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登山外来の現場から 国際山岳医・大城和恵 / 毎日新聞

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 今、小父さんの一番知りたいことが載っていた。しかも、いつも目を通しているつもりの毎日新聞に!

 高齢登山愛好家の方には必見ですよ。登り以上に要注意! 下山中のけがなんて 奥穂高岳に登った時つくづく感じて、帰ってから靴底の厚いトレッキングシューズを新たに購入したけど、その靴の効果を感じる山にはあれ以来登っていない(笑)

 スポーツドリンクを半分程度に薄めたものってテレビだったかで聞いたことある。これと水+塩の脱水対策は即実践しよう。

 下山になると、よろめいたり、時々つまずいたり、足が疲労でもつれるようになるこれはいつもの小父さんのパターンだ!よし、この教科書を元にもう一度高山に挑戦しよう!出来るかな?(汗) 
 
  

猛暑の登山は疲労が招く遭難に注意

毎日新聞 2016年8月10日 大城和恵 / 心臓血管センター北海道大野病院医師/国際山岳医
1.猛暑の夏に多い「疲労」遭難

 今年の夏は猛暑になるようです。

 山岳遭難の多い長野県で2014、15年の遭難件数を見ると、北アルプスでは7、8、9月の遭難が多いことがわかります。そして遭難の状況を調べてみますと、猛暑だった15年8月は「疲労」が原因の遭難がとても多いのです。

 昨年以上の猛暑の可能性が指摘されている今年も、この「疲労」遭難に要注意です!

 今回は「疲労」遭難がどういうものか、なぜ暑い夏に多いのかをお話ししましょう!

 疲労と言うと、体力不足の高齢者が無理をしたからだ!と、どうも短絡的に結論付けられているように思います。結果、「高齢者が体力に応じた登山をすれば遭難が減る」かのように言われています。

 本当にそうなんでしょうか?

 その科学的根拠はどこにあるのでしょうか?

 高齢者の遭難が多いのは事実ですが、60歳を過ぎたら、誰でも体力なんて落ちて当たり前です。

 逆に言うと、高齢者以外は「疲労」遭難しないのでしょうか?

2.「疲労」の原因はこんなにある!

 山で起こる疲労の原因、皆さんはいくつ思い浮かべることができますか?

 「登りで筋肉疲労」は分かりやすいですね。そして「下りで筋肉破壊」はこの連載の「登り以上に要注意! 下山中のけが」の回で詳しく紹介しました。ここまでは皆さん想像しやすいですよね。実はここからが大切です!

 「エネルギー不足」「脱水」「暑さの疲労」「寒さの疲労」「低酸素の疲労」「睡眠不足」と、疲労の原因はほかにもこんなにあるのです。列挙されてみると、心当たりのある方はいらっしゃるのではないでしょうか。

 前述の長野県のデータを見ると、14年の「疲労」遭難は5月に多く、原因は低体温症、つまり「寒さの疲労」でした。15年は8月の晴れの日に「疲労」遭難が多く起きています。具体的な状況で見ると、夏の遭難は心臓発作、熱中症、高山病が原因の多くを占めています。

 年代別で見ると、もちろん60代の「疲労」遭難は多かったのですが、10〜40代も「疲労」遭難しているんですよ。体力が一番ある若者でも、「疲労」遭難しているんです!

3.体力不足ではなく「脱水」が原因!

 これらの夏の「疲労」遭難の事例を見ると、「夏の晴れた日」という気象条件が影響していると気がつきます。それを踏まえると、夏は「脱水」の疲労が遭難に大きな影響を与えていることが、容易に想像できると思います。

 晴れた夏の日、天気がよければ、調子に乗ってオーバーペースになることもあります。トイレに行きたくないから飲まない、汗をかくから飲まない、水が高いので買わない、山小屋で飲むビールのために我慢、という方もいらっしゃると思いますが、これ、ダメダメ登山者ですよ!!!!

 特に最近、中高年の女性の間ではやっている漢方薬「芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)」。足がつったら飲みなさい、と周囲に分け与えている人もいますが、登山中に足がつるのは、脱水、つまり塩分と水分が不足しているからです。一時的に症状を抑えるために薬を飲んでも、根本的な塩分と水分の不足を解決しなければ、ひどい熱中症に発展し、「疲労」遭難につながります。

 14年から15年にかけて、登山中の心臓死が増えました。昨年夏にこの連載「防ごう!山での心臓突然死」のシリーズでも紹介しましたが、脱水は心臓突然死のリスクも高めます。

4.遅れて忍び寄る「脱水」の怖さ

 脱水は、すぐに自覚できないのが怖いところです。じわじわ体の細胞に悪影響を及ぼすので、はっきり調子が悪いと気付くまでに時間がかかります。午前中の脱水は、午後にパンチを効かせます。「疲労」遭難は、下りに多いのです。

 日中、脱水を起こした結果、山小屋に到着してから足がつる人もいます。むしろ、その日の行動が終了しているならラッキーです。これが下山途中に影響してくるとどうなるでしょうか。注意力が散漫になったり、体がバランスをとろうとする働きが鈍くなったりするので、ふらついて転びます。そうして足首を捻挫したり、頭を打ったりして、歩いて下りられなくなります。熱中症になる人、意識を失う人もいます。

 「バテた!」「体力が無い!」と思ったことがある人、まず脱水対策に取り組んでください。

5.登山前に500mL、登山中は30分おきに水分を!

 具体的な脱水対策は、やはり、水+塩をとるしかありません。朝起きた時、自覚がなくても私たちの体はすでに「隠れ脱水」の状態です。そのまま登ると、山頂に行く前に脱水の影響が出て、バテてバテてどうしようもなくなります。朝起きたら、朝食に加え、水分を500mL取りましょう。塩分補給を兼ねるには、スポーツドリンクを半分程度に薄めたものがよいでしょう。登山中は体重や天候、登山のスピードなどで異なりますが、一般的な目安として30分おきに200mLを飲んでください。以前講演の際に、そんなに飲めないのではないですか?と質問を受けました。いえいえ、飲めます。だって、私も友人たちも必ずやっているからです。

 明日8月11日は今年から祝日になった「山の日」です。1年でもっとも暑い時期、登る前にまず500mL、水分を取って登ってみましょう! 山の日を、新しい取り組みの始まりにしてください。



大城和恵
心臓血管センター北海道大野病院医師/国際山岳医
おおしろ・かずえ 1967年長野県生まれ。医学博士、山岳医療修士。日本大学医学部卒業後、循環器内科医として約10年間の付属病院勤務を経て、「山での遭難者を助けたい」という思いを募らせて本格的に山岳医療の勉強を始める。98年、アフリカ大陸最高峰キリマンジャロ(5895m)に登頂。心臓血管センター大野病院を拠点に診療を続けるが、09年に退職し渡英。1年をかけて日本人として初めて「UIAA(国際山岳連盟)/ICAR(国際山岳救助協議会)/ISMM(国際登山医学会)認定国際山岳医」の資格を取得した。現在は同病院の循環器内科・内科および登山外来で勤務するかたわら、北海道警察山岳遭難救助隊のアドバイザーも務める。遭難実態を知り、現在遭難しないための医療情報、心臓死の予防、高所登山のアドバイス、ファーストエイド技術の講習会主宰など、山と登山に関する多方面で活躍する。13年には三浦雄一郎さんのエベレスト遠征隊にチームドクターとして参加した。自身もマッキンリー、マッターホルン、マナスル(世界第8位)登頂など海外を含む豊富な登山歴を持つ。  

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