こんな人確かにいますね。マラソンで言うなら42.195kmを走り終えた人でしょうか!オリンピックの金メダリストでもよく「何もしたくない、ゆっくり休みたい」という選手いますよね。
いやー、男から仕事を取られたら何も残らない気がしますね。私はたまたま退職後の仕事を見つけて1ヶ月で入院したのでその後の自分の時間も変わった気もしますけどゴールイン(=リタイア)したら虚脱感が残るでしょうね。
家内がよく言ってましたが、「亭主が家にずっと居るようになったら、それに慣れるのに2年間かかる」と。岡田マチ子さんもストレスがたまられたのではないでしょうか?(笑)
私はたまたま病気が治ってからはいろいろやることが見つかったり、人との出逢いもあって、こうしてブログに書きつけています。
ご主人、美術館長をめざさしはじめられて(笑)本当によかったですね!私は退職後9年になろうとしています。貴重なコラム有難うございました。
毎日新聞 2016年6月3日 大阪朝刊
こんな男ではなかった。こんなに覇気のない、だらだらした、ごろごろする男ではなかった。
3年前からつい最近までの、定年後の夫のことである。
これといった趣味を持たぬ仕事人間のなれの果てか。心の片隅でそう思った。夜明け前、何度も九州へ出張していた男だった。休日は友人と野球、ゴルフ、魚釣りに興じていた男だった。やる気満々、元気はつらつ、体験を自信につなげる男だった。
それが一転、歌を忘れたカナリアのように、定年後の夫は急に活気をなくした。バッティングセンター、ボウリング、ゴルフの打ちっぱなし。それらを勧めても一過性の興味で終わる。「夫在宅症候群」を扱ったテレビ番組にも無反応。困った、打つ手はないか。
思いついたのが名画のジグソーパズル。これが夫の感性に逆らわなかった。「人が夢中になっている姿って美しいね」。そんなお世辞をまともに受けて夫が照れる。フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」、山下清の「長岡の花火」を仕上げ、2作とも額に入れてリビングの壁に飾ってある。部屋のグレードが上がり、まるでわが家はちょっとした美術館。悦に入っている夫と2人で夕食時に眺めている。
目下、夫は3作目となるルノワールの「ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会」、1000ピースに挑戦中。大柄な男が、小さなピースを手に、時に「やった」と叫びながら一喜一憂している。その姿に、内心思わざるを得ない。やれやれ、しめしめと。