余録:貸家の張り紙が子どものいたずらで…
毎日新聞 2015年05月27日 00時22分(最終更新 05月27日 00時23分)
貸家の張り紙が子どものいたずらではがされる。何度張ってもはがされたり、破られたりする。しばらくして大家もさすがに腹を立て、今度は厚い木の板に「貸家」と書いてくぎで打ちつけた。「やれやれ、これで4、5年はもつだろう」
▲よく落語のまくらにもなる江戸小咄(こばなし)である。戸口に少し斜めに張られる貸家札は借金取りの撃退、はやり病よけのまじないにも用いられたとか(武藤禎夫(むとう・さだお)編「江戸小咄辞典」)。ところが4、5年どころか何十年も放置されるのも珍しくない現代の空き家事情である
▲全国で800万戸を超える空き家だが、うち300万戸以上は賃貸などの対象とされずに放置されている。また先ごろの国土交通省の調査では空き家の所有者の4分の1以上がほとんど管理をしていないと答えている。小咄の大家が聞いたら目をむきそうな話である
▲放置されて危険な空き家の所有者に対し、市町村が撤去や修繕などを命令できる「空き家対策特別措置法」が全面施行された。倒壊の恐れがある、不衛生で有害、景観を損なう−−などの「特定空き家」に立ち入り調査を行い、命令のほか勧告、指導ができるという
▲空き家が放置されるのは、住宅の建つ土地の固定資産税が6分の1に減免される特例があるためといわれる。自治体から勧告などを受けた特定空き家は税の軽減も受けられなくなった。今後は所有者が空き家の適切な管理や、土地の再活用に応じざるをえなくなろう
▲空き家の活用や街並みの保全にも知恵をこらさねばならない人口減少社会である。貸家札にいたずらをする子どもが街にあふれていた昔がうらやましい。
いやはや、小父さんの住んでいる地域でも空家がどんどん増えていってる。また解体しての更地(さらち)や駐車場への転用などなど今の日本そのものの姿だよね。