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土記 / 昭和ぎらい=伊藤智永 / 毎日新聞

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プロレス・アジア選手権でキング・コング(中)に空手チョップを浴びせる力道山(右)=東京都台東区の蔵前国技館で1955(昭和30年)年11月22日

毎日新聞  2023/4/29 東京朝刊 有料記事

<do-ki>

 会話の中に「昭和っぽいね」という言い方が出てくると、相づちを打つ人たちも含めて、否定的な語感が強くなった。以前はレトロな趣味にほほえむニュアンスだったのが、うっとうしいものを迷惑がる感じ。うなずき合う目配せに、冷笑すら浮かんでいる。

 気づいたのは、元号が令和に改まった頃からだったか。以来「昭和っぽい」と言った人、同調する人にその場で各人の昭和イメージを尋ねることにしている。

 多くは30~40代。平成の世に10年以上の社会経験を積んだ世代だ。昭和世代を「いい気なもんだよ」と突き放している。複数の言い分をまとめれば、こうなる。

 高度経済成長で頑張ったんだろうけど、結局はバブルでダメにした人たち。何かにつけ夢を持て、努力だ、権力に物申せって言う。高度成長だって実は外国の戦争や貧困のおかげでもあったのに、自分たちは歴史上もまれな幸運に恵まれたという自覚が薄い。

 昭和は長すぎた。初めの20年は戦争と原爆。次の20年は復興と成長。残りの20年は欲望と狂乱。騒々しかった冒険劇の幕が下りると同時に、すべては崩壊した。

 平成は無責任なうたげの後始末を押しつけられた上に、説教と自慢を聞かされる。原発も少子高齢化も地方消滅も巨額財政赤字も全部、昭和の負債処理じゃないか。たまったもんじゃない。

 2000年代初め、昭和30、40年代が「日本が一番元気で人々も温かかった時代」としてブームになった。きっかけは東京タワー建設時の東京を舞台にした映画「ALWAYS 三丁目の夕日」(05年)のヒット。安倍晋三元首相が大好きで、第1次政権(06~07年)を前に出した著書「美しい国へ」で絶賛。第2次政権でも「取り戻すべき日本」の理想だった。

メディア文化を研究する日高勝之立命館大学教授の著書「昭和ノスタルジアとは何か」(14年)によると、無邪気に礼賛したのは東京育ちの言論人たちで、映画やNHKテレビ番組「プロジェクトX」などには、日本型システムへの批判性が読み取れるという。

 だとしても「戦後の昭和」で思い浮かぶのは、今やバブル経済だ。その後、新自由主義という自己責任論で就職氷河の谷に投げ込まれた平成世代にすれば、昭和趣味は総じて根拠なき自己肯定感に浸っている、としか見えない。

 昭和は戦争とバブルで二度まで自壊した。国を作り直せなければ、ここにはいられない。なのに昭和がいつまでも立ち塞がる。それも昭和っぽい。今日は昭和を顧み、国を思う日。(専門編集委員)

 う~~~ん、気が付かなかったな~。思い出にばかりに酔って、写真を張り付けてみたが・・・。確かに私も人に負けないくらい働いてはいたが、昭和の宿題をぼんやり眺めていた気がする。

 平成世代さんごめんなさい。少しは謙虚に生きていかなければ。専門編集委員の伊藤智永さん、有難うございました。

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