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映画『ローマの休日』(Roman Holiday 1953年 米) / NHK BSP

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  久しぶりに『ローマの休日』を楽しんだ。何回か観ているからかドタバタ喜劇に思えたり、オードリーの新人ながらのアカデミー賞主演女優賞授賞式の模様が浮かんでいた(現在はYou Tubeから削除されたのかな?)。以前にもブログに投稿しているかと思って探したがなかったが、お茶の水大学教授・土屋賢二さんのコラムを載せていたので下に再掲します。



・・・わたしをいまだに苦しめるほど甚大な被害を与えた映画がある。同じような被害を受けながら気づいていない男も多いはずだ。その映画は『ローマの休日』だ。

 この映画のオードリー・ヘップバーンは、純情可憐で気高い美しさを放ち、心のきれいな、まさに天使だった。・・・こんなにきれいな女が、心だけ汚いということがありうるはずがない。・・・・・

 女というものをろくに知らない男がこの映画を見たら、女は明らかに天使の仲間だと誤解したはずだ。天使としか思えない女が現実には、独裁者のように横暴で、追いはぎのように容赦なく金を奪い、猛獣のように凶暴であるとだれが想像できるだろうか。

『ローマの休日』にかぎらず、女を天使のように描く純愛映画なども、誤解を与える点で同罪である。もし横暴苛烈な女が男を苦しめるような映画ばかり見ていたら、わたしは生涯独身で暮らしていただろう。

 若いころのわたしは、こういう映画の影響できわめて誤った女の観念を抱いてしまった。(中略)

 『ローマの休日』を見て悪影響を受けるのは男だけではない。若い女が見ると、「男というものはこんなにハンサムでこんなに優しく女を大切にするものなんだ。自分もペップバーンのような天使だから、男から大切にされるはずだ」と思い込む。『ローマの休日』が女のために男が命を捨てるというストーリーでなかったのがせめてもの幸いだった。

 こういう誤解を与える映画は有害映画に指定して、影響が少ない八十歳以上限定にすべきだ。そういうと学生が言った。「誤解ではありません。わたしたちも、天使です」
(文藝春秋 映画が人生を教えてくれた 季刊夏号2009 Summer No9 抜粋)



ローマの休日 予告篇

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