江戸職人の粋と侠 古道具が語る情と縁
大火に見舞われた江戸を舞台に、蔵のとり壊しを生業とする‟伊豆晋″の活躍と、収蔵品にまつわる因縁話を情たっぷりに描く時代小説
享保二年正月、江戸尾張町が大火に見舞われた。
焼け残った土蔵の取り壊しに難儀した肝煎衆五人組は、深川に壊しの名人・伊豆晋平を訪ねる。‟伊豆晋″は建て替え普請のために家屋を壊す「壊し屋」だ。荒くれた男たちを束ねる棟梁晋平は、度量もさることながら、蔵から出る古道具への目利きも並みではない。蔵の壊しを請け負った伊豆晋の面々の活躍と、所蔵品にまつわる因縁話を、情たっぷりに描く、大江戸人情物語。~本の帯から
山本一力さんの小説『あかね空 』と映画はとても興味深く読んだり観たりしたのでこの本を手に取っってみた。
ありとあらゆる江戸が出てくるが、一度に十七もの蔵を壊す仕事を請けて、蔵の回り組み立てる大量の丸太材を伊豆晋平の若い衆が借りに行くわけだが、そこの親方が可愛がっている番犬があまりにも吠えるので「いい加減にしねえと犬鍋にして食っちまうぞ。・・・」と怒鳴ったところに親父が出て来て「貸してもいいが、犬に詫びろ」と言われ、「それなら物別れだ、帰ってくれ」という結果になった。
その丸太材が確保できないと蔵の取り壊しは無理なので、こんどは棟梁の晋平がみずから出向いて、また番犬とご対面。犬は牙を剥いて吠えはじめ、晋平は胸を張って犬を睨みつけ、犬は犬で前足を突っ張り、鼻面を低くして晋平を見上げる。この犬ごときに負けていては、あとの掛け合いもうまく運ぶわかがないとまた一歩詰めると、犬は唸りながらも後ずさりを始める。もっとずーっと詳しい全体のやり取りが愉快だった。晋平はこの関門を通過してやっと店主との交渉にこぎつける。ずっと後の話ではのら犬3匹の喧嘩も出てきて、見ていた晋平が一匹を可飼うことになる。
しかし、このような町人が江戸を作り上げていったのかとタイムマシンにでも乗って気分になった