党総務会の慣例。村上氏は結局、総務会で反対意見を述べた後、採決前に退席したことで、形式上は「全会一致」となったのだった。
あの時、報道機関のインタビューで涙ながらに持論を語った姿は、今も語り草だ。
東京・神田駿河台のビル地下にあるブックカフェ「エスパス・ビブリオ」。数十人の市民を前に、村上氏とゲストが政治を語る。4月から始めた「政治カフェ」のトークショーのことだ。初回の対談相手は東京新聞の望月衣塑子 記者。テーマは「そろそろ、新しい政治を始めよう!」だった。
その後も安倍政権に批判的な人物が続々登壇した。作家の落合恵子さん 、TBSキャスターの金平茂紀さん 、元経産官僚の古賀茂明さん 、 元文部科学次官の前川喜平さん 。対談で安倍政治の問題点を整理し、日本の針路を考えてきた。いずれのゲストも「村上さんとなら、ぜひ話したい」とはせ参じた。
10月25日の回をのぞいてみた。ゲストはエコノミストの浜矩子 ・同志社大教授。アベノミクスを全否定する「アホノミクス」の命名者だ。村上氏がこう訴えた。「わが国は3大危機に直面している。政治はポピュリズム(大衆迎合主義)と官邸の独裁。 財政は債務残高が増え続けて消費税率が40%になりかねない。 金融緩和は限界で、外資の日本売りは円安による物価高で国民生活を脅かす恐れがある。そろそろアベノミクスの間違いを認めるべきです」
対する浜教授は、さじを投げたような口調で答えた。「アベノミクスは検討に値しません。21世紀版大日本帝国を構築しようとする下心政治が、ひたすら自己増殖する『主義なき資本』と結びついて悪さをしている」。こう痛罵した上で村上氏を挑発してみせた。「村上水軍 が邪悪な連中を懲らしめるしかないでしょう」
村上氏の一族は戦国時代に瀬戸内海を支配していた海賊「村上水軍」 の末裔(まつえい)とされる。危機に直面する日本を立て直すために決起せよ、とけしかけられたのだ。村上氏はすかさず「民主主義は一人一人が育てるものですから」と答え、拍手に包まれた。
それにしても、村上氏の考えは安倍首相の政策とことごとく対立している。13年に特定秘密保護法に反対。集団的自衛権を巡る憲法解釈変更と安保法制にも反対。現在は「憲法改正は戦争ができるようにするためにやるものじゃない」として現政権による改憲に反対している。官僚にそんたくさせる政治手法も批判する。
「官邸が官僚の人事権を握って何でも言うことを聞かせていますが、第二次大戦後の米国で吹き荒れたマッカーシーの『赤狩り』を思い起こします。まさか21世紀の日本がこんなふうになるとは夢にも思わなかった」。1950年代の反共運動を例に引くのは、要は異論を許さない空気への拒絶反応ということだろう。官僚だけではない。自民党の政治家もイエスマンが大部分を占めるようになった。
「衆院に小選挙区比例代表並立制が導入され、政策を考えずに党の方針に従っていれば当選できると思う連中が増えた。反対意見を言えなくなって議員の質も落ちた」。次回は、野党共闘の要である「市民連合」の中心人物、政治学者の山口二郎 ・法政大教授を呼ぶ予定だ。「党内野党」の面目躍如たる人選である。
実は村上氏、自民党内で孤立しているわけでもない。6月の政治資金パーティーでは石破茂 元幹事長や山東昭子 参院議長がスピーチしたし、2年前のパーティーでは二階俊博 幹事長や岸田文雄 政調会長らも激励のあいさつをしている。
野党とのパイプも知られている。岡田克也 ・元民主党代表は義弟(妹の夫)。野党会派に所属する中村喜四郎 ・元建設相とも懇意だ。ひょっとすると、離党して野党勢力に合流することもあり得る? 「初当選から11回連続で当選させてもらい、今残っている同期で自民党から一度も出ていないのは私だけです。私こそ自民党なんですよ」。当選同期の石破氏ら離党・復党組と違い、われこそミスター自民党という自負があるらしい。
あるいは野党側にウイングを広げて「もっと多様な民意に応えられる、懐の深い自民党」を作り上げようとしているのか。そこで村上氏に疑問をぶつけてみた。言いたいことを言えるのは、選挙に強いからではないですか、と。答えはこうだ。「カニやメロンを配っても、そんなものは本当は票にならない。私は支援者の集会に行ったら2人しかいないこともあった。それでもきっちりと政策を語り続け、党内で常に筋を通してきた。だから今があるのです」
話しているうちに100キロ超の巨体が身じろぎしなくなり、声のトーンが少し高くなった。「選挙のため、ポストのため、と信念を貫かない政治家が増え、お友達ばかりが大臣や党幹部になる。そんな政権が長く続いたら日本はどうなりますか」。脱原発を語らなくなった先の河野氏、初入閣した小泉進次郎 環境相、あるいは一部の女性政治家が念頭にあるようだ。
そして村上氏は「これだけは言いたい」と前置きし、ひっそりと漏らした。「自分より能力の低い人物が要職に就く、そのつらさが分かりますか」。おそらく本音だろう。