史上もっとも饒舌な「三歳児」――選考会を震撼させた、純文学恐怖作(ホラー)。
「あなた」は目が悪かったので父とは眼科で出会った。やがて「わたし」とも出会う。その前からずっと、「わたし」は「あなた」のすべてを見ている――。三歳の娘と義母。父。喪われた実母――家族には少し足りない集団に横たわる嫌悪と快感を、巧緻を極めた「語り」の技法で浮かび上がらせた、美しき恐怖作(ホラー)。
藤野可織『爪と目』芥川賞受賞記念著者メッセージ|新潮社
プロフィール:1980年、京都市生まれ。同志社大学大学院美学および芸術学専攻博士課程前期修了。2006年、「いやしい鳥」で第103回文學界新人賞受賞。同作を収録した『いやしい鳥』(文藝春秋)を2008年に刊行する。他の著書に『パトロネ』(集英社)がある。2013年「爪と目」で第149回芥川龍之介賞を受賞。 新潮社から
2012年の2月の『共喰い』 田中慎弥 著以来、芥川賞の受賞作品を読んだ。以前から芥川賞は文藝春秋の掲載を読んでいるが、古くは柴田翔の、学生運動を題材にした『されど われらが日々』はショッキングだった。
さて『爪と目』だが、寝ぼけまなこで目を通していたが、はじめ上に書いてある「あなた」と「わたし」に父に母とあなたである義母の関係がいっこうに理解できなかった。わたしは3歳なのに大人の世の中が見渡せるから、えっ「私って誰だ」ということになる。しばらくしてそれが子供だというこで、昔、好きだった三島由紀夫 の『午後の曳航』に似たものを感じた。ブティックを経営する未亡人と息子、そしてその女性に恋する外国航路専門の船員とが織り成す人間模様を少年たちが子供っぽく振る舞ったり、哲学を論じたり残酷になったりする。これも夢中に読んだと思う。
『爪と目』では題材がとても現代的だ。ちゃんと覚えていないが(笑)たぶん、義母がたくさんのブログを読んでブックマークする。でも文体では「わたしは、あなたがたくさんのブログを読んでブックマークをしていることも知っている」てな感じになる。そこで小父さんは幼女がそんなことが分かるか???と言う風に捉えてしまう。こういう世界は感性なものなんだろうな。
直接的な表現ではないが、性愛が何かさらっといくつか出てくる。わたしの父とあなたが愛人関係であって父にもあなたにも他に愛人がいる。またそれもいやらしくなくさらっと書かれている。そんな世界が幼女から見えるかな?
選評では小川洋子さんが絶賛してある。最初に書いた『共喰い』 田中慎弥 共々すーっと入って行けないのは小父さんの読解力の無さなのか世代間のギャップなのか。とても文学的らしいので頭が冴えている時読み直そうと思う。