デーブ・スペクターさん=北山夏帆撮影
アメリカ大統領選の前後には、このデーブ・スペクター氏とパックンことパトリック・ハーラン氏がいつも出て来て、現大統領のことをぶった切っていたのを興味深く聞いていたね!
この東京論もなかなか面白い。最近の東京は綺麗になってきた(整備されてきた)と思うけど、正に前の東京オリンピック前夜はごちゃごちゃに埃っぽくて、街中掘り返している感じだったね。「無計画で出来上がった街」とはうまい表現な気がする。
きっと、発展のスピードが早すぎるんだろうね。地下鉄にしろインフラにしろ、首都直下型大地震が起こったら東京都が麻痺して、日本国中も大混乱に陥ると思う。東京は避難所なんて絶対足りっこないよね。
小父さんもブラジルでのオリンピック招致時の「お・も・て・な・し」には何だか違和感を持っていた。スペクター氏の下の解釈でほっとした気がする。このように外からの目で日本を見つめるてもらうことは大切だよね。
放送プロデューサー デーブ・スペクターさん 知恵が生んだ驚きの風景
毎日新聞 2017年3月15日 東京夕刊
どうして東京を訪れる外国人観光客が増え続けているか。それは、日本を代表していて、不思議なものにたくさん出合えるから。
例えば街角の自動販売機。こんなにたくさんある都市は世界中どこにもないよ。レストランにある本物そっくりのメニューの模型も珍しい。薬局の前にはなぜか、カエルなどのマスコットキャラクターが置いてある。猫よけのペットボトルもあちこちにある。日本人には当たり前のものばかり。
警察署の前で棒を持って立っている人がいるけど、あれは何? 最高なのは、道路の工事現場で交通整理をしている警備員。ユニホームをぴしっと着て、お辞儀をして、通行人に不便をわびている。仕事へのプライドを感じさせるよね。米国だと、同じ交通整理でも「文句あるか」と言わんばかりの態度だからね。プロ野球の平日のナイターで、ワイシャツにネクタイ姿のサラリーマンがたくさん観戦しているのもびっくり。米国では仕事帰りでもラフな格好に着替えるからね。まだまだあるよ。
僕がシカゴで暮らしていた小学5年生の時、日本からワタル君が転校してきて友達になりました。日本語の会話集を買って「郵便局はどこですか?」と丸暗記した一節を披露すると、ワタル君に「すごい!」とほめられた。それから独学で日本語を勉強し、彼の家に遊びに行っては、日本から送られてくる漫画を愛読するようになって。やがて週に1度1時間、日本語学校に通い、日本の文化や風俗も勉強した。井上靖らの小説を読んで、銀座や赤坂の夜の酒場に思いをはせたりしたものです。
上智大学に留学するため、初めて羽田空港に降り立った日はよく覚えている。高速道路で都心に向かう途中、団地のベランダにずらりと布団が干してある。「どうして落ちないの?」と不思議だった。最も魅了されたのは銀座4丁目の交差点。夜のネオン。きれいだよね。今でもあの景色は大好きです。
その後、米国に帰って放送の世界に入り、ABC放送の番組プロデューサーとして東京に戻って以来、ここで暮らしています。外国から知人が訪れると新宿のゴールデン街に連れて行ったり。すると、まず建物の小ささや入り口の狭さに驚く。電車の窓から見える風景は、家と家の間に隙間(すきま)がない。土地が狭いから、車が立体駐車場の回転台に載って移動する。何でも珍しがる。
それもこれも、東京の人たちの知恵なんだよね。地価が高いし人がひしめいているから。その知恵を外国人が観察して「すげー」と思い、デジカメで撮って、サイトにアップする。以前なら外国人は京都、奈良を目指して東京はほとんど素通りだったけど、インターネットで魅力が広まったんです。
東京は無計画にできあがった街。第二次大戦で焼け野原になったけど、あっという間に闇市が広がり、進駐軍が「都市計画はもう手遅れ」と諦めたという話を聞いたことがある。でも、そこがいいんです。「どう進化するか分からない」という面白さがあるんだよね。
東京五輪招致の際、滝川クリステルさんが 「お・も・て・な・し」を口にしたけど、あれは困っちゃいましたね。あの日を境に東京の人は必要以上に「おもてなし」を意識するようになり、外国人から見ると何だかぎこちなくなっちゃった。ホテルや旅館やお店のサービスは素晴らしいんだけど、それをはっきり自覚していなかった頃の方が、もっと自然でよかった。彼女に会うたび、からかい半分で「あの言葉、二度と使っちゃ駄目だよ」と言ってるんです。
おもてなしだけじゃない。外国人は東京の人を尊敬の念を込めて見ているところがある。例えば、サラリーマンが携帯電話越しに取引先に頭を下げる姿。笑っちゃうけど、あれはいい。でも、そんなふうに見られていると本人が意識しちゃうと、よさが失われるような気がする。
そう。これからは映画「アナと雪の女王」じゃないけれど、「ありのままで」。東京五輪だって肩に力を入れず、できるだけお金もかけず、ロンドン五輪のようにオシャレに準備しましょうよ。「ありのまま」が一番ですから。【聞き手・沢田石洋史、写真・北山夏帆】
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■人物略歴
Dave Spector(デーブ・スペクター)
米シカゴ出身。世界のテレビ番組や情報を日本に紹介し2009年のオリコン「好きなコメンテーターランキング」1位。短文投稿サイト・ツイッターのフォロワー数は114万人超。
アメリカ大統領選の前後には、このデーブ・スペクター氏とパックンことパトリック・ハーラン氏がいつも出て来て、現大統領のことをぶった切っていたのを興味深く聞いていたね!
この東京論もなかなか面白い。最近の東京は綺麗になってきた(整備されてきた)と思うけど、正に前の東京オリンピック前夜はごちゃごちゃに埃っぽくて、街中掘り返している感じだったね。「無計画で出来上がった街」とはうまい表現な気がする。
きっと、発展のスピードが早すぎるんだろうね。地下鉄にしろインフラにしろ、首都直下型大地震が起こったら東京都が麻痺して、日本国中も大混乱に陥ると思う。東京は避難所なんて絶対足りっこないよね。
小父さんもブラジルでのオリンピック招致時の「お・も・て・な・し」には何だか違和感を持っていた。スペクター氏の下の解釈でほっとした気がする。このように外からの目で日本を見つめるてもらうことは大切だよね。
放送プロデューサー デーブ・スペクターさん 知恵が生んだ驚きの風景
毎日新聞 2017年3月15日 東京夕刊
どうして東京を訪れる外国人観光客が増え続けているか。それは、日本を代表していて、不思議なものにたくさん出合えるから。
例えば街角の自動販売機。こんなにたくさんある都市は世界中どこにもないよ。レストランにある本物そっくりのメニューの模型も珍しい。薬局の前にはなぜか、カエルなどのマスコットキャラクターが置いてある。猫よけのペットボトルもあちこちにある。日本人には当たり前のものばかり。
警察署の前で棒を持って立っている人がいるけど、あれは何? 最高なのは、道路の工事現場で交通整理をしている警備員。ユニホームをぴしっと着て、お辞儀をして、通行人に不便をわびている。仕事へのプライドを感じさせるよね。米国だと、同じ交通整理でも「文句あるか」と言わんばかりの態度だからね。プロ野球の平日のナイターで、ワイシャツにネクタイ姿のサラリーマンがたくさん観戦しているのもびっくり。米国では仕事帰りでもラフな格好に着替えるからね。まだまだあるよ。
僕がシカゴで暮らしていた小学5年生の時、日本からワタル君が転校してきて友達になりました。日本語の会話集を買って「郵便局はどこですか?」と丸暗記した一節を披露すると、ワタル君に「すごい!」とほめられた。それから独学で日本語を勉強し、彼の家に遊びに行っては、日本から送られてくる漫画を愛読するようになって。やがて週に1度1時間、日本語学校に通い、日本の文化や風俗も勉強した。井上靖らの小説を読んで、銀座や赤坂の夜の酒場に思いをはせたりしたものです。
上智大学に留学するため、初めて羽田空港に降り立った日はよく覚えている。高速道路で都心に向かう途中、団地のベランダにずらりと布団が干してある。「どうして落ちないの?」と不思議だった。最も魅了されたのは銀座4丁目の交差点。夜のネオン。きれいだよね。今でもあの景色は大好きです。
その後、米国に帰って放送の世界に入り、ABC放送の番組プロデューサーとして東京に戻って以来、ここで暮らしています。外国から知人が訪れると新宿のゴールデン街に連れて行ったり。すると、まず建物の小ささや入り口の狭さに驚く。電車の窓から見える風景は、家と家の間に隙間(すきま)がない。土地が狭いから、車が立体駐車場の回転台に載って移動する。何でも珍しがる。
それもこれも、東京の人たちの知恵なんだよね。地価が高いし人がひしめいているから。その知恵を外国人が観察して「すげー」と思い、デジカメで撮って、サイトにアップする。以前なら外国人は京都、奈良を目指して東京はほとんど素通りだったけど、インターネットで魅力が広まったんです。
東京は無計画にできあがった街。第二次大戦で焼け野原になったけど、あっという間に闇市が広がり、進駐軍が「都市計画はもう手遅れ」と諦めたという話を聞いたことがある。でも、そこがいいんです。「どう進化するか分からない」という面白さがあるんだよね。
東京五輪招致の際、滝川クリステルさんが 「お・も・て・な・し」を口にしたけど、あれは困っちゃいましたね。あの日を境に東京の人は必要以上に「おもてなし」を意識するようになり、外国人から見ると何だかぎこちなくなっちゃった。ホテルや旅館やお店のサービスは素晴らしいんだけど、それをはっきり自覚していなかった頃の方が、もっと自然でよかった。彼女に会うたび、からかい半分で「あの言葉、二度と使っちゃ駄目だよ」と言ってるんです。
おもてなしだけじゃない。外国人は東京の人を尊敬の念を込めて見ているところがある。例えば、サラリーマンが携帯電話越しに取引先に頭を下げる姿。笑っちゃうけど、あれはいい。でも、そんなふうに見られていると本人が意識しちゃうと、よさが失われるような気がする。
そう。これからは映画「アナと雪の女王」じゃないけれど、「ありのままで」。東京五輪だって肩に力を入れず、できるだけお金もかけず、ロンドン五輪のようにオシャレに準備しましょうよ。「ありのまま」が一番ですから。【聞き手・沢田石洋史、写真・北山夏帆】
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■人物略歴
Dave Spector(デーブ・スペクター)
米シカゴ出身。世界のテレビ番組や情報を日本に紹介し2009年のオリコン「好きなコメンテーターランキング」1位。短文投稿サイト・ツイッターのフォロワー数は114万人超。