女の気持ち:女の勲章 京都市伏見区・山口佳永子(主婦・51歳)
毎日新聞 2015年03月30日 大阪朝刊
入らない! 何とかしたら入れられるかもしれないというレベルではない。指にはめてみようとした瞬間にすぐにわかった。
約20年前に作った婚約指輪も結婚指輪も、どちらも入らない。とてもショックだったが、こんな小さなサイズでよく入っていたな?と不思議なくらいだ。
普段、私は全く指輪をつけない。つけると、何となく違和感があり指が気になって仕方がない。慣れると、感じなくなるのかもしれない。でも、そこまでしてつけようと、若い頃からも思わなかった。
だから、今まで指輪をつけたのは、パーティーや結婚披露宴に招かれた時など、ちょっとおしゃれをしようと思った時だけだった。結婚前後は、そのような会もあったが、この十数年その機会は全く無くなっていた。久々に結婚披露宴に招待され、指輪をつけてみようと思ったのだった。
今回の披露宴にはもう間に合わないが、サイズ直しをしてもらおうと、デパートの宝石リフォーム売り場に持ち込んでみた。サイズを測ってもらうと、何と7サイズもアップしなければならないことがわかった。しかも、デザイン上、直すのは難しいと言われ断念した。店員さんが「女性の皆さんはほとんどの方が、結婚後の家事や育児で、重いものを持ったりと指を酷使されます。だから、どうしてもふしが太くなってしまいます」と慰めてくださった。入らなくなった指輪を眺めながら、女の勲章と思うことにした。
そう言えば家のかみさんも、指輪したとこ見たことないですね~(笑)。買い物ではよその誰もがびっくりするような荷物を両手に提げて帰ってくるし、きっともう入らないのだろうね。
よく映画やテレビドラマでは縁を切る時に指輪を外すシーンがあるけど我が家はそんな手間が要りません(笑)。山口佳永子さん、忘れていたことを思い出させていただいて有難うございました。