東京五輪の選手村が建設される晴海ふ頭=東京都中央区で本社ヘリから
クローズアップ2014:あえぐ建設現場 人不足、五輪整備に影響 業界縮小、若手育たず
毎日新聞 2014年01月28日 東京朝刊
建設業界で人手不足が深刻化している。2000年代以降の公共事業削減に伴い建設会社や働き手の数が大幅に減る一方、東日本大震災の復興需要、アベノミクス「第二の矢」である大規模な財政出動、東京五輪・パラリンピックのインフラ整備などの建設需要が急に高まったためだ。自治体が発注する工事では施工業者が決まらない入札不調も相次いでおり、人手不足が続けば、復興事業が遅れるほか、20年の五輪開催に向けた都心の整備にも影響が出かねない。【三沢耕平、手塚さや香、深津誠】
◇人不足、五輪整備に影響
「まさかの結果に驚いた」。東京都の中央卸売市場築地市場(中央区)を移設する豊洲新市場(江東区)の工事関係者に衝撃が走ったのは昨年11月。市場内の4棟の工事のうち、青果棟など3棟の入札で業者が決まらない「不調」になった。「人件費や資材高騰で、価格(発注側の予定価格と業者が採算確保に必要な実勢価格)に大きな開きがあった」と都の担当者。2月の再入札は、予定価格を約630億円から1035億円に6割以上引き上げる。
豊洲新市場全体イメージ
都内では昨年以降、五輪近代五種の一つ(フェンシング)の会場になる予定の「武蔵野の森総合スポーツ施設」(調布市)など、大型工事で入札不調が続出。影響は生活に身近な施設にも広がり、全国で最も待機児童が多い世田谷区では、保育所3カ所の工事が1回目の入札で決まらず、4月の開園を夏に延期した。保坂展人区長は記者会見で「五輪決定で(入札不調に)拍車がかかった」と語った。
復興需要で一足早く人手不足が表面化した東日本大震災の被災地では、より深刻な影響が出ている。岩手県の昨年11月の有効求人倍率は1・08倍と、震災後最高を更新。「建設・採掘」業に限れば2・92倍にも達した。「コンノ建設」(大船渡市)の金野(こんの)文夫社長は「バブル崩壊後、公共事業が激減し若手が育っていなかった。震災前に引退した60〜70代に戻ってもらい、現場を回している企業も多い」と明かす。五輪開催決定後の11月には、県発注工事の入札123件のうち43件が成立せず、その割合は震災後最高の35%になった。
被災地以外でも、大阪府の昨年11月の有効求人倍率は事務職の0・32倍に対し、建設・採掘は3・49倍。昨年4〜12月の府発注工事の入札の不調は前年同期の約4倍の58件(全体の4・4%)に達した。
全国の建設業界の有効求人倍率(昨年11月)は、建設作業員が2・99倍、技能労働者が4・00倍。国土交通省が1万社以上を対象に実施している需給調査では、型枠工や鉄筋工の不足率が3〜5%台の高水準で推移している。熟練が必要な技能労働者は「カネを積めば集まる職種ではない」(都内の現場監督)ためだ。
昨年12月には老朽化した公共施設の耐震性強化などを図る「国土強靱(きょうじん)化基本法」が成立。自治体は防災・減災の取り組みを急いでおり、総務省によると、解体・撤去を検討中の公共施設は全国で1万2251件に上る。また、みずほ銀行の試算では、20年の五輪開催に向けては東京・晴海の選手村などの建設のほか、首都高速道路の老朽化対策をはじめとしたインフラ整備で数兆円レベルの建設需要が生まれる可能性がある。
老朽化の進む首都高 1号羽田線
さらに、政府内には「消費増税後の景気動向次第では今年後半に補正予算が必要」(国交省幹部)と、景気テコ入れを目的とした追加の公共工事を求める声もある。しかし、第一生命経済研究所の永浜利広主席エコノミストは「復興加速や老朽インフラ整備が迫られる中、五輪に向けた環境整備まで物理的に手が回るのか」と危惧する。
◇業界縮小、若手育たず
深刻な人手不足の背景には、バブル崩壊後に常態化した建設不況と、小泉政権以降、民主党政権まで続いた公共事業削減の流れの中、建設業界が縮小の一途をたどってきたことがある。1997年に685万人いた就業者は12年には503万人に減少。帝国データバンクによると、建設会社も07年度以降、12年度まで6年連続で毎年1万社以上が廃業などで姿を消してきた。このため、急に需要が増えても、仕事の受け皿がない状態だ。
人手不足解消に向けては、人件費引き上げの必要性も指摘される。厚生労働省によると、建設業労働者の年間賃金(12年)は平均391万円と、全産業(同529万円)に比べて26%も低い。足元では人手不足で人件費が上昇しているというが、現場では「今までが安過ぎた」(都内の型枠工)と不満が強く、2月には賃上げを求める集会が都内で開かれる予定だ。アベノミクスによる経済対策執行の遅れも懸念する国交省は公共工事の費用を見積もる際の目安(労務単価)を引き上げるなどの対策に乗り出したが、引き上げには限界があるほか、人手を集めるには賃金以外の労務環境改善が不可欠との見方も強い。
こりゃー駄目だ!建設現場がいくら機械化が進んだとしても、現場に職人さんがいなければ建物は建設現場は成り立たない。この間北京オリンピック会場の建設の遅れを笑っていたけど、今度は日本の建設の遅れが世界に報道される番だ。ましてや「東日本大震災の復興」は置き去り、「オリンピックが終わってから」なんてことになるのじゃないのかな?建設労働者だって賃金が高いところに集まって行くわね。
誰が考えたか企業の法人税を下げて景気を刺激するのもひとつのアイデアかも知れないが、肉体労働に従事して年間所得が391万円にしかならなかったら特に若者は建設現場から離れて行くに決まっている。国交省よ政府自民党よ労務賃金単価を見直しなさい!企業に給料上げろという前に職人さんの所得を上げて建設現場に若手の作業員を呼び戻さなくては!外国人に頼ろうとしても手元(補助業務)しか期待できないんじゃーないかな。職長(作業リーダー)は無理だろう。
でないとオリンピックも震災復興も公共建築物の耐震補強も中央卸売市場築地市場の移設も待機児童が多い保育所建設もみ〜んな出来ませんぜ!オリンピックもアベノミクスも失敗に終わりそう
建設業界では年金や医療などの社会保険に加入していない企業も多いのが実態で、元請けの8割、1次下請けの5割以上の労働者が未加入だ。国交省が人手不足対策を話し合うため今月発足させた「建設産業活性化会議」委員の蟹沢宏剛(ひろたけ)・芝浦工業大教授は「社会保険にきちんと加入している企業ほどコスト増で受注競争が不利になっている」と問題視する。
さらに、就業者の高齢化も懸念材料。29歳以下の割合は11・1%(全産業16・6%)なのに対し、55歳以上は33・6%(同28・7%)と、他産業を上回るペースで高齢化が進んでいる。
東京五輪に向けたインフラ整備は建設業界にとって本来、「特需」のはずだが、人件費や資材価格高騰が収益を圧迫するリスクもある。東京商工リサーチの調査では、建設業の15%近くが五輪開催が自社の業績に「悪影響」すると懸念する。
◇外国人活用にも課題
人手不足対策の切り札として浮上したのが外国人労働者の活用。政府は24日の閣僚会議で五輪に向けた建設ラッシュを見据え、外国人労働者の技能実習制度拡充を検討する方針を確認した。
実習制度は企業が外国人を「技能実習生」として受け入れる制度で93年に開始。建設業だけでなく、農業や漁業、繊維など68職種が対象で、滞在期間は最長3年間。単純労働は禁じられ、建設業界では外国人約1万5000人が配管や内装、機械操作などの技術を学んでいる。
ただ、外国人労働者拡充には慎重論も根強い。実習制度の本来の狙いは途上国の出身者らが日本で学んだ技術を母国で生かすための「人づくり」。しかし、受け入れ企業が外国人を単純労働や安価な賃金で事実上、日本人労働者の代替要員として使う例もあり、厚労省によると、賃金や安全・衛生関係不備などに対する指導件数(12年)は2776件になる。
米国務省は昨年6月「日本政府は技能実習制度における(外国人の)強制労働の存在を認知していない」と人権上の問題点を指摘している。政府が建設業への外国人活用を進めるなら労働環境改善が不可欠だ。
クローズアップ2014:あえぐ建設現場 人不足、五輪整備に影響 業界縮小、若手育たず
毎日新聞 2014年01月28日 東京朝刊
建設業界で人手不足が深刻化している。2000年代以降の公共事業削減に伴い建設会社や働き手の数が大幅に減る一方、東日本大震災の復興需要、アベノミクス「第二の矢」である大規模な財政出動、東京五輪・パラリンピックのインフラ整備などの建設需要が急に高まったためだ。自治体が発注する工事では施工業者が決まらない入札不調も相次いでおり、人手不足が続けば、復興事業が遅れるほか、20年の五輪開催に向けた都心の整備にも影響が出かねない。【三沢耕平、手塚さや香、深津誠】
◇人不足、五輪整備に影響
「まさかの結果に驚いた」。東京都の中央卸売市場築地市場(中央区)を移設する豊洲新市場(江東区)の工事関係者に衝撃が走ったのは昨年11月。市場内の4棟の工事のうち、青果棟など3棟の入札で業者が決まらない「不調」になった。「人件費や資材高騰で、価格(発注側の予定価格と業者が採算確保に必要な実勢価格)に大きな開きがあった」と都の担当者。2月の再入札は、予定価格を約630億円から1035億円に6割以上引き上げる。
豊洲新市場全体イメージ
都内では昨年以降、五輪近代五種の一つ(フェンシング)の会場になる予定の「武蔵野の森総合スポーツ施設」(調布市)など、大型工事で入札不調が続出。影響は生活に身近な施設にも広がり、全国で最も待機児童が多い世田谷区では、保育所3カ所の工事が1回目の入札で決まらず、4月の開園を夏に延期した。保坂展人区長は記者会見で「五輪決定で(入札不調に)拍車がかかった」と語った。
復興需要で一足早く人手不足が表面化した東日本大震災の被災地では、より深刻な影響が出ている。岩手県の昨年11月の有効求人倍率は1・08倍と、震災後最高を更新。「建設・採掘」業に限れば2・92倍にも達した。「コンノ建設」(大船渡市)の金野(こんの)文夫社長は「バブル崩壊後、公共事業が激減し若手が育っていなかった。震災前に引退した60〜70代に戻ってもらい、現場を回している企業も多い」と明かす。五輪開催決定後の11月には、県発注工事の入札123件のうち43件が成立せず、その割合は震災後最高の35%になった。
被災地以外でも、大阪府の昨年11月の有効求人倍率は事務職の0・32倍に対し、建設・採掘は3・49倍。昨年4〜12月の府発注工事の入札の不調は前年同期の約4倍の58件(全体の4・4%)に達した。
全国の建設業界の有効求人倍率(昨年11月)は、建設作業員が2・99倍、技能労働者が4・00倍。国土交通省が1万社以上を対象に実施している需給調査では、型枠工や鉄筋工の不足率が3〜5%台の高水準で推移している。熟練が必要な技能労働者は「カネを積めば集まる職種ではない」(都内の現場監督)ためだ。
昨年12月には老朽化した公共施設の耐震性強化などを図る「国土強靱(きょうじん)化基本法」が成立。自治体は防災・減災の取り組みを急いでおり、総務省によると、解体・撤去を検討中の公共施設は全国で1万2251件に上る。また、みずほ銀行の試算では、20年の五輪開催に向けては東京・晴海の選手村などの建設のほか、首都高速道路の老朽化対策をはじめとしたインフラ整備で数兆円レベルの建設需要が生まれる可能性がある。
老朽化の進む首都高 1号羽田線
さらに、政府内には「消費増税後の景気動向次第では今年後半に補正予算が必要」(国交省幹部)と、景気テコ入れを目的とした追加の公共工事を求める声もある。しかし、第一生命経済研究所の永浜利広主席エコノミストは「復興加速や老朽インフラ整備が迫られる中、五輪に向けた環境整備まで物理的に手が回るのか」と危惧する。
◇業界縮小、若手育たず
深刻な人手不足の背景には、バブル崩壊後に常態化した建設不況と、小泉政権以降、民主党政権まで続いた公共事業削減の流れの中、建設業界が縮小の一途をたどってきたことがある。1997年に685万人いた就業者は12年には503万人に減少。帝国データバンクによると、建設会社も07年度以降、12年度まで6年連続で毎年1万社以上が廃業などで姿を消してきた。このため、急に需要が増えても、仕事の受け皿がない状態だ。
人手不足解消に向けては、人件費引き上げの必要性も指摘される。厚生労働省によると、建設業労働者の年間賃金(12年)は平均391万円と、全産業(同529万円)に比べて26%も低い。足元では人手不足で人件費が上昇しているというが、現場では「今までが安過ぎた」(都内の型枠工)と不満が強く、2月には賃上げを求める集会が都内で開かれる予定だ。アベノミクスによる経済対策執行の遅れも懸念する国交省は公共工事の費用を見積もる際の目安(労務単価)を引き上げるなどの対策に乗り出したが、引き上げには限界があるほか、人手を集めるには賃金以外の労務環境改善が不可欠との見方も強い。
こりゃー駄目だ!建設現場がいくら機械化が進んだとしても、現場に職人さんがいなければ建物は建設現場は成り立たない。この間北京オリンピック会場の建設の遅れを笑っていたけど、今度は日本の建設の遅れが世界に報道される番だ。ましてや「東日本大震災の復興」は置き去り、「オリンピックが終わってから」なんてことになるのじゃないのかな?建設労働者だって賃金が高いところに集まって行くわね。
誰が考えたか企業の法人税を下げて景気を刺激するのもひとつのアイデアかも知れないが、肉体労働に従事して年間所得が391万円にしかならなかったら特に若者は建設現場から離れて行くに決まっている。国交省よ政府自民党よ労務賃金単価を見直しなさい!企業に給料上げろという前に職人さんの所得を上げて建設現場に若手の作業員を呼び戻さなくては!外国人に頼ろうとしても手元(補助業務)しか期待できないんじゃーないかな。職長(作業リーダー)は無理だろう。
でないとオリンピックも震災復興も公共建築物の耐震補強も中央卸売市場築地市場の移設も待機児童が多い保育所建設もみ〜んな出来ませんぜ!オリンピックもアベノミクスも失敗に終わりそう
建設業界では年金や医療などの社会保険に加入していない企業も多いのが実態で、元請けの8割、1次下請けの5割以上の労働者が未加入だ。国交省が人手不足対策を話し合うため今月発足させた「建設産業活性化会議」委員の蟹沢宏剛(ひろたけ)・芝浦工業大教授は「社会保険にきちんと加入している企業ほどコスト増で受注競争が不利になっている」と問題視する。
さらに、就業者の高齢化も懸念材料。29歳以下の割合は11・1%(全産業16・6%)なのに対し、55歳以上は33・6%(同28・7%)と、他産業を上回るペースで高齢化が進んでいる。
東京五輪に向けたインフラ整備は建設業界にとって本来、「特需」のはずだが、人件費や資材価格高騰が収益を圧迫するリスクもある。東京商工リサーチの調査では、建設業の15%近くが五輪開催が自社の業績に「悪影響」すると懸念する。
◇外国人活用にも課題
人手不足対策の切り札として浮上したのが外国人労働者の活用。政府は24日の閣僚会議で五輪に向けた建設ラッシュを見据え、外国人労働者の技能実習制度拡充を検討する方針を確認した。
実習制度は企業が外国人を「技能実習生」として受け入れる制度で93年に開始。建設業だけでなく、農業や漁業、繊維など68職種が対象で、滞在期間は最長3年間。単純労働は禁じられ、建設業界では外国人約1万5000人が配管や内装、機械操作などの技術を学んでいる。
ただ、外国人労働者拡充には慎重論も根強い。実習制度の本来の狙いは途上国の出身者らが日本で学んだ技術を母国で生かすための「人づくり」。しかし、受け入れ企業が外国人を単純労働や安価な賃金で事実上、日本人労働者の代替要員として使う例もあり、厚労省によると、賃金や安全・衛生関係不備などに対する指導件数(12年)は2776件になる。
米国務省は昨年6月「日本政府は技能実習制度における(外国人の)強制労働の存在を認知していない」と人権上の問題点を指摘している。政府が建設業への外国人活用を進めるなら労働環境改善が不可欠だ。