毎日新聞 2021/10/6 東京夕刊 有料記事
今度の自民党総裁選は、誰がリーダーにふさわしいのかという「キング争い」ではない。誰がリーダー選びに影響力を持つかの「キングメーカー=闇将軍」争いだ――と私はずっと言ってきた。
その意味で一番の勝者は岸田文雄新首相ではなく、安倍晋三元首相だったことは、もう説明するまでもないだろう。政治信条を同じくする高市早苗氏を推して河野太郎氏から国会議員票を奪い、当初から狙っていた通り、岸田政権の発足を主導したのだから。
加えて安倍氏らが優先していたのは「誰なら嫌か」だった点も指摘しておきたい。
安倍氏は河野氏が選ばれたら今までの安倍路線が否定されてしまうのを恐れた。ましてや河野氏が「反安倍」の急先鋒(せんぽう)、石破茂氏と組んだのは許せなかった。
ようやく財務相を退き、自民党副総裁に転じた麻生太郎氏は、自分の派閥の河野氏が首相になれば世代交代が一気に進み、自らの出番がなくなるのが嫌だった。
これに対して、前幹事長の二階俊博氏はいち早く「二階外し」に動いた岸田氏に激怒していた。そして菅義偉前首相は一か八かで一時、検討した衆院の解散に早々と反対して潰した安倍氏を恨んだ。河野氏支持を表明し、河野氏と共闘するよう石破氏に持ちかけた一人は菅氏だったという。
自民党総裁選を終えて話し合う安倍晋三前首相(右)と麻生太郎財務相=東京都港区で2021年9月29日午後3時27分、梅村直承撮影
権力闘争とは所詮こんなものだと言ってしまえばそれまでだ。だが、およそ国民とは無関係の「恨みの連鎖」が今後も続くかと考えると暗たんたる気持ちになる。
岸田氏は民主政治の危機を訴える一方、新自由主義路線を転換して新しい日本型資本主義を目指すという。強者優先のアベノミクスを見直し、広く国民への分配を重視するということだろう。その問題意識には私も共感する。
今回の人事で、安倍氏は高市氏を政調会長ではなく幹事長に起用するよう岸田氏側に求めていたと聞いた。それを拒んで甘利明氏を幹事長にしたのは、安倍氏の言いなりばかりではないことを示したと岸田氏サイドは言いたげだ。
しかし、それにしても政治とカネの問題を抱えたままの甘利氏が幹事長とは……なのだ。
甘利、高市両氏はアベノミクスを推進してきた人たちでもある。
これで本当に脱却できるのか。「聞く力」はいいけれど、一体誰の話を聞くのか。私は早くも不安になっている。(専門編集委員)
自民党のお祭りも終わったんだね!かっての自民党幹事長、自民党副総裁を歴任した川島正次郎氏(1970年、80歳没)の名言「政界一寸先は闇」をまた思い出した。まるでオセロゲームみたいに盤の上が白になったり黒になったり(笑)。そうそう、みんな勝馬に乗りに行くとも言っていたね。MLBの大谷翔平選手の放送も終わったことだし(関係なかったか? 笑)、高見の見物でもしていようか~。与良正男さん有難うございました。