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特集ワイド お粗末な「東京五輪物語」 「ハゲタカ」作家・真山仁さんが見る大会汚職 電通の独占的ビジネス、負の遺産 / 毎日新聞

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真山仁さん=宮本明登撮影


特集ワイド お粗末な「東京五輪物語」 「ハゲタカ」作家・真山仁さんが見る大会汚職 電通の独占的ビジネス、負の遺産
毎日新聞 2022/10/27 東京夕刊 有料記事

 東京オリンピック・パラリンピックは平和の祭典であり、復興の象徴だったはず。ところが、崇高な理念の裏で目を覆いたくなるような汚職がはびこっていたのではないか。大会を巡る汚職事件は新たな逮捕に発展した。「これほどみっともない展開になった大会は、五輪史上、例がないのでは」。そう話すのは、経済小説「ハゲタカ」で知られる作家、真山仁さん(60)だ。

 東京地検特捜部は19日、大会組織委員会の高橋治之元理事(78)を受託収賄容疑で逮捕した。実に逮捕は4回目。

 「まるでお粗末な小説のような『東京五輪物語』ですよね。事件は予想したよりも、ずっとひどい経緯をたどっている。賄賂を送った方も、受け取った方も策略がなく、深みもない。ズルズルで、グダグダ。これが小説なら、賢い読者に『こんなバカバカしい話、読んでられるか』って笑われてしまいますよ」。東京都内の事務所。真山さんは、やや憤然とした口調で切り出した。

 世界を震撼(しんかん)させた東京電力福島第1原発事故は「アンダーコントロール」。そう宣言して秩序が整った環境で開催する体裁だった東京五輪は、のっけから波乱含みだった。総工費オーバーによる新国立競技場の計画白紙、エンブレムデザインのパクリ疑惑、女性蔑視発言で組織委会長の辞任。人為的な不祥事に加えて、新型コロナウイルスのまん延による大会延期、と予想外の事態が続いた。

 「ブラジル・リオデジャネイロ五輪の閉会式で、安倍晋三元首相がマリオの格好で登場して派手な予告編を見せたのに、本編がこれか……とがっかりした感じがありますよね。もちろん、これは選手ではなく外側の人たちの問題ですが」

 そして、最後の最後で今回の汚職事件だ。念のため、事件のあらましをおさらいする。捜査で浮かんだのは、高橋元理事がスポンサー契約や業者選定への口利きなどの見返りに、紳士服大手「AOKIホールディングス」や出版社「KADOKAWA」から賄賂を受け取った――という疑惑だ。立件されたのは5ルート、賄賂の総額は1億9000万円に上る。

 事件に着手したのは、東京地検特捜部。ロッキード事件、リクルート事件、ゼネコン汚職……。政治家が絡む数々の汚職事件を立件してきた。ただ今回の事件では、少なくとも政治家が裏で主導的に糸を引いているようには見えない、と真山さんは指摘する。高橋元理事が「みなし公務員」になっていなければ、贈収賄罪も成立しない。「政」でも純然たる「官」でもない犯罪。いわば「変化球」の事件でもある。

 「巨悪は眠らせない」で知られる特捜部が手がける今回の事件について、ロッキード事件をテーマにしたノンフィクション作品もある真山さんは「正すべき『悪』の優先順位が、政治家による巨悪よりも、見えそうで見えない社会に潜む悪に変わりつつあるのではないでしょうか」と話す。そして、こう続けた。「政治家もキャリア官僚もいない事件だからショボいと捉えるのは違います。そして、この事件を高橋元理事という特異なキャラクターによる事件として切り捨てることも」

 ところで東京五輪では、遺産(レガシー)なんて、しゃれた言葉が多用された。だが、真山さんが今回の事件で見るのは、悲しいかな負の遺産、スポーツビジネスの巨大化だ。「本来なら観客のチケット代だけが収益だったスポーツ業界で、大金が動くようになった。広告代理店がもうける仕組みを作ったからです。そして、日本で五輪をビジネスにしたのは、まぎれもなく電通ということです」

 五輪事業で、大手広告代理店「電通」は組織委とスポンサー集めを委託する専任代理店としての契約を締結。代理店ビジネスを一手に請け負った。同社OBの高橋元理事は、スポンサーの選定作業に絡み、コネを生かして犯行に及んだとされる。

 もちろん海外のスポーツもビジネス化し、今や業界に広告代理店はなくてはならない存在になっている。だが真山さんが指摘するのは、国内での電通の特殊なガリバー化だ。「日本ではスポーツビジネスに電通が絡む場合が多い。他の広告代理店の追随を許しません。高橋元理事は電通時代にこの分野を極め、独立後も影響力を持ち続けた。大事なのは、彼は電通の存在があるからこそ、今もカリスマ性を保っていることです。事件の背景には、日本のスポーツビジネスの体質の問題が横たわっている。高橋元理事は、突然変異の存在ではありません」

 今回の事件では電通にも家宅捜索が入った。ある電通関係者は、毎日新聞の取材に「電通という会社は、上からの指令は絶対という“上意下達”の組織。退社してもなお絶対的な存在の高橋元理事が現幹部に『スポンサーはここにしろ』と言えば、そうなるだろう」と話している。高橋元理事と電通は切っても切れない関係、というわけだ。

 真山さんが指摘するのは、スポーツビジネスの代理店業務が、電通に一極集中していることによる、おごりだ。「競争相手がいないと、社会のルールや常識を無視してでも、自分たちのやりたいようにやれてしまいます。独占は必ず腐敗を生む。広告代理店は民間企業ですから、公的なチェックもユルい。伏魔殿が多すぎるんです」

 スポーツを巡る商行為の過程に、多くのひずみが生じていて、それが高橋元理事という姿で露見した――というのが真山さんの見立てだ。「今回の事件における電通の問題は、東京電力の不祥事に近いと思います」。電力業界でガリバー的な存在だった東京電力では原発事故の発生を端緒に、さまざまな不祥事が明るみに出た。表向きは健全に見えても、独占的な企業であるがゆえに裏ではタガが外れていた構図は、今回のてんまつと重なる部分がある、と真山さんは指摘する。

 高橋元理事は「みなし公務員」になったため、特捜部もメスを入れることができた、この事件。「公人の犯罪を正すのはもちろんですが、たとえ民間企業であったとしても、独占的な企業が存在すると、どのような弊害を生むのか。それが分かる事件だったと思います」。企業を舞台に権力構造を描いてきた経済小説家は力を込めた。

 それにしても、とひとしきり話し終えた真山さんは、ため息をついた。「1990年代にバブルがはじけて、失われた30年があり、東日本大震災があった。何だか今は、人にも企業にも『なりふりかまわず生き残ればいい』という開き直りがある。正気を失った社会に見えます」

 かつてロッキード事件の捜査で主任検事を務めた吉永祐介氏は「検察の仕事は、ドブさらい」と言った。そのドブさらいの現場が、神聖な五輪だったという現実は、あまりにも悲しい。真山さんも最後に、こう締めくくった。「事件は五輪をカネで汚してしまった。国際的に見れば、ロッキード事件やリクルート事件より長く歴史に刻まれる汚職になってしまいましたね」【川名壮志】

 ■人物略歴

真山仁(まやま・じん)さん
 1962年、大阪府生まれ。同志社大卒。新聞記者やフリーライターを経て、2004年に「ハゲタカ」で小説家デビュー。東京地検特捜部の事件を追った「ロッキード」などノンフィクションも手がける。近著に「“正しい”を疑え!」(岩波ジュニア新書)

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 最近のニュースにワイドショーは旧統一協会問題にロシアのウクライナ侵略の話題ばかり。私までこの東京五輪2020の汚職事件を忘れかけていた!国際オリンピック委員会IOCですら、商業的にしかとらえていないようなものを、また北海道・札幌2030オリンピック・パラリンピック冬季競技大会を招致するんですか?もう金まみれのバカ騒ぎは止めてほしいね。

上にも書かれているように「もちろん、これは選手ではなく外側の人たちの問題ですが。」 

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