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水説  企業の声が聞こえない=福本容子 / 毎日新聞

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タチカラのサイトから   

   

<sui-setsu> 毎日新聞 2019年8月14日 東京朝刊
  
 球技の関係者なら「タチカラ」の名前はおなじみでは? 1915年に東京で創業した老舗だが、バスケットボール、バレーボール、サッカーボールなど、オリンピックの公式試合球に採用されてきたグローバルブランドである。

 そのタチカラのアメリカ・ネバダ州にある会社が今年6月、 トランプ大統領宛ての手紙に 名を連ねた。中国からの輸入品に関税を上乗せしてもアメリカのためにならない。困るのは中国ではなく、中国製品を輸入する我々企業であり消費者だ。手紙はそう訴えた。

 送り主のリストには600を超える企業や業界団体の名前。「関税はアメリカのファミリーとコミュニティーを痛めつけている」を合言葉に活動を展開中だ。

 イギリスでは、 次なる自由貿易協定を結ぶことなくイギリスが欧州連合(EU)から離脱する事態を阻止しよう、と企業や経済団体が立ち上がった。

 まず、食品・飲食業界。全下院議員に宛てた手紙では、値上げや品不足などの影響を想像しやすい事例の紹介に努めた。 「私たちが食べるレタスの9割、トマトの8割、果物の7割がEUからの輸入品となる季節もあります」

 イギリスの経団連にあたるCBIは連合にあたるTUCと連携し、合意なきEU離脱に強く反対する手紙を当時のメイ首相に送った。ジョンソン新首相になってからもイギリス経済が受ける打撃の大きさを具体的に警告し続ける。

 さて、地球のこちら側では、 日本と韓国の関係悪化が止まらない。すでに貿易量や旅行客のダウン、日本企業に就職する韓国人の減少など影響が広がっている。

 なのに企業経営者たちから両国政府への「何とかしてくれ」が聞こえてこない。記者会見で問われ、 「影響を受けなくて済むとは思わない」(伊藤忠商事)、「どういう影響が出るか測りかねる」(トヨタ自動車)など心配げではあるが、連帯して政府や政治家に働きかけるところまで行かない。

 そんたく? 国民感情がからむ歴史問題に巻き込まれたくない?

 しかし今、脅かされているのは、企業が努力を重ねて地球上に張りめぐらせてきたビジネスのネットワークだ。どの国のどこで誰と組み、何を生産してどこへ売れば最適か。何十年もかけて築いたものが、ひと握りの政治家の野心と計算と意地の張り合いでたちまちズタズタにされようとしている。

 結果的に国境を超えて割を食うのは働く人たちであり消費者である。それを知り、憂えつつも傍観する者をグローバル企業と呼べるだろうか。(論説委員)  

  
  『論語』の「礼にあらざれば視るなかれ、礼にあらざれば聴くなかれ、礼にあらざれば言うなかれ」の  「見ざる、聞かざる、言わざる」という叡智なのかな?(笑)。情けな~!

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