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「そうか、もう君はいないのか」   城山三郎  新潮社

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 田村正和と富司純子のテレビドラマもあったらしいね。ネットでは見つからないが、小父さんはNHKの芝居や読書も入ったドキュメンタリーみたいな放送に見入った。私の85歳で亡くなった長兄が17年前に先だった義姉との想いに見事に重なったからだ。妻に先立たれることが、このようにも酷なものだとは想像がついてなかった。

 ところが、この本を読んでみると、読んでも、読んでも奥さまとの楽しい思い出がつづられている。あれ~、さみしさはどこから出てくるのだろう、テレビと違うぞ~?とページをめくっていくと3分の2を過ぎた頃にやっと「詩」が出てきた。

 妻
夜ふけ 目ざめると
枕もとで何かが動いている
小さく呟くような音を立てて

何者かと思えば
目覚まし時計の秒針
律儀に飽きることなく動く
その律儀さが 不気味である

寝返りを打つと 音は消えた
しばらくして おだやかな寝息が
聞こえる
小さな透明な波が
寄せては引く音
これも律儀だが 冷たくも
不気味でもない

起きてる間は いろいろあるが
眠れば 時計より静か

「おい」と声をかけようとして やめる
五十億の中で ただ一人「おい」と呼べるおまえ
律儀に寝息を続けてくれなくては困る

 「空気みたいな存在」とはよく言ったものだ。先に逝かれてしまって、その貴重な存在を認識するものなのか?城山三郎さんの奥さまへのラブレターがとうとうと書かれていた。

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