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本 / 『野いばら』 梶村啓二 著

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内容紹介
第3回日経小説大賞受賞の傑作歴史ロマン!英国田園地帯の丘で波打つ匂い立つ白い花の群れ。幕末の横浜での英国軍人と日本人女性との悲恋が種子となり、現代の欧州での偶然の男女の邂逅がその美しい薫りを蘇らせる。

内容(「BOOK」データベースより)
21世紀の英国。静かな田園地帯の丘に波打つ白い花の群生の清清しい香り。150年前、生麦事件直後の横浜で幕府の軍事情報探索の命を受けた英国軍人がいた。彼の日本人女性への秘めた想いが、日本原産の清楚な花を、欧州で蘇らせたのか―妻と別れ心にぽっかり穴のあいた縣和彦が種苗会社のM&Aの調査中、偶然手にしたかつての英国軍人の手記には、吹き荒れる攘夷の嵐に翻弄されながらも、自らの本分をひたむきに貫くしかない多くの名もなき人達が生きていた。手記に心奪われた縣はやがて未来へ一歩踏み出すきっかけを見いだす…グローバリズムの時代を生きる寄る辺なき現代人へ、はかなくて烈しい、時をこえた愛の物語。第3回日経小説大賞受賞。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

梶村/啓二
大阪外国語大卒。『野いばら』で第3回日経小説大賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)    amazon.co.jpから




   久々にすーっと惹きつけられていく本に出会った。本のラベルには“音楽と花は似ている。流れ着いた旅先で美しく蘇る。”とあり。舞台は2009年のコッツウォルズ(イングランド中央部)に始まり1862年の香港、横浜に展開して、2009年のアムステルダム(オランダ)に飛び、1863年の横浜から、最後はまた2009年のコッツウォルズに戻るのだが、最近流行りのタイムスリップではない。現代の商社マンの旅先での出会いとコッツウォルズに住むご婦人の祖先の英国軍人の回想録だ。

 当時の日本人の礼儀正しさや、庶民の幸せな生活が英国人の視点から描かれているが、近年来日したブータン国王の国民の幸福度を思い起こさせるような江戸の生活や平安が描かれている。しかし、時は尊王攘夷か開国かの激動の時代、今まで見聞きしていない克明な描写はけっこうショッキングだな。

 それに引き換え、この英国軍人さん、日本語の教師をマンツーマンで出戻りのご婦人にお寺の境内で習うのだが、これが純愛に近い。この日本語教師と生徒である軍人さんとの呼吸が延々と続くがこれがなかなかいい。「色はにほへど 散りぬるを 我が世たれぞ 常ならむ 有為の奥山  今日越えて 浅き夢見じ  酔ひもせず」によって、かな文字を一日で覚えさせるなんて、小父さん自身日本文化の高さを再認識した。中学校で習ったけ?

 彼には香港から急遽日本行きを命じられた時に日本は危険だからと英国へ帰した奥さんもいた。この手紙のやりとりもわずかだが、『硫黄島からの手紙』に出てくるようなごく日常的なもの。軍人と本国の家族とのやりとりでこんなものなのかも知れないな〜。

 ヴァイオリンを弾き、日本の花に感嘆しご婦人に惚れてまう!そう言えば、昔通っていたコーヒー屋のママさんにもイタリアの警察官が恋の電話をして来ていたな〜。どちらもいい齢だったが、彼女曰く「西洋人男性は日本女性はつくしたり、たてたりするからか好きになる」って言ってた。うん、オノ・ヨーコを愛したジョン・レノンもそうだったね。そんな“日本女性”に恋した感じだな。いやー面白い。






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