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女の気持ち 春風と膝小僧 福岡市城南区・野末陽子(81歳)/ 毎日新聞

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写真は ACO DESIGNから       
 
  野末さん、先ずは「ダメージジーンズ」とい名を教えて下さって有難うございます。私はもうすぐ70歳のおっさんですが、あまり若い人の居るところに行く機会が少ないのでそんなジーンズは物珍しいものです。今日の今までビンテージ物と呼ぶのだろうと思っていました。

 よくテレビでも人気者のスターが身につけていますよね。テレビはいざ知らず街で通りすがりに見かけると「ありゃ!」なんて思ってしまいます。私が西鉄電車の野末さんの席に座っていたら、私もまじまじと見ていたかも知れません(笑)。何だか不思議ですよね。ちなみに、私の実家も福岡市城南区です。有難うございました。 
   

女の気持ち 春風と膝小僧 福岡市城南区・野末陽子(81歳)

 毎日新聞2017年4月1日 西部朝刊
 良いお天気の土曜の午後。案内をもらっていた講演を聞きに行こうと思い立った。

 薄手のコートで出掛けようとしたけれど外は意外に風が冷たく、引き返して厚手のものに着替えた。ついでに毛糸のマフラーも巻いた。

 春めいてにぎわっている街を通り抜けて、久しぶりに西鉄電車に乗ることにした。時間に余裕があったので発車間際の鈍行にした。車内はすいていた。ゆっくりと腰を下ろして辺りを見回すと乗客の服装はすっかり春らしい人、まだ冬のままの人とまちまちだ。

 あら! すぐ前の席のジーパンをはいた若い女性の膝小僧が丸見えだ。寒そう! いや、あれはテレビで時折見掛けるダメージジーンズというファッションなのだろう。彼女はイヤホンを付けてスマホに夢中の様子なのでまじまじと見てしまう。

 ダウンジャケットに中ヒールの靴、上等そうなショルダーバッグ。茶髪の美しい女性である。両膝の破れ具合は左膝が丸く、右は膝上まで蛇腹に透けて見え、白い繊維が垂れ下がっていたりする。

 この破れ具合が芸術的なのか。ひょっとしたら有名人の一品なのかも。それにしても寒くないのかしら。そんなことを考えながら見とれていたら、電車が止まり、立ち上がった膝小僧は目前をさっと通り過ぎてホームへ。一陣の春風だった。

 まるで不思議で珍しい物に出会ったような面白さを楽しんで多分、老人が多いであろう文化講演会場に向かった。

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