余録:永井荷風は下り坂志向の文人だった−−。作家の嵐山光三郎さんが…
毎日新聞 2014年09月15日 00時36分(最終更新 09月15日 00時37分)
永井荷風(ながい・かふう)は下り坂志向の文人だった−−。作家の嵐山光三郎(あらしやま・こうざぶろう)さん(72)が、この夏文庫になった「『下り坂』繁盛記(はんじょうき)」でこんな荷風論を記している
▲荷風は名家に生まれ、30歳そこそこで慶応大教授になりながら早々に退任。戦後文化勲章を受章したが、名声が上がるほど独居生活に潜(もぐ)りこみ、79歳で吐血死(とけつし)するまで毎日のように東京・浅草のストリップ劇場に通い続けた。確かに「下る」ほど本が売れ繁盛した人だった
▲嵐山さんが書く通り、年をとると「まだまだこれから」とか「若い者には負けない」とかの気になりがちだ。だが嵐山さんは、その発想自体が老化現象だといい、脱上昇志向をすすめる
▲上り坂は苦しいだけで周囲も見えないが、下りは気分爽快。55歳で松尾芭蕉(まつお・ばしょう)の「奥の細道」の行程を自転車で走破した嵐山さんは、その時「つぎは下り坂だ」と励ましながら坂を上っている自分に気づいたという。で、出した結論が「人の一生は、下り坂をどう楽しむか、にかかっている」
▲「不良中年」「無頼派(ぶらいは)」で鳴らす一方、大病も経験した人ならではの境地。この本には過激発言も多いが、東京の神田川や隅田川を船でめぐったり、廃線になった全国のローカル線跡をたどったり、友と句会を開いたりと無理せず楽しめる熟年向けレジャーも満載だ
▲今日は敬老の日。最近は人生の終わりに備え粛々と準備する「終活」ブームだが、時流から取り残されるのも素晴らしいことと嵐山さんはいう。無論荷風のように下ると繁盛する人は少なかろう。ならばどうするか。嵐山さんによれば繁盛している人とタッグを組むのが極意だそうだ。
嵐山光三郎さんのことは、BS11で放送していた壇ふみさんと阿川佐和子さんが隔週で司会をする 「第?ニッポン国・独立宣言」という番組のゲストで知った。いやー、今の小父さんにとても素敵な警鐘を与えてくれそうな本だ。 『下り坂』繁盛記は読まなきゃー!嵐山さん、小父さんより遊んでそうだし、酒もうんと飲んでそうだし良いこと言うね〜。
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「不良おばさんは偉い」 嵐山光三郎
「不良定年」:嵐山光三郎 から抜粋
記事/人生は夕方から楽しくなる:スーパーポンコツ老人、嵐山光三郎さん
また、ちょっとの間、嵐山光三郎先輩の後追いの真似ごとでもしてみるか〜!