ありゃありゃ「尾張名古屋は城で持つ」、2,302,696人を擁するこの大都市名古屋が、そんなに人気がなかったとは知らなかったな~。小父さんは何度か登った日本アルプスの乗り換えでちょっと寄ったくらいしか縁がないし、会社で知った名古屋人二人は気のいいい優しい男だった。
この記事を読んでいると名古屋も関西に似て、排他的でゴーイング・マイウエイみたいな意識が強いのかな?確かに河村たかし市長は昔から名古屋弁口調ばかりで話すね。
いやー、広いニッポンにはそれぞれの特徴やスタイルを変えない街がたくさんあるんだということを再認識した。小父さんは国内のほとんどの町が東京志向だとばかり思っていた。そんな思いは小父さんだけなのかも知れないね!?
毎日新聞 2016年10月24日 東京夕刊
「危機感持っておもしれえ街つくらにゃあ」と、市長自ら号令をかけている市がある。経済力では3大都市の一角を占める名古屋。国内主要8都市の魅力度を比較した自前の調査で最下位だったことにショックを受け、汚名返上に乗り出した。なぜか不人気の「孤高の名古屋」。本当に行きたくない街なのか--。実力を探った。【鈴木梢】
「あんだけダントツで行きたくない街になるとは、さすがにショックですよ。でも、名古屋に住んどるけど、やっぱりそういうことじゃにゃーのかな」
現実を受け入れ、自嘲気味に笑うのは、名古屋城近くの市役所市長室でインタビューに応じた 河村たかし市長。市長室の入り口には、戦国3英傑の肖像画が飾られている。織田信長、豊臣秀吉、徳川家康。いずれも名古屋ゆかりの天下人だ。「3人の立派な顔を見ても、名古屋はさむりゃーですわ。侍文化は質素、倹約。かつての都があった京都は天皇がござった貴族文化、やっぱり日本のナンバーワンですよ」。意外にも、3大都市に挙げられる東京と大阪への劣等感は感じさせない。一方で、真価が世に浸透していないのも事実だ。
話題となっている調査は名古屋市が今年6月、主要8都市に住む男女に各都市の魅力や印象を聞いた「都市ブランド・イメージ調査」。グラフの通り、「訪問する意向」を指数化した比較では、ブービー賞の大阪を引き離し、大差でワースト。「最も魅力を感じる都市」を一つ選ぶ質問では3%にしか選んでもらえなかった。逆に「最も魅力が乏しい都市」と答えた人は30・1%でトップ。数字上では、「行きたくない街ナンバーワン」になった。
名古屋のどこがだめなんでしょう。市長に水を向けると、歌を口ずさみ始めた。
♪あなたを待てば~雨が降る~。ご存じ、フランク永井さんの代表曲「有楽町で逢いましょう」。横浜には「よこはま・たそがれ」、大阪には「月の法善寺横町」と、市長は次々にご当地ソングを挙げ、「隣の岐阜だって『柳ケ瀬ブルース』があるでしょう。名古屋にはあらへんがね」と嘆く。魅力と情緒を兼ね備えた街には名曲が欠かせない。だが、戦後の復興事業で焼け野原に見事な道路が整備された名古屋は「道は真っすぐ、太陽はさんさん。どやどやっとした人情ある路地を全部ぶっ壊したから、面白みがなく見える」と淡々と分析した。
「東京はいばってますけど、日本で一番金をもうけているのは名古屋であり、愛知県ですよ。名古屋は大上納都市ですわ、大半は大トヨタ自動車のお陰ですけど。今、日本中を支えとる」と力説。勢い増して「独立して名古屋国ができる」と豪語した。
「豊かだからPR下手」
その経済力はどれほどなのか。名古屋港の昨年の貿易黒字は約6兆円で、18年連続で日本一を独走中。製造品出荷額(2014年)の全国シェアは名古屋圏が19・5%。東京圏の17・1%や大阪圏の12・5%を上回る。確かに「モノづくり立国・日本」を支えている。名目の県内総生産(13年度)は約35兆円で東京都、大阪府に次ぐ3位。名古屋市は県内総生産の3割を担い、豊かであるのは間違いない。なぜ、魅力的に見られないのか。
著書「蕎麦ときしめん」で知られる名古屋市出身の清水義範さんは、名古屋人気質に一因があるとみる。「日本一経済が安定していて優越感がある。東京は意識せずに別物だという感覚で、自分たちに自信を持っている。よそ者には排他的かもしれませんね」
三菱UFJリサーチ&コンサルティング名古屋本部の林田充弘さんは、名古屋のプライドがPR不足を招いていると指摘し、その理由をこう分析する。「名古屋には東京は相手にしない、大阪には負けていないという意識がある。暮らしにゆとりがあるからあまり自己表現しないし、危機感がない」
「なごやめし」が突破口
起死回生が期待できそうなキラーコンテンツがある。東京でも昨今ブームが起きている、ご当地フード「なごやめし」だ。今年8月に台湾ラーメンで知られる「味仙」が神田に進出。先立つ4月、あんかけスパゲティの元祖「ヨコイ」も六本木に愛知県外初の店舗を構え、話題となった。
なごやめしが本格的に県外に飛び出したのは、00年代に入ってから。手羽先「世界の山ちゃん」やみそカツ「矢場とん」が東京に進出し、05年の愛知万博を機に脚光を浴びた。今年は「第2次ブームの到来」とされる。
名古屋発祥の台湾ラーメンは、ニンニクと唐辛子による激辛味がクセになる。あんかけスパは、直径2・2ミリの太麺にこしょうが利いた濃厚ソースが絡む。素材を生かしたあっさり味の正反対。独創的な濃い味付けが特徴だが、これも名古屋文化なのか。
「名古屋人は連帯して社会を作り、外の人を交えない。地域で完結しているから味の個性が凝縮されたのでしょう」。清水さんはガラパゴス的発展の産物と語る。
一方、林田さんは独特の味には産業の街ならではの精神が息づいていると話し、「モノづくりで培った創意工夫の魂」がつくり出したとみる。その代表例として挙げるのは「小倉トースト」。名古屋発の喫茶チェーン「コメダ」の人気メニューでもある。
コメダは03年に関東第1号を横浜に出店し、今や42都道府県に約700店を展開する。「パンとあんこをそれぞれ楽しめばいいのに一緒にする。でも、食べてみればおいしい。名古屋は東京と大阪に挟まれ、何でも融合するハイブリッド文化なんです」
ガラパゴス的発展? ハイブリッド文化? 東京・六本木で、あんかけスパを食べてみた。ソースのとろみが、麺と具を包み込み、和洋中なんとも分類できない不思議な味わい。ソースは肉や野菜を1週間かけて煮込んでいるという。「あんかけスパは一段とうみゃーですよ。本物を追求する姿勢はトヨタの車と同じですわ」。インタビューでは唐突に思えた河村市長の言葉が、ようやく腑(ふ)に落ちた。
ヨコイ3代目、横井慎也副社長が目指すのは「ポストとんこつラーメンです」。福岡名物とんこつラーメンは今や国民食として定着し、海外では代表的な日本ラーメンと認知されている。横井さんの野望は、20年の東京五輪を意識し海外に広がる。東京の出店先に六本木を選んだのも外国人が多く集まる街だからだ。
決して「世界のトヨタ」だけではない。グローバル戦略こそが名古屋の強み。世界都市を目指すなら、国内評価は気にせずに孤高の存在のままでいいのかもしれない。
河村市長はこう言っていた。名古屋のライバルとは--。「モノづくりがあるドイツのベルリン。パリでもニューヨークでもいい。日本じゃなく世界。そりゃ、どえりゃーことですよ」