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記事/野坂昭如の「七転び八起」 敬老 から抜粋    毎日新聞 2012.9.15朝刊

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 10年近く前まで9月15日が敬老の日だった。特にこの月だけじゃなく、年長者は敬うべきものに違いない。

 昔は今ほど辺りで老人を見かけることが少なかった。たまに目にする老人にはそれなりに威厳、風格、貫禄のようなものが備わっていたように思う。日本は年々年寄りが増えている。しかしそのなかに敬うべき存在はどれくらいいるのかといえば、まこと心もとない。

 かって、特におじいさんといえば少し怖い存在だった。男は父親からおりると、祖父になる。威厳や貫禄は父親をやりながら身につけたもの。

                               中略


 果たして老人とは何か。どんなふうに生きればいいのか判らない。それでも判ったフリをして生きている。ぼくらより下の世代となると、もっと戸惑っている人が多いのではないか。戸惑ううち、若作りし始める。世の中に若い老人が増えた。企業もこの世代を狙って、あれこれ誘いをかける。例えば健康にまつわるグッズ。食品、サプリメントなど、誰もが持っていてあたり前となった。金は使ってもらうことが大事、元気に生き生きと暮らすのは結構。だが、老いと向き合うことも必要。自分だけが元気に生きることばかりに重点をおいて周りが見えなくなる。

 アンチエージングとやらで年を取ることを嫌い、老いも極端に避ける。人間は老いや死と向き合うことで成長するのだ。年寄りに課せられた役割は、若い人に老いや死の実態を見せることにもある。

 政治、経済の世界にも年を忘れたご老体がごろごろしている。それにしても、今を担う人材が見あたらない。民主党の代表選、自民党の総裁選、党内のゴタゴタばかりが目につく。・・・・



  今日も野坂先生にパンチをくらった感じだ。

 昔むかし博多の昼のテレビなんかでは、野坂さん、酔っぱらって出演して来て司会者にからんで、アナウンサーを茹でダコになるくらい怒らせたり、動画サイトにはテレビ番組の中であろう大島渚元監督を殴って、大島さんのめがねも吹っ飛び彼も仕返ししたようなのも見たけれど・・・。現在の野坂さんが記される言葉にはとても含蓄があるね〜。亡くなられた京都の俳人でエッセイストで医者の福島昌山人さんが尊敬していた意味がやっと分って来た気がする。

 上の赤字にして転載させてもらった部分、小父さんにぴったし当てはまる。そもそも若作りには無理がある。年相応に生きるということって大事なことなんだね!このコラムの抜き書きの前後にもいろんな人生観がしたためてある。脳梗塞のリハビリを続けながら執筆活動を行なっている野坂昭如さんは現在81歳だ。



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