歴代最長期間、幹事長を務めた
「二階前幹事長」が干されて恨み節「安倍は何の挨拶もない」「1億5000万円支出の指示を俺が出せる訳がない」
デイリー新潮 2021年10月22日掲載
独断専行への不満のマグマ
菅義偉氏の退陣から岸田文雄首相誕生という政局の中で最も割りを食ったのが、二階俊博前幹事長率いる二階派だというのは衆目の一致するところだろう。閣僚や党役員人事で干され続けた二階氏は、安倍晋三元首相への恨み節をこぼしているという。
「田中角栄を超え歴代最長の5年超にわたって幹事長の職にある中で、独断専行がすぎるという批判は強まっていました」
と、政治部デスク。独断専行の最たる例が自派閥拡大のための選挙区での優遇作戦だ。
「いくつかの選挙区で自民党系の候補がかち合うケースがありますが、そのほとんどに二階派所属の議員が絡んでいました。自派閥の現職議員に他派閥が割って入ろうとした際には現職優先と言ってみたり、その逆だと勝った方に推薦を出すと言ってみたり、ルールが変幻自在な点に不満のマグマがたまっていましたね」
二階氏を幹事長に任命したのは首相時代の安倍氏なのだが、
「何度か二階さんを切って岸田さんにスイッチしようとしたんですが、老練な二階さんは匕首(あいくち)を突きつけるような形で安倍さんにプレッシャーをかけ、安倍さんはなかなか切れなかった」
厄介な「1億5000万円の支出問題」
安倍元首相への恨み節が
安倍氏の電撃退陣の後、どの派閥ボスよりも早く「菅支持」を訴え、その後の人事でも旨味を吸う権利を勝ち取った。
「無派閥で政権基盤の脆弱な菅さんにとって二階さんの支援は渡りに船。菅政権の生みの親からいつしか菅政権の屋台骨となっていきました。それは裏返すと菅政権と運命共同体だということになるわけで、じり下がりする内閣支持率の戦犯として二階さんが槍玉にあげられることにつながりました」(先のデスク)
二階氏にとって党内のやっかみ以上に厄介だったのは、「1億5000万円の支出問題」だ。2019年7月の参院選広島選挙区に出馬した河井案里陣営に、党本部から1億5000万円が流れていたことが明らかになったのだ。
「選挙時に党から支給される額としては『一桁違う』という指摘がありましたが、その通りでしょう。その後、河井氏や夫で選挙を取り仕切った克行法相が公選法違反容疑で逮捕・起訴され、その公判で二階さんの名前が飛び出したのです」(同)
2020年10月、案里被告の公判で検察側の証人として出廷した自民党の広島県議が案里被告からカネを受け取る際に、「当選おめでとうございます。二階幹事長から預かってきた」と話したと証言したのだ。これについて、「案里被告はよくブラックジョークを言うので、ジョークだと思った」と付言したが、「1億5000万円の支出=二階氏」という構図が流布していく。
「岸田の乱」は成功したかに見える
“長期政権をやれたのは誰のおかげか”
2021年5月、案里被告が有罪判決を受けた後、資金の提供について問われた二階幹事長は「関与していない」と語っている。会見に同席した林幹雄幹事長代理がこれを引き取って、「実質的には当時の(甘利明)選対委員長が広島を担当していたので、よく分からないということだ」と補足したのだった。
「選挙の責任者でカネの支出にハンコをおした人物の発言とは思われないと、猛反発をくらいました。それで二階さんは、“党全般の責任は私にあることは当然のことでありますが、収入支出の最終判断をしているわけであって個別の選挙区の選挙戦略や支援方針については、それぞれ担当において行っている”と当初の発言の修正を余儀なくされます。他方、甘利さんは“1ミリも、1ミクロンも関わっていない。選対委員長は公認の調整だけだ”と説明。極めて迷惑そうでしたね」(先のデスク)
このように党内で二階氏への不満が募っていく状況下、「ポスト菅」として岸田氏が手を上げる際に、「党役員の任期制限」を訴えたのはご存知の通りだろう。
「二階さんへの宣戦布告でしたが、党内で二階派以外はほぼ反対する勢力は見当たらず、万事休すとなってしまいましたね」
と、別のデスク。
「二階さんは岸田さんが自分で考えて行動できたとは思っておらず、知恵をつけた人物がいる、それは安倍さんだと見ているようです。“あれだけの長期政権をやれたのは誰のおかげだと思っているんだ。それなのに安倍は何の挨拶もない。というかこれまで1度も感謝を申し述べたことがないんだ”とこぼしていました」
“会社で考えてもらえれば分かりますよね”
件(くだん)の1億5000万円についてこのデスクによれば、
「二階さんは、“会社で考えてもらえれば分かりますよね。社長に言われて初めて経理なり総務なりが動くわけでしょ。独断で総務部長がどうのこうのっていうのはあり得ませんよ”と言っていたようですね。暗に安倍さんの指示をほのめかしたということでしょう」
結局、自民党はこの1億5000万円は買収の原資に使われていないとすることで幕引きを図っている。
さて、閣僚や役員人事で冷飯を食うことになった二階派は、今回の総選挙でも苦境に立たされている。
「その代表が山口3区。参院から鞍替えを図った林芳正元文科相(岸田派)と公認を争った河村建夫元官房長官(二階派)への扱いでしょう。甘利幹事長が双方と面談して河村さんに不出馬を飲ませました。もともと林さんの父親の地盤で、今回の情勢調査でも林さんが河村さんを圧倒していましたから想定内の展開ではありますが、二階さんが幹事長ならこうはなっていなかったかもしれません」(同)
その他、番頭格の林幹雄氏も苦戦を強いられ、選挙区に張り付かざるを得ない状況だという。
「二階さんも可能なら今回の選挙の前に引退を表明していたのですが、後継に決まっている3男への引き継ぎがうまくいかず、もう1期やることになりました。選挙が終われば武田良太前総務相の派閥へ徐々にシフトしていくものと思われます」
盛者必衰を地で行く流れである。
デイリー新潮取材班
なんだ、二階俊博前幹事長がそのような会見を行ったわけではないのか!でも政治って奴は表向きは高い理想を掲げているようだけど、ほんと「清濁飲み合わせる」どころか、ドロドロの世界だってことの一端が見えたね。安倍晋三さん、角さんに負けない金権政治やっているんだ!
「二階前幹事長」が干されて恨み節「安倍は何の挨拶もない」「1億5000万円支出の指示を俺が出せる訳がない」
デイリー新潮 2021年10月22日掲載
独断専行への不満のマグマ
菅義偉氏の退陣から岸田文雄首相誕生という政局の中で最も割りを食ったのが、二階俊博前幹事長率いる二階派だというのは衆目の一致するところだろう。閣僚や党役員人事で干され続けた二階氏は、安倍晋三元首相への恨み節をこぼしているという。
「田中角栄を超え歴代最長の5年超にわたって幹事長の職にある中で、独断専行がすぎるという批判は強まっていました」
と、政治部デスク。独断専行の最たる例が自派閥拡大のための選挙区での優遇作戦だ。
「いくつかの選挙区で自民党系の候補がかち合うケースがありますが、そのほとんどに二階派所属の議員が絡んでいました。自派閥の現職議員に他派閥が割って入ろうとした際には現職優先と言ってみたり、その逆だと勝った方に推薦を出すと言ってみたり、ルールが変幻自在な点に不満のマグマがたまっていましたね」
二階氏を幹事長に任命したのは首相時代の安倍氏なのだが、
「何度か二階さんを切って岸田さんにスイッチしようとしたんですが、老練な二階さんは匕首(あいくち)を突きつけるような形で安倍さんにプレッシャーをかけ、安倍さんはなかなか切れなかった」
厄介な「1億5000万円の支出問題」
安倍元首相への恨み節が
安倍氏の電撃退陣の後、どの派閥ボスよりも早く「菅支持」を訴え、その後の人事でも旨味を吸う権利を勝ち取った。
「無派閥で政権基盤の脆弱な菅さんにとって二階さんの支援は渡りに船。菅政権の生みの親からいつしか菅政権の屋台骨となっていきました。それは裏返すと菅政権と運命共同体だということになるわけで、じり下がりする内閣支持率の戦犯として二階さんが槍玉にあげられることにつながりました」(先のデスク)
二階氏にとって党内のやっかみ以上に厄介だったのは、「1億5000万円の支出問題」だ。2019年7月の参院選広島選挙区に出馬した河井案里陣営に、党本部から1億5000万円が流れていたことが明らかになったのだ。
「選挙時に党から支給される額としては『一桁違う』という指摘がありましたが、その通りでしょう。その後、河井氏や夫で選挙を取り仕切った克行法相が公選法違反容疑で逮捕・起訴され、その公判で二階さんの名前が飛び出したのです」(同)
2020年10月、案里被告の公判で検察側の証人として出廷した自民党の広島県議が案里被告からカネを受け取る際に、「当選おめでとうございます。二階幹事長から預かってきた」と話したと証言したのだ。これについて、「案里被告はよくブラックジョークを言うので、ジョークだと思った」と付言したが、「1億5000万円の支出=二階氏」という構図が流布していく。
「岸田の乱」は成功したかに見える
“長期政権をやれたのは誰のおかげか”
2021年5月、案里被告が有罪判決を受けた後、資金の提供について問われた二階幹事長は「関与していない」と語っている。会見に同席した林幹雄幹事長代理がこれを引き取って、「実質的には当時の(甘利明)選対委員長が広島を担当していたので、よく分からないということだ」と補足したのだった。
「選挙の責任者でカネの支出にハンコをおした人物の発言とは思われないと、猛反発をくらいました。それで二階さんは、“党全般の責任は私にあることは当然のことでありますが、収入支出の最終判断をしているわけであって個別の選挙区の選挙戦略や支援方針については、それぞれ担当において行っている”と当初の発言の修正を余儀なくされます。他方、甘利さんは“1ミリも、1ミクロンも関わっていない。選対委員長は公認の調整だけだ”と説明。極めて迷惑そうでしたね」(先のデスク)
このように党内で二階氏への不満が募っていく状況下、「ポスト菅」として岸田氏が手を上げる際に、「党役員の任期制限」を訴えたのはご存知の通りだろう。
「二階さんへの宣戦布告でしたが、党内で二階派以外はほぼ反対する勢力は見当たらず、万事休すとなってしまいましたね」
と、別のデスク。
「二階さんは岸田さんが自分で考えて行動できたとは思っておらず、知恵をつけた人物がいる、それは安倍さんだと見ているようです。“あれだけの長期政権をやれたのは誰のおかげだと思っているんだ。それなのに安倍は何の挨拶もない。というかこれまで1度も感謝を申し述べたことがないんだ”とこぼしていました」
“会社で考えてもらえれば分かりますよね”
件(くだん)の1億5000万円についてこのデスクによれば、
「二階さんは、“会社で考えてもらえれば分かりますよね。社長に言われて初めて経理なり総務なりが動くわけでしょ。独断で総務部長がどうのこうのっていうのはあり得ませんよ”と言っていたようですね。暗に安倍さんの指示をほのめかしたということでしょう」
結局、自民党はこの1億5000万円は買収の原資に使われていないとすることで幕引きを図っている。
さて、閣僚や役員人事で冷飯を食うことになった二階派は、今回の総選挙でも苦境に立たされている。
「その代表が山口3区。参院から鞍替えを図った林芳正元文科相(岸田派)と公認を争った河村建夫元官房長官(二階派)への扱いでしょう。甘利幹事長が双方と面談して河村さんに不出馬を飲ませました。もともと林さんの父親の地盤で、今回の情勢調査でも林さんが河村さんを圧倒していましたから想定内の展開ではありますが、二階さんが幹事長ならこうはなっていなかったかもしれません」(同)
その他、番頭格の林幹雄氏も苦戦を強いられ、選挙区に張り付かざるを得ない状況だという。
「二階さんも可能なら今回の選挙の前に引退を表明していたのですが、後継に決まっている3男への引き継ぎがうまくいかず、もう1期やることになりました。選挙が終われば武田良太前総務相の派閥へ徐々にシフトしていくものと思われます」
盛者必衰を地で行く流れである。
デイリー新潮取材班
なんだ、二階俊博前幹事長がそのような会見を行ったわけではないのか!でも政治って奴は表向きは高い理想を掲げているようだけど、ほんと「清濁飲み合わせる」どころか、ドロドロの世界だってことの一端が見えたね。安倍晋三さん、角さんに負けない金権政治やっているんだ!