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女の気持ち:心の隙間「2匹の猫が埋めてくれるかにゃあ」 北海道砂川市・渡辺裕子

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 上の猫ちゃんはイタリア在住のshinkaiさんのブログ イタリア・絵に描ける珠玉の町・村 ・ そしてもろもろ!からお借りした。訪問すると、知らないイタリアにたくさん出会えますよ!      

  

 渡辺さん、りっぱな大人になった子供たちには、彼らの人生があるんですよね。終身雇用で年功序列の世界なんて今の日本からも無くなりつつあるんでしょう。ひょっとしたら私の亡くなった両親も私がずっと故郷の福岡に居ることを期待していたかも知れません。でも、送り出してくれたからこそ今があるのだと感謝しています。

 猫ちゃんととお暮しのこと、何よりの貴重な時間だと想像します。渡辺裕子さんの投稿をしみじみと読ませていただき、ありがとうございました。

  

女の気持ち:心の隙間 北海道砂川市・渡辺裕子(会社員・54歳)

毎日新聞 2015年06月28日 東京朝刊

 大学を出て専門学校に行き、就職して同居が5年を過ぎた息子が、安定している職場から転職して札幌に行く、と宣言した。

 なぜ? もったいない。彼を説得できず、私も納得できず、皆の心配をよそに「行ってきます」と引っ越していった。

 もう大人の彼が自分で決めたのだからと、ぐっと我慢してお金も口も出さずに笑顔で送り出した。

 結婚してこの町で一生暮らすのだろうと私は勝手に「未来予想図」を描いていた。急に真っ白になった設計書。ぽっかり空いた心の隙間(すきま)。

 思えば私も54歳。少しだけ自分の過去を振り返ってみた。大やけどをして傷が残り、股関節の手術で4カ月半の入院。両親の離婚、高校中退、息子の3度の気胸での入院、私の胃がんの手術、認知症となった母との同居……。幸せの感じ方は人それぞれだと分かっていたから自暴自棄になったことは一度もないけれど、違う人生もあったかなと思うことはあった。

 でも、素直でやさしい子に育った息子にそれ以上、何を望むことがあるだろう。足が痛くても自分の足で歩ける。これ以上何を願うだろう。3分前のことは忘れても、おかずを分けてくれる母に何を期待することがあろう。

 いずれ行う足の手術のためにも歩かないと。覚えていなくても母と季節の花を見にいかないと。息子もそのうちに増えた家族と遊びにくるだろう。

 ぽっかり空いた穴は、2匹の猫が埋めてくれるかにゃあ。

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