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春秋 / その滋味に驚くのがいまの時期のタケノコである / 日本経済新聞

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 グルメ漫画「美味しんぼ」 
   
   

春秋 日本経済新聞 2017/4/23付
 何気なく口にして、その香り、その歯触り、その滋味に驚くのがいまの時期のタケノコである。新鮮そうなやつを米のとぎ汁でことこと茹(ゆ)でてアクを抜き、穂先を薄く切って食べるのがまずはご馳走(ちそう)だ。あとは若竹煮、炊き込みご飯、そうだ、バター焼きなんぞもいい。

▼山の生気が満ちたこの幸を、中国・三国時代孟宗(もうそう)という人は真冬に掘り出したと伝えられている。ある寒い日のこと、病気の母がどうしてもタケノコを食べたいとせがむ。雪山に入った息子が途方に暮れていると、天は親孝行に感心して一本、二本と芽を出してくれたというのだ。それで孟宗竹なる言葉ができたらしい。

▼この物語は孝行の手本になる話を集めた「二十四孝」にも入っているから、季節はずれのタケノコがいかに貴重だったかがわかる。孟宗がこれを熱いスープにして母親に飲ませると病はすっかり癒えたそうだ。儒教道徳を絵に描いたような顛末(てんまつ)だが、タケノコは実際に食物繊維やビタミン類を豊富に含んだ栄養食だという。

▼うんちくを並べたついでに、お話をもうひとつ。グルメ漫画「美味しんぼ」には、まだ地中にあるタケノコの周囲を掘って火を起こし、そのまま蒸し焼きにする料理が出てくる。食欲のために山まで焼くとは、こちらはずいぶん不道徳な振る舞いだ。とはいえうまそうだなと想像しつつ、茹でタケノコの皮でもむくとする。

 
 夜中に美味しそうなお話を読んでタケノコが食べたくなった。小父さんはまだ口に入っていない(笑)。「美味しんぼ」のタケノコ山の蒸し焼きというのも初耳だ!こちらも「味」「香り」「食感」「音」などなど絶品だろうけど街の店屋で出てくる献立にはないだろう。食べることが出来るとしたら山の中の民宿かな?(笑)  

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