水説 古参議員の機微な話=古賀攻
毎日新聞 2021/9/22 東京朝刊 有料記事 <sui-setsu>
自民党祭りはたけなわ。不人気首相を視界から遠ざけた効果はてきめんで、野党を歯がみさせる展開だが、さる有力な古参議員は意外と浮かぬ顔をしている。
「みんな読み違ってるんだよ。目算が狂って今の形になった」
総裁選が今回の構図になった経緯の感想だ。事の性質上、匿名でエッセンスを紹介する。
「岸田(文雄・前政調会長)は菅(義偉首相)が出る前提でつまらんこと(党役員任期の制限)を言った。言わなきゃ岸田の流れができていたかもしれないのに」
「安倍(晋三前首相)は憎い石破(茂元幹事長)が必ず出ると思って、党員票を散らすために高市(早苗前総務相)を立てた」
「麻生(太郎財務相)は河野(太郎行政改革担当相)を絶対抑えると言っていたのに、今や大衆の人気では河野でしょ。悲劇的だよ」
話の流れから、この人物が岸田さんの中庸さに期待していることは分かる。「権力を握らせて一番危ないのは河野だ」とも言う。だが、岸田さんの任期制限論が二階俊博幹事長を直撃したから、首相を慌てさせたのではないか。
「使命感のある主張なら仲間の結束を強める。でも岸田陣営の動きには腰が入っていない」
手厳しい評価だ。「それに」と話は機微なところに向かった。
「菅が何で幹事長人事に走ったかは謎だけど、類推はできる。二階は恐らく自分が引退すると言ったんですよ。もう高齢だし、和歌山の後継を確定したうえで電撃的に解散させる。二階の了解がないのに辞めてもらうなんて菅は口が曲がっても言えませんよ」
なるほど、首相不出馬までの目まぐるしい動きを解く仮説ではある。再選期待が遠のく首相にとっても「解散先行、総裁選先送り」は都合がいい。ただ、実際に強行するだけの力はなかった。
高市陣営に集まった顔ぶれにも古参議員は強い違和感を示す。
「自民党内の右翼が初めて一堂に会したって感じだね。将来右翼政党ができたらこういうメンバーになるんだろう。でも、安倍は戦略ミスを犯したんじゃないの。当て馬を立てて右派の力を見せつけてやろうとしたんだろうけど、自民党の主流が動くわけがない。遊びが過ぎた。国を誤るよ」
子飼いと思っていた若手の支持が河野さんに流れているため、安倍さんなりに必死なようだ。
110万自民党員・党友の意向は一種のビッグデータだが、国会議員382人の投票行動は違う。しがらみ、親分の指示、打算、時には見識が交じり合って投票先が決まっていく。(専門編集委員)
はっはっは、イギリス人は何でも賭けるというが、日本でも「総裁選くじ」を売り出したら大穴ねらいで一儲けしようかな!(笑)。やっぱりちょっと不謹慎か?でも大相撲千秋楽の三つ巴なんて言うけど、四つ巴の裏話が本当だったら、四候補者の弁舌が益々白々しく聞こえてくる。