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倉重篤郎のニュース最前線 / 自民党の「石橋湛山派」は決起せよ 蠢き始めた政界大再編 深層対談 佐高信×田原総一朗

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6月11日の毎日新聞政治漫画

毎日新聞 2023/6/15 05:00  有料記事

佐高「岸田は広島人でも宏池会でもない」
田原「今こそ米国に物申し、習近平に会いに行け」

 経済重視、軽軍備、アジア連携を唱え、戦後政治に独自の存在感を示した石橋湛山。その湛山研究をテーマとする議員グループが与野党を超えていまスタートし、保守リベラルの新たな結集軸になるのではと注目を集めている。政界再編の深層動向を、佐高信田原総一朗の激突対談が占う―。

公明党連立解消の現実味
立憲は連合と手を切れ

 「戦後保守」が漂流している。それは、先の大戦で完膚なきまでの敗戦を喫したことが原点にあったはずである。議会やメディアが軍部の暴走を抑え切れず、大陸や南太平洋など今では考えられない地域にまで戦線を拡大、大勢の兵士を戦闘ではなく飢餓、病気で失った。東京大空襲では一晩で約10万人が、沖縄戦では現地住民を含む18万人が死亡、広島、長崎に原爆を落とされ、本土決戦を主張する陸軍に対し天皇の聖断という形でしか戦争を止めることができなかった。

 その反省から戦後をスタートさせた。憲法9条の非戦の構えを戦後日本の新たな国の形とし、軍事を極力抑制し、国民のエネルギーを経済活動につぎ込んできた。それは「軽軍備 経済重視」路線として定着、専守防衛、防衛費の対GDP比1%枠、武器輸出禁止三原則といった自主ルールで、軍事の膨張に効果的な歯止めを講じてきた。経済繁栄と公正な配分を日本の国是とし、その路線を保守することを、戦後保守政治の王道としてきたはずである。

 それが今大きく崩れつつある。敵基地攻撃能力の保有により専守防衛は名ばかりとなった。5年で43兆円という防衛予算倍増で、1%枠はそのシンボリックな規範力を失った。防衛産業強化法が成立(6月7日)、防衛産業整備・振興に国が財政支援できるようにしたことで、兵器輸出国家への道をまた一歩進めた。経済政策もまた失敗した。GDPは頭打ちのまま、富の格差が深刻化している。

 私見では、この覇道への転落は、安倍晋三政権で始まった。集団的自衛権行使容認を軸とした歯止めなき日米一体化・軍事抑止力至上主義の追求、そして、出口なき異次元金融緩和政策(アベノミクス)の長期化という外交・安保、経済・財政における二つの基幹政策がこれをもたらした。岸田政権はこの安倍路線を踏襲(保守)しているに過ぎない。「宏池会」という羊の仮面をかぶっているだけたちが悪い、ともいえる。

 そんな中、戦後保守政治家の中でもリベラルの筆頭と目される石橋湛山に学ぼうとする動きが永田町に出ている。湛山の軍事より経済合理性を重視した「小日本主義」、占領軍政治にも臆することのなかった「自立精神」や「アジア主義」を身につけることによって、リベラルな「戦後保守」を再生できないか、という試みだ、と私は受け止めている。湛山の思想を研究する議員連盟(会長・篠原孝=立憲民主党・衆院議員)がこの3月に発足、与野党にまたがり、注目を集めている。

 「戦後保守」は一体どうなるのか。この稿では、こういった問題意識を抱えながら、ジャーナリストの田原総一朗氏と評論家の佐高信氏に論じていただいた。

湛山、角栄の経済・生活・アジア連携を

田原 広島サミット、どう?

佐高 核廃絶どころか軍縮にもならなかった。「広島ビジョン」は米国の核を正当化する話だ。むしろ被爆者への侮辱だ。広島で開催した意味もない。日本のおめでたさを世界に知らしめた。

田原 戦略のなさもね。

佐高 殴られた相手の肩を持つという異様さ。

田原 (原爆投下国の)米国のバイデン大統領が謝罪なしに広島に来る資格があるのかとの議論もあった。

佐高 広島入りするからには一言あるべきだった。

田原 それが全くなかった。一方、原爆死没者慰霊碑には「安らかに眠って下さい過ちは繰返しませぬから」と刻まれている。

佐高 俳人の三橋敏雄さんが「あやまちはくりかへします秋の暮」と詠んだ。

田原 米国は全く過ちだと思っていない。

佐高 広島サミットは、その米国に対し日本外交の主体性を発揮する好機だった。各国首脳の原爆資料館視察を公開し、唯一の被爆国である日本の首相がバイデン氏に一言求めるべきだったが、広島の人々が待ち望んでいたチャンスを逃した。その意味で、岸田氏は被爆者の気持ちに寄り添う真の広島人とは言えない。所詮、東京育ちのぼんぼんだ。

田原 息子の翔太郎秘書官の(公邸内での不適切行動による)更迭(6月1日付)事件もあった。

佐高 ノンフィクション作家・吉永みち子さんに言わせると「異次元の親バカ」だ。メリメという仏作家の「マテオ・ファルコーネ」という小説がある。コルシカ島を舞台に、お尋ね者をかくまっていた家族の中で、憲兵の誘惑に負けて密告した息子を父親が射殺する話だ。名作として残っている。家族の情愛より、弱者をかくまうという社会的倫理が優先される。岸田氏には理解できないだろう。

田原 日本の一番の欠陥は社会がないことだ。

佐高 公私混同と言うが、岸田氏には「公(おおやけ)」はない。「私(わたくし)」しかない。それが駄目だと気づく人生を歩んでこなかった。

田原 日本人の場合は「私」の延長に「公」がある。「私」と「公」が対立していない。空気を読むという行為が、まさに「私」の延長が「公」という構造だと。それにしても最大の「公」であるべき政治が機能していない。

佐高 私は、今の政治状況を象徴的に言うと、「中村哲さんか、岸田晋三か」の選択だと言っている。

田原 どういうこと?

佐高 中村哲さんは、日本の医療、灌漑(かんがい)技術を駆使し、アフガニスタンの荒れ地を緑に変え、人々の生活を豊かにすることで平和をつくり出そうとした人だ。あれこそが戦後の日本政治が本来なすべき仕事だ。一方で、岸田氏は安倍政権の軍拡路線を下半身としてそのまま受け継ぎ、軍事バランス維持の名の下に抑止力をひたすら強化、結果的に東アジアにさらなる緊張と対立を生み出している。我々に突きつけられているのは、この二つのどちらを選ぶかだ。

田原 かつては自民党内にも多様な考え方があった。リベラル人士も与党内野党として居場所があった。安倍政権からいなくなった。

佐高 戦後の保守政治家で言えば、石橋湛山、田中角栄両氏の歩みが本来の日本の進むべき路線だ。米国に距離を置き、軍事ではなく経済や生活の向上でアジアと連携する生き方であり、中村哲さんにつながる。外国人の人権を蹂躙(じゅうりん)する可能性がある改悪入管法が成立したが、中村さんが国外の困窮者と連帯したように、国内のマイノリティーの人権がもっと大事にされなければならない。

田原 外国人、難民の人権擁護の思いは佐高さんと同じだが、法改正には、正当に居住する外国人と、日本人が偏見なく出会うためという配慮もある。

時にはアメリカに反抗すべきだ

佐高 石橋、田中両氏ともに米国から嫌われた。

田原 田中金脈、ロッキード事件の時、皆が田中氏を悪く言う中、「アメリカの虎の尾を踏んだ田中角栄」(『中央公論』1976年7月号)という論考で、エネルギー戦略で対米自立しようとした田中氏を米国が自国の国益に反するとして叩(たた)いたのではないかとの推論を提起したことがある。

佐高 あの田原論文は先駆的だった。湛山氏は蔵相時代に経費削減問題で占領軍と対立、47年公職追放令でパージされた。湛山氏ほど戦争に反対した人はいないのに。湛山以降のリベラル保守の流れは中村哲さんに連なる。自民党内に真っ当な保守がいるなら、湛山を旗印に結集すべきだ。

田原 そこで聞きたい。日本は対米従属でやってきたが、自立すべきと思うか。

佐高 米国に対し言い分を通すためにも、時々は反抗しなければだめだ。

田原 実は今、米国に反抗するチャンスだと思っている。米国が一国では世界の平和を維持できなくなり日本にも協力を求めている。それが防衛費倍増であり敵基地攻撃能力の保有だ。協力するからには米国に言いたいことを言うべきだ。僕は先日(6月5日)岸田氏にも進言したが、まずは、日米地位協定を改定し、辺野古新基地問題などで沖縄県民の願いを実現しろと。

佐高 沖縄問題は奥が深い。外務省密約事件の被告で先日亡くなった元毎日新聞記者の西山太吉さんが私との対談で語っていた(『西山太吉 最後の告白』=集英社、2022年)。沖縄返還のキーワードは米軍による基地の「自由使用」だった。佐藤栄作首相がそれを米国からのまされた。むしろ積極的にのんだ結果が今の新基地問題の基本にある。

田原 沖縄返還は共産党まで歓迎した。僕は元共産党幹部で政治評論家の山川暁夫さんから「沖縄返還の本質は、沖縄の本土化ではなく、本土の沖縄化だ」との見立てを聞かされていた。

佐高 佐藤政権の前の池田勇人・宏池会政権では、池田氏も官房長官をしていた大平正芳氏も「自由使用」の要求には与(くみ)せず返還問題を先送りし、佐藤政権が返還を錦の御旗(みはた)にした。佐藤氏は任期内の決着を急ぎ、そのため密約だらけの交渉になったという。宏池会と佐藤派で自民党内でも路線闘争があった。今は闘う宏池会がなくなった。

田原 岸田氏は宏池会だ。

佐高 岸田宏池会は不当表示で〝景品表示法違反だ〟。大平番だった西山さんは、岸田氏に宏池会を名乗らせるなと言っていた。宏池会といえば護憲と軽武装だ。この二つが全然ない人が宏池会を名乗ってはいけない。

田原 岸田氏は敵基地攻撃能力保有も認めた。明らかに専守防衛をはみだした。

佐高 自民党内で湛山、角栄両氏の系譜を引き継いだ人たちもいた。小渕恵三氏は外相時代、対人地雷禁止条約加入に尽力、福田康夫首相はクラスター弾禁止条約制定に主導的役割を果たした。いずれも米国は後ろ向きだったが、日本がそれを押し切った。そういった非戦リベラルのかすかな伝統も今は昔だ。小選挙区制のせいだと思うが、自民党内に野党がいなくなった。また野党自身もさえない。

田原 自民党がこんなに問題をいっぱい抱えているのになぜ野党第1党・立憲の支持率が上がらない?

佐高 政策の実現性とか、お花畑と言われ、ひるむからだ。野党の仕事とは、批判し、理念を語ることだ。

田原 自民党から提案型野党になれと騙(だま)されている。

佐高 提案型をやろうとしたら、官僚集団を握る与党のほうが圧倒的に強い。

田原 岸田氏にもう一つ言ったのは、ともかく訪中し習近平氏に会いに行けと。

佐高 ともかく会いに行けばいい、と私も思う。

公明党は野党になれ、連立組み替えよ

田原 さて現下の最大の政策課題は少子化対策だ。

佐高 家や戸籍という制度問題もある。日本はフランスと異なり婚外子差別が根強い。家の子ではなくて、社会の子という考えが必要だ。これを妨げているのが旧統一教会とそれに引っ張られる自民党と維新だ。

田原 少子化の背景には非正規労働者の増加もある。全労働者の4割近い。

佐高 僕は「社富員貧」と言っている。会社がもうかり、社員は窮している。内部留保をあそこまで増やして、何ごたく並べているんだ。非正規をゼロにできないなら正規を増やしていくしかない。

田原 非正規が増えたのは1990年代だ。連合が全く反対しなかった。連合は正社員のためのもので、非正規は関係ないと。

佐高 連合もそれで自分の足元を切り崩されているのに、そこに気づかない。

田原 岸田政権へのオルタナティブ(代案)がないわけではない。それを担う政治勢力をどう作るかだ?

佐高 一つは公明党が野党になることだ。

田原 公明が自民に付いている限り、当面は政権交代が起こりようがない。

佐高 自公連立については野中広務氏が、公明党にブレーキ役を期待したのに全然ダメだったと回顧している。連立することで、自民も公明も独自色をなくし、野合というか、融合していった。後藤田正晴氏もまた、公明党という宗教政党と組むのは禁じ手だと語ったという。結果的に自民党をも腐らせていった。

田原 東京の選挙区調整で自公関係に亀裂が入った。

佐高 本気で喧嘩(けんか)したら損だとわかっている。維新がどう動くか、ではないか。

田原 維新の馬場伸幸代表に自民と組む気があるのか、と聞いたら、ないと言う。

佐高 組んでもらったほうがいい。公明党が野党になって連立の組み替えだ。

田原 維新が危ないのは、自民党より右なんだよね。

佐高 もう一つは、立憲も連合頼みをやめることだ。

田原 連合の芳野友子会長は自民党と仲がいい。

佐高 そっちに行ってください。私は自治労と日教組には連合を抜けろと言っている。組合費を払うのやめたらどうか、とね。だから連合からも嫌われている。

◇   ◇

 国会最終盤、与野党対立法案がバタバタと成立していく。難民申請中でも送還を可能にする改定入管法、軍拡の財源確保法……。会期末に内閣不信任案が出るか否か。岸田氏が解散権を行使するかどうか。その場合政権の組み替えがあるのかどうか。目先の政局は波乱含みではあるが、当欄では視点を長めに取りたい。問題は「戦後保守」をこのまま縮ませていいのか、だ。湛山精神を現代にいかに蘇(よみがえ)らせるのか、ではなかろうか。



たはら・そういちろう
 1934年、滋賀県生まれ。ジャーナリスト。タブーに踏み込む数々の取材を敢行し、テレビジャーナリズムの新たな領域を切り開いてきた。近著に『さらば総理』

さたか・まこと
 1945年、山形県生まれ。ジャーナリスト、経済評論家。著書に『逆命利君』『タレント文化人200人斬り』『西郷隆盛伝説』『佐高信の昭和史』『統一教会と改憲・自民党』など多数

くらしげ・あつろう
 1953年、東京都生まれ。78年東京大教育学部卒、毎日新聞入社、水戸、青森支局、整理、政治、経済部を経て、2004年政治部長、11年論説委員長、13年専門編集委員

 ちと長いニュース最前線だけど、どれだけの人が目にするんだろう?総理大臣の取り巻きには、関口宏のサンデーモーニングが偏った報道だと進言した人もいたようだが、この記事を目にしたら毎日新聞に圧力をかけないのかな?(笑)

 いやはや、1960年~1970年頃の学生運動を批判していた私がいつの間にか、オールド学生運動家になったみたいだね。今の私は、高齢者大学生だから!暇つぶしや遊びに近いけれど(笑)

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