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女の気持ち:兄との旅行 「お告げ通りにはできなかったが」神戸市・匿名希望(会社員・29歳) / 毎日新聞

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 三島由紀夫の小説「潮騒」の舞台になった伊良湖水道の安全を見守っている灯台         
  占い好きのお母さんと仕事で悩んでそうな兄と妹さんの日常、なんだか羨ましく読ませていただきました。ひよりさんreeさん、お宅にもこんな日がすぐに訪れるかも知れませんよ!?投稿された匿名さん、ほのぼのとしたエピソード有難うございました。 


  

女の気持ち:兄との旅行 神戸市・匿名希望(会社員・29歳)

毎日新聞 2015年10月29日 大阪朝刊

 連休に兄と一泊で鳥羽の灯台を見に行った。世渡り下手で実家にもあまり連絡をしない兄を両親はいつも心配している。娘と息子は違うのか、両親の兄への接し方も年を追うごとに手探り状態だ。

 そんな折、前回の兄の帰省で仕事が行き詰まっていると聞くやいなや、占い好きの母は「東南の位置にある灯台の光を見なさい」という、よく分からないものの、割と具体的な助言をいただいてきた。そこで、妹である私だ。兄と灯台に行って、最近の生活や仕事の様子を聞いてきてとお使いを頼まれた。元々きょうだい間でも全然話をしないのに。母よ、妹だからとそんなこと頼まないで。いい年なんだから放っておけばいいのに、文句を言いつつも了承した。

 29歳の私と32歳の兄の初めての2人旅行。道中質問してみると、実家にいる時よりいろいろ仕事のことを教えてくれた。お互いの仕事の話や恋愛の話、これからのこと。あれっ? もっと話しにくいかなって思っていたけれど、そんなこともないな。最近は話すことも減ったけど、兄は昔一緒に遊んだ頃と変わらないお兄ちゃんだった。

 灯台は、地図がなくて道に迷い、住宅の壁にぶつかりそうになるくらいの細い道をひたすら走り怖い思いをしたが、その日は光を発していないという悲しい結果に終わった。結局お告げ通りにはできなかったが、いつの間にか勝手に作られた兄との間の壁のようなものが少しはがれ、兄の顔が見られた気がして、割と悪くない旅行だった。

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