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記者の目:世界遺産・富士山と入山料=野崎勲(デジタルメディア局)/毎日jp

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ヘッドランプの光を頼りに、富士山に登る登山者=富士山吉田口8合目で2013年6月30日午後8時52分、手塚耕一郎撮影(約1分間露光)    

  

記者の目:世界遺産・富士山と入山料=野崎勲(デジタルメディア局)

毎日新聞 2014年04月25日 東京朝刊
◇知恵と余裕で自然に戻れ
昨年、世界文化遺産に登録された富士山(3776メートル)。山梨、静岡両県は今年の夏山シーズンから、5合目以上の登山者を対象に任意だが「富士山保全協力金」という名の入山料を徴収する。1人1000円。トイレや救護所の新設改修など、5合目以上での事業の財源だと聞く。しかし、これ以上何かを造る必要があるのだろうか? 自然遺産で推薦されなかったのは、ごみやし尿問題に加え、「自然」と呼ぶにはあまりにも人工物が多く痛々しかったからだ。

 富士山に登って、最も美しいと感じた季節は、冬。平均30度以上の斜度の氷雪。ほとんどの人工物は雪の下だ。

 7、8月の夏山シーズンは一転、30万人が行列する。「山に残すのは足跡だけ」との理想は不可能で、誰もが用を足すし、山小屋で売る記念品や食事、燃料はブルドーザーで荷揚げされる。そのためのブル道がある。一番人気の山梨県側・吉田口登山道ツアーの実態を紙上で紹介する。


◇ツアー客で混雑、頂上トイレも列
東京を午前発ツアーのバスは、午後3時に5合目の富士スバルライン終点に着く。広場はいろいろなツアー客で混雑し、その状態のまま行列となって落石防止の巨大な石垣の下をつづら折りに進む。

 午後9〜10時に8合目あたりの山小屋に着く。まずはトイレ。微生物でし尿を分解する方式で、かつて垂れ流しするしかなかった状態は改善され、悪臭もかなり減った。しかし、ここでも列は続く。

 夕食はカレー。ツアー名で呼び出され食べ終わると、すぐ次と交代。午後11時過ぎ寝袋にもぐりこむ。1人当たりのスペースは体の幅ほどしかなく、寝返りも難しい。

 午前2時に起き、おにぎりを受け取り出発。振り返れば「富士山名物」ヘッドランプの明かりの行列が見える。明るくなるころ、鳥居をくぐり石段を登りつめれば頂上。頂上のトイレも行列。山頂の火口を一周するお鉢めぐりを行って、3776メートルの最高点、剣ケ峰で記念撮影だ。

 下山は速く、3〜4時間で6合目指導センターに着くが、この間トイレがあるのは7合目だけ。そこより上にもトイレの新設案がある。5合目の広場に着いたら食堂で昼食をとり、バスに乗車。うたた寝しているうち都内に戻る。ツアー代金は出発日により、1万5000〜3万円。

◇目指すべき方向、施設増ではない
ユネスコの諮問機関イコモス(国際記念物遺跡会議)は2016年2月までに、保全状況の報告を求めている。イコモスはオーバーユースを指摘しているのだと思う。観光地としての利便より、いかに自然に戻すのかが課題なのだ。想像してほしい。トイレの行列を半分に縮めるには、今の倍のトイレが必要だ。それが目指す方向のはずがない。ところが、山梨県にはWi−Fi整備計画まであるという。

 吉田口登山道で山小屋の宿泊定員は1日3300人、実際は最大1万人が登る。山梨県富士吉田市の堀内茂市長は「世界遺産になるような山は、世界のどこでも山小屋の宿泊人数に合った人数しか登らせていない」と、登山者数は15万人が適正と発言している。

 だが、1000円の入山料では、オーバーユースが解決しないのは明らかだ。栗山浩一・京都大教授の試算では、登山者数を今の半数に抑えるには1人2万円程度にしないと効果がないという。

 施設を造ることが避けられないのであれば、1994年リレハンメル冬季五輪の知恵に学びたい。町の景観を壊さないために、山腹をくりぬいて一部の施設を造った。富士山でも一部施設を地下にすることはできるはずだ。

 登山者自身がし尿を持ち帰る方法もある。かつて私が南極最高峰のビンソンマッシーフに登った折、し尿はビニール袋にため、チリに持ち帰った。気温の高い日本で使える「トイレパック」が開発されれば、富士山で処理されるし尿の量を物理的に減らせるだろう。他の山にも広がり、ビジネスになるかもしれない。

 根本的に問われているのは、山という自然との付き合い方だと思う。山小屋を使わない「0泊2日弾丸登山」が危険だと指摘されるが、仮眠数時間のツアーも大差ない。入山者数制限は、関係者の同意を得るのは難しいかもしれない。しかし、自然遺産になれず文化遺産になった今こそ立ち止まって、これまでの道を見直してみるべきだ。

 例えば、もう1泊し、コーヒーを飲みながら夕焼けから夜景に変わるさまを眺めたり、初めて会う人と登山談議ができたりするような余裕ができないか。富士山に必要なのは入山料などのカネではなく、知恵なのだ。

  

 富士山のこと聞くほどに、見るほどに登りたくなくなる!3年ほど前、山の友と富士山行きの話をしていたが、ある時富士登山のドキュメンタリーDVDが送られてきて早速観てみると病人、怪我人も多いし、頂上で自分の作った歌を唄うんだとギターを担いでいる若者や外国人観光客もわんさかいた。高い山に登る装備をしていないものがたくさんいる。

 このコラム読んで人の多さから、中国をイメージした。高山であることを真面目に考えていない連中はきっと万里の長城に行く中国人観光客の気分ではないかと想像する。小父さんは登ったこともなければ万里の長城も知らないのだが・・・。夏の御殿場や、ゴールデンウイークの山中で長期キャンプをしたことはあるが、それは感動的で美しいものだ。どうも富士山は眺める山で登るものではない気がする。

 北アルプスに行くとそれはそれはチリ一つ落ちていない山を愛する人たちばかりがたくさん登っているよ。富士山はしばらく登山禁止にしてお金かけて大掃除してはどうだろう(笑)。そうでもしないとこの悪循環はなくなりそうにない。正月の初詣じゃあるまいし、数珠つなぎ登山は東京・渋谷のスクランブル交差点みたいな気がする(笑)。入山者は登山口で持ち物検査して不要物は没収、合格者だけ登山OKとか!(笑)。

 明日の小父さんは、チリ一つ落ちていない神戸の六甲山系を、山を愛する小学生、学生、社会人、ご高齢の皆さんに混じってトレッキングだ。我々は二人組み!

        

    

写真はSankeiPhotoに載った記事をこのブログの2013年07月07日にアップした写真記事/にぎわう富士山「世界遺産効果」 山開き後、初の週末の中からの一枚。

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