2020/6/9付 日本経済新聞
「愛してる 家族のために 距離をあけ」。地下鉄の駅で「コロナ対策東京かるた」なるポスターを見かけた。「でかけない 密にならない 作らない」「のんびりと おうち時間を 楽しもう」。万事こんな具合で、つまり「新しい生活様式」の念入りな呼びかけだ。
▼いささかお節介な東京都のキャンペーンなのだが、この春以来、多くの人がこういうスタイルを意識するようにはなった。
ところが政府はこんど、ほとんど逆方向のキャンペーンを始めるらしい。旅行代金の半額を補助します、飲食などの費用も補いますという「Go To」事業である。予算額は1兆7千億円にのぼる。
▼このうち3千億円余が事務委託費に充てられることがわかり、批判が相次いで委託先の公募はいったん中止になった。とはいえ、事業そのものは進めるそうだ。8月には国内旅行が自由になる運びだから、業界の期待は大きいに違いない。しかし一転して、そんなブームがくるのかどうか。「新しい生活様式」はいずこへ。
▼緊急事態宣言下の4月末に成立した第1次補正予算に、この事業は含まれている。先のことは横に置き、どんと大盤振る舞いをしたのだろう。ちぐはぐなコロナ対応に、これまた人々を惑わす策が重なったというべきか。くだんのポスターに一句追加。「ウイルスは Go Toの隙 ねらってる」。いや、お節介でした。
お役所勤めの方がおられたらごめんなさい!「湯水のごとくお金を使う」という言葉があるが、正にこのようなことを言うんだろうね。しかも我々の子や孫の世代の借金で、「世界にも類例を見ない史上対策の規模で」と言ったか言わなかったか知らないが、個人商店、零細・中小企業に大企業ですら汗水たらして生み出した利益を税金を、金銭感覚ゼロの人たちにばらまかれたら、小父さんまで金銭感覚が無くなってくる気がしてくる。しょっぱなのの対策、「マスク2枚を全所帯に配布」のアイデアに似てはいないのかい?マスクは未だ届きませんが!