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広岡さん、巨人をしかる 野球賭博/清原被告の覚醒剤/円陣「声出し」で金銭 / 毎日新聞

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 前にもちょっと書いたことがあるが、現場の指揮官・原辰徳前監督の責任もあるよね。マスコミでそのようは批判を見たことはないけど。
 
 落合博満、野村克也、星野仙一みたいな怖ーい三監督の元ではそんなことをする余裕はなかっただろうと小父さんは思う。組織の長は怖くなくては務まらないだろう。広岡達郎さんの著した『意識革命のすすめ』(講談社、1983年)って昔読んだね。そこには氏が監督としての偉業を達成した後に、とても純粋な「素朴な野球バカ」的ものが書かれていて驚いたことがある。  

  
 広岡さん、巨人をしかる 野球賭博/清原被告の覚醒剤/円陣「声出し」で金銭 
 毎日新聞 2016年4月11日 東京夕刊
 これではファンの夢を裏切ったと批判されて当然だ。野球賭博に関わっていた選手4人が失格処分を受けた巨人をはじめ、複数の球団で勝敗を巡る現金授受、賭けゴルフ、賭けマージャン−−と不祥事が続出した。この体たらくに、巨人OBで名将と言われた広岡達朗さん(84)は「プロとは何かを知れ」と、愛する古巣と球界をしかる。【小林祥晃】
 
 
 不祥事続きの古巣や野球界をしかるプロ野球・巨人OBの広岡達朗さん=写真家・南浦護さん撮影(幻冬舎提供)

 首脳陣に責任「プロとは何か」球界は考え直せ 本当の野球大国には「指導者学校」が絶対必要 「賭博に関わった本人たちの認識の甘さは論外ですが、本当に責められるべき人物は賭けなんてしている暇を作った監督やコーチら首脳陣ですよ。プロとしての自覚をきちんと教え込んでいれば、そんな遊びをしている暇はないはず。首脳陣は責任をどこまで感じているのか」。広岡さんはさぞ元選手に激怒していると思いきや、怒りの矛先は指導者に向いていた。

 巨人の野球賭博問題では、笠原将生(25)、福田聡志(32)、松本竜也(22)の3人の元選手が無期、高木京介元選手(26)が1年間の、それぞれ失格処分となった。「自分のプレーで金を稼ぐのがプロのはずだ」と彼らを当然批判する。一方、「指導者の責任」を重視するのはなぜなのだろう。

 まず、「野球界は昔も今も金と欲がうずまく世界であることに変わりはない。勝つためには手段を選ばないアンフェアな体質もありました」と切り出した。

 自身も実感した。西武の監督時代、コーチから「ベンチに盗聴器が仕掛けられていた」と報告を受けたことがあったという。

 このような体質に加え、野球界では高校や大学を卒業したばかりの若者が、数千万円から1億円程度の契約を交わすことは珍しくない。だからこそ、指導者には、選手が不正に巻き込まれるのを防ぐ役割がある、と説く。

 「プロ野球選手はみんな素朴な野球バカなんです。だから監督、コーチは若者を親から預かっているということを絶対に忘れてはいけない。野球の技術だけでなく、社会人としての常識も身に着けさせる必要がある。一人一人のプレーを注視するのは当然ですが、普段の行動にも不自然な点はないか目を配る。何かあれば選手と話し合って不正の芽を断つ。それができないようでは、指導者として恥ずかしい」

 この話から「管理野球」という言葉を思い浮かべる人も多いだろう。監督時代は、基本に忠実なプレーを選手に求めただけではなく、日常生活や食事面も徹底的に指導したことからこう呼ばれていた。ただ、広岡さんは全く意に介さず、「若手だけではなく、選手全員に目を向けるべきだ」とも主張する。「選手は1年の半分は遠征やキャンプで自宅に帰らず、指導者らと寝食を共にする。長い時間を共有するのであれば社会人としての教育をするのは当然のこと。巨人には、その基本的なことができていなかったのではないか」

 元巨人選手の清原和博被告(48)が覚せい剤取締法違反容疑で逮捕、起訴されたことも球界に衝撃を与えた。「清原だって、西武や巨人で『プロとは何か』をきちんと教える指導者と出会っていれば、こんなことにはならなかったはずですよ」。広岡さんは大きなため息をつくのだ。

 試合前の円陣での「声出し」を中心とした勝敗に絡む金銭授受問題も発覚した。巨人の調査によると、試合に勝てば、声出しをした選手が、円陣に加わった他の選手から1人5000円ずつ受け取り、負ければ逆に1人当たり1000円ずつ支払っていた。阪神、西武、ソフトバンク、楽天、広島、ロッテでも同様の問題が確認された。

 「僕らの感覚では考えられんわ」と、あきれた口調でこう続ける。

 「僕が現役の頃は、活躍すると『監督賞』として数千円の賞金が出ることはあった。これが楽しみでね。でも、選手が仲良く金を出し合うなんて考えられませんよ。選手同士は互いにライバル。はっきり言えば『敵』なんです」

 巨人のスター遊撃手として活躍した1950年代。ドラフト制度はなく、各球団は独自に選手を確保していた。常に激しいポジション争いを強いられた身には、今の選手は甘すぎると映る。

 「自分が故障すれば別の選手のチャンスになる。だから球が体に当たっても、痛がるそぶりなんか見せられませんでした。それなのに、今は試合前にみんなで仲良く現金が絡んだ験担ぎとはね」

 一番の問題と思うのは、プロとしての自覚の欠如だ。

 「ファンがなぜ球場に足を運んでくれるのか。選手や指導者、球団はそのことをもう一度考えた方がいい。選手が普通の人にはできないプレーを見せる。それが子どもたちの憧れや夢となり、球場に行こうという気持ちになるんですよ。それが分かっていれば、野球賭博や金銭授受、ましてや覚醒剤に手を出すなんて、できるはずがありません」

 相次ぐ不祥事は、プロ野球人気にダメージを与えていないのだろうか。「これからも醜態をさらし続けていたら、本当に野球を理解しているファンは離れていきます。今、夢を壊している張本人は現役選手かもしれません」。広岡さんは危機感をにじませる。

 球界の正常化に向けて、広岡さんには一つの提言がある。自身の現役引退後、指導者や球団幹部として、米国の大リーグでの研修や視察を積み重ね、たどりついた結論だ。

 「大リーグでは、傘下のマイナーリーグで若手を鍛えてチームを強くした指導者が、やがて名門チームを率いるようになる。しかし日本にはそういうシステムがありません。巨人では高橋由伸というスター選手を引退後すぐに監督に据えました。本当なら指導者としてもっと勉強を積んでもらう必要があったはずなのに……」

 プロ野球界に60年以上かかわった広岡さんは、監督やコーチが学ぶ環境の構築こそ球界を変えると信じている。「プロ野球のコミッショナーには『指導者学校』のような機関を作ってほしい。野球の本場、米国を追い越し、本当の野球大国を目指すには絶対に必要なことです」と力説する。ヤクルトを初のリーグ優勝と日本一、西武を2年連続の日本一に導いた名監督はとことん「教育」にこだわる。

 球界への直言をためらわないのは、現役時代に巨人の初代オーナー、正力松太郎さんから受けた指導を忘れずにいるからでもある。「『巨人軍は紳士たれ』と教え込まれました。今でもその影響が大きいね」

 紳士たれ−−。巨人だけに向けられた言葉ではあるまい。プロ野球関係者は、この言葉に改めて向き合うべきではないか。


 ■人物略歴

ひろおか・たつろう

 1932年、広島県呉市生まれ。早稲田大卒業後、54年に巨人に入団。その年に新人王。66年に退団。ヤクルト、西武で監督を務め、92年に野球殿堂入り。3月に「巨人への遺言」(幻冬舎)を出版。

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